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土地家屋調査士と測量士の違い。

測量士の八重樫です。こんにちは。

測量士と測量士補の違い。」で、測量士と測量士補の違いについて書いた際に何度か出てきた「土地家屋調査士」という資格について。

実際には明白な違いがあるが、当事者でないと解らないと思う。
同じ道具を使い、同じような事をしているように見える。
どちらも、測って作図をするお仕事だ。

その違いについて書く。

土地家屋調査士が扱う法律

私は測量士だが、土地家屋調査士ではないので、土地家屋調査士については自分が知識として知っている事しか書けないという事をご了承頂きたい。

先ず、土地家屋調査士と測量士とでは扱う法律が違う。
土地家屋調査士は主に
  ●土地家屋調査士法
  ●不動産登記法
  ●民法
を取り扱う。

測量士は測量法のみ

土地家屋調査士は登記をする

土地や建物の表示に関する登記は土地家屋調査士の独占業務である
これを測量士がやると、とっ捕まる。(前例が何件もある。)
ただ、地籍調査(国土調査)は何故か測量業務である。
この地籍調査(国土調査)についてはきっと快く思わない土地家屋調査士先生もいらっしゃる事だろう。申し訳なく思いつつも、ありがたくやらせて頂いている。

土地や建物の表示に関する登記は何かと言うと
その土地や建物が、どこに、どれだけ、どういった形状で存在しているか」を法務局の台帳に登記するという事だ。
そのための測量や図面の作成も土地家屋調査士の業務に含まれる。(地積測量図/建物図面等)

何故、「土地や建物の表示に関する登記」と、ややこしい言い回しをするかと言うと、所有権に関する登記は土地家屋調査士ではなく、司法書士の仕事になる

例えば、家を新築した場合、その建物がどこに、どれだけ、どういった形状であるのかを土地家屋調査士が法務局に登記し、法務局がその登記によって台帳を補正し(ここで建物の存在が確定する)、その結果(登記識別情報。以前の登記済証、権利者。)をもって司法書士が所有権の登記をする(建物が誰の物かを登記する)といった流れになる。

また、土地の分筆(分割)や合筆といった事も、土地家屋調査士が行う登記である。

そういった登記が必要になる場合は多岐にわたり、戸建て住宅のみではなくマンションや公共施設等にも当然必要になる。

つまり、BtoCの業務もある。(というかBtoCが業務の多くを占める)

測量士はBtoBか、BtoP(本来はPersonらしいが、ここではPublicのP)である。極稀に登記を伴わない測量を個人から依頼される事もある。

土地家屋調査士は必ず本人が業務を行う

測量士の場合、測量士が業務を計画し、測量士補がその計画に従って実施する事が出来るが、土地家屋調査士は本人が業務を行う。
土地家屋調査士法 第4章 第22条に明確に記載されている。
補助者を置く事が出来るが、完全に補助者任せるにする事は禁止されている。

土地家屋調査士は個人(調査士法人を除き)

土地家屋調査士が共同で設立する調査士法人(社員は土地家屋調査士でなくてはならない)を除き、雇用されて業務を行う事は出来ない。

法人または個人において、その業務に関する土地、建物に関する調査、測量または申告手続に従事せしめる目的で、土地家屋調査士会に入会している土地家屋調査士を常時雇入れの上、土地家屋調査士法第2条(現行第3条)の業務を行わせ、その報酬は雇用者の収入とし、被雇用者たる土地家屋調査士には、その者の実績による業務報酬額とは関係なく、雇用者から定額の給与を支払っている場合は、同法第19条(現行第68条)に抵触する。
(昭和33・7・28民事甲 第1525号 民事局長心得回答)

という、先例がある。
なんとも微妙な書き方ではあるが、要するに「土地家屋調査士を雇用して土地家屋調査士としての業務を行わせた場合、その報酬は土地家屋調査士個人にそのまま渡さないとダメだよ」という事だと思われる。

と、なるとわざわざ雇用しようなんて事業者はいない。

測量士は雇用される事が出来るというか、雇用されるケースが多いだろう。
また、会社を設立する事も出来る。
被雇用者になった際の制限も特にない為、測量士の方が柔軟な働き方があると言える。

土地家屋調査士人口の推移

日本土地家屋調査士会連合会が公開している資料によると、個人会員数は下のグラフのように推移している。(日本全国あなたの近くの土地家屋調査士

測量業者ほどではないが、減少している。
また、年齢構成は下のグラフのようになっている。

測量士よりも、高齢化が顕著だ。
土地家屋調査士は合格者数(400人前後)が減少数(100~200人)を上回っている為、すぐにではないが年齢構成を見る限りでは、土地家屋調査士もまた測量士と同様に土地家屋調査士不足は訪れるだろう。

まとめ

土地家屋調査士と測量士の違いは伝わっただろうか。
土地家屋調査士は、個人開業である事が多い為、営業努力がどうしても必要になる。
不動産業者や司法書士、個人の不動産投資家や地主…
資格取得で人生一発大逆転!と謳われる事も多い資格だが、取得も業務も簡単ではない。

土地家屋調査士と測量士のダブルライセンサーになる事で受注を広げるという手もあるので、挑戦してみるのも良いだろう。
この2つの資格を両方取得するつもりであったら、先に測量士を取得すると良い。測量士は土地家屋調査士の午前試験が免除される。
また、行政書士や司法書士もあるとより多く関連した仕事を得る事は出来る。

最後までお読み頂き有難う御座います。モチベーション維持の燃料にサポートいただけると有り難いです。