哲学シリーズ・想像すること

今回、11月に昨年上演した「対話篇」と新作「想像を絶する」を綾門優季くんに書き下ろしてもらって、上演することになった。この二つは哲学の古典からインスパイアされた《哲学シリーズ》ということで、やろうということになっている。

私はこの二作を上演することで、想像力について考えられればと思う。これはいつも私が継続的に考えていることでもあるのだけど、今回も、やっぱりそれについて考えなければならないと思った。私でないものについて想像すること。つまり、私について、世界について想像すること。今、新作を含む、これからやる作品のすべての構造が見えているわけではないけれど、やっぱりそういうことになる。まあ何度言ったって言い足りないし、そう普段から考えてる人は、そういつも思っているんだろうけど、大事なのは想像することだ。尊重も畏怖も、想像すること、あるいは想像できないことから始まる。わからないことについて考えること。自分にはあり得ないかもしれないけど、誰かにあり得るかもしれないことについて考えること。

こういう文章なんて全然書いたことがなくて(綾門くんに言われなければわざわざ書かなかっただろう)書く前に、いろいろ考えた。綾門くんのように、読む人を煽るような、かっこいい台詞は吐けない。個人的には、あまり、私は先入観みたいなものを持ってほしくないから、こういう文章でも書くのは気が引けるのだけど、時代に要請されている、みたいな、ことを話した方がいいのか、などと考えてしまった。こんな話題を時代にくっつけて話すことなんて簡単だ。時代が想像力を要請している。想像力がより求められる時代になった。いくらでも言えてしまう。でも、そんなのは今までだって十分必要だったのに、それに気付いていなかっただけだ。そんなものいつだって求められていた。ただみんながそれに気付くのが遅かっただけだ。だから、手遅れにならない前に、私たちはそろそろ想像しはじめなければならない。想像というのは並大抵のことではない。でも、出来る範囲で、やれるなら、とことんまで、それをやらなければならない。それに何の意味があるのか。もしかするとそれは、しかし、大方の場合は、想像しはじめる前より苦難を伴うことになる。想像することのは楽しいばかりじゃないし、つらい想像もたくさんしなければならないだろう。でも、そこからしかはじまらない。世の中なんてますますわからなくなっていく。ある面では確かによくなっているし、しかし、ある面ではどんどん悪くなっていると言えるだろう。個人的なことを言わせてもらえば、私にとって未来はとても暗い。でも、そこからしかはじまらない。そういう新しく想像をはじめるための入り口になればいいと思う。

想像の及ばないところを越えて想像していかないと、私たちは一歩も先に進むことができない。想像の届かないところにあるものについて語る言葉を考えていくことでしか、次の時代をつくっていくことはできない。例えば、あるテキストがあるとして、わけのわからないだけがいいことではないけど、わけのわからないところに分け入っていかないと、本当に、そのテキストの向こうから、誰が何を語ろうとしているのかなんてわからない。フィクションがあって、その中に入るようにして、自分とは違う世界があることをまず了承しないと(認識している時点で『それ』は確固として存在しているのだから)はじまらない。その中の法則に身を浸してみること。体を預けること。その世界に、自分を無防備に委ねてみないことには、何も得られないんじゃないか。目の前に私とは違う世界の人がいて、向こう側からの声を喋っている。そういう風に聞いてみること。そういうやり方で、何かをやっていきたいと思う。向こう側を、了承すること。そういう簡単だけど難しいところから、何度でも初めていかなければと思っている。これはやっぱり「戯曲」を上演するという試みだ。とにかく綾門くんの戯曲の中に入って、向こう側から何かを持ってくること。まあ、ここまで特に大したことは言ってなくて、当たり前のことを並べただけなのだけど、私のような人間に言えるのはやっぱりこんなことぐらいしかないのだと思う。でもそれを繰り返し繰り返し言って、繰り返し繰り返し考えていくしかない。こういう時いつも思い出してしまうのが、ラブライブ!で星空凛が確か高坂穂乃果に向かって「毎日同じことで感動できるなんて羨ましいにゃー」と言っていたけど、これは今引用しようと思って調べたら揶揄のニュアンスだったようなのだが、私はこの台詞にとても感動して、何度でも同じことをやっていいし、何度でも同じことで感動していくべきなのだ。そうやるしかないのだ。といつも思わされる。何度でもやっていけばいい。今回も演劇をやります。よろしくお願いいたします。

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Kouki Tokuchi

哲学シリーズ

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