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TKda黒ぶち自叙伝『Live in a Dream~夢の中で生きる』編集後記

TKda黒ぶち自叙伝『Live in a Dream~夢の中で生きる』バックナンバー

第1回「笑わない子ども」
第2回「邂逅と疎外」
第3回「孤独な少年  居場所を見つける」
第4回「RAPで知った  人に認められるということ」
第5回「青春の幕引き  そして新たな旅へ」
第6回「New York で変化したHIPHOPへの認識」
第7回「LIFE IS ONE TIME, TODAY IS A GOOD DAY.」
第8回「Don’t Let the Dream Die」
第9回「夢の続きを創りに行こう」

自叙伝を読んでいただいた皆さまへ

TKda黒ぶち自叙伝プロジェクト『Live in a Dream~夢の中で生きる』、制作チーム「チームTK」のリーダーを務めましたライターの本多カツヒロです。約2ヵ月半に渡りお届けしてきました自叙伝は、前回の9回目をもって一旦終了いたします。連載を毎週心待ちにしてくれたTKda黒ぶちくんのファンの皆さま、一度でも読んでくれた方々、そして彼の関係者の皆さま、本当にありがとうございました!心より御礼申し上げます。

今回、編集後記といたしまして、これまでの経緯や狙い、チームTK各自の想いを伝えさせていただきます。

自叙伝プロジェクトの狙い

今回のプロジェクトや編集方針などこれまで仔細に語らなかったことについてあらためてご説明します。

実は、僕が考えていたのは今のメディアへの
ある意味でのアンチテーゼだった

先日、チームで久々に集まった際に私はみんなへそう言いました。下手をすれば3行で記事が要約されるようなご時世で、ニュース記事ならいざしらず、たまにはきちんと一言一句を読み、写真を見て、曲を聴いて、誰かの人生に想いを巡らせてほしい。おこがましいですが、ポジティブにしろ、ネガティブにしろ大きな意味で人の心が豊かになるお手伝いをすることこそ、文章表現に関わる者の使命だと少なくとも私は考えています。

今回のプロジェクトが成功したにしろ失敗にしたにしろ、短い人生のなかでもっとやりたいことを表に出していいんだよ、やるだけやってみようよと特に若い子たちには伝えたかった。それはTKくんが迷い悩みながらも愚直に信じ歩んできた人生を通じて少しは伝えられたかなと。

出会い

私とTKくんが初めて出会ったのは、2018年に遡ります。「ひとりを楽しむ」をテーマに当時朝日新聞社(現在は別会社へ移管)が運営していた『DANRO』での取材でした。同メディアで最初に出した企画がTKくんのインタビューです。数年前に彼の音楽に出会い、その流れで番組のラポーターのひとりであるTKくんが出演するAbemaTV『NEWS RAP JAPAN』を毎週楽しんでいました。たまに個性的なことを言うかと思えば、ひとりでいることが好きなどのエピソードを話していたため、同メディアのテーマとピッタリだと考えたからです。加えて『Dream』を聴いたとき、90年代に10代を過ごした40オーバーの私にドンピシャな音源でファンになったからという裏話も。つまり仕事にかこつけて、会いたかっただけ。

実際に会った彼は礼儀正しく、優しく、質問にも真摯に答えてくれました。

しかも取材後、2時間近く、素人の音楽談義に付き合ってくれました!(後にこの時のことを尋ねたところ、変わった人だなとTKくんは思ったとか)。

その後、特に連絡を取り合うことはなかったのですが、SNSでつながったのを機に、飲みに行くことになりました。ラッパーの方と初めて飲むのに何を話したらいいのかと迷った私は友人の写真家である小田くんに声をかけると「面白そうだから、俺も行く」と。2年ぶりに会ったTKくんと3人で飲みながら、なんとなく3人とも気が合うのではないかと勝手に感じたのを覚えています。

プロジェクトの始まり

昨夏、TKくんから本を出したいので相談に乗って欲しいと連絡がありました。私自身、自著を出したく、企画書をそれより少し前に編集者に見てもらっていたため企画書の作り方を心得ていました。ただし、私自身、書籍の一部を書いた経験は何度かありますが、一冊まるごと書いたことは無く、多少困惑したことも確かです。

また何人か書籍編集者の知り合いはいますが、出版業界は完全に斜陽産業で、企画を通すこと自体が難しい状況にあります。TKくんと話し合い、企画書を完成させ、3〜4社に渡しましたが、首を縦に振る会社はありませんでした。私の力不足に情けなくなり、なんとか形にしたい。そう思い旧知の編集者であるイトーくんに、noteでの連載を相談したところ、それがベストではないかとアドバイスしてくれました。

企画が具体的になり、急いで写真を小田くんに頼みOKをもらいました。問題は金銭面です。僕らは将来的な書籍化を目指し、このプロジェクトをはじめたわけですが、プロの写真家、しかも若手の中でかなり売れている写真家にお願いをすること。またプロの編集者に仕事をお願いするだけの原資が私にはありません。初めて飲んだ時に、盛り上がり過ぎてめちゃくちゃ酔いました。その勢いでギャラについて相談すると2人は

「金のためじゃないでしょ。本ちゃんもそうでしょ。やりたいからやるんだよ。今後、お金の話は一切しないで。俺らは普段の仕事できちんとお金は頂いているから問題ない」

と無償での協力を申し出てくれました。そこで私自身もハッキリと覚悟を決めました。自分にとって新たな挑戦になり、そのことが新たな道を切り開くのではないかとも考えたからです。

より多くの人へ届くことを祈って

今年に入り、もう一度撮影をして、連載を始める頃、3回目からは課金をしようと決めていました。しかし、連載開始後、方針を一転。より多くの人に彼のことを知ってほしいとの思いからです。もともとビジネスではないので、それよりも彼の顔を見たことがある程度の認識の方をはじめ、いろんな人に読んでいただきたい。

そう思うには理由があります。TKくんは、多くの勤め人の方たちと同じような経験をしてきた。大学卒業後、一般企業で正社員として働いていた経験もあります。だからこそ、多くの働く人たちの葛藤や悩みがわかる。そんな彼の曲をより多くの人に聞いてほしい。現実的で響くのではないか。そう考えたからです。

連載をはじめてからはたくさんの反響をいただきました。ポジティブな反応が多く、メンバー全員がやった甲斐があったと感じ、読者の皆さんには感謝しています。

編集方針に関して

今回は、ウェブで誰もが読めて、これまで彼のことを知らなかった幅広い人にも認知してほしいという思いが念頭にありました。だからこそ、10時間を超える取材で聞いた全てのエピソードを正確かつ記録的に残すのではなく、「陰から陽へ」と言った読みやすさ・わかりやすさを重視したストーリーにしました。今までの彼を知る人たちにとってはもっといろんなことがあっただろうとツッコミが入るのも重々承知です。また、現在進行形で彼が活動していることもあり、終わり方に物足りなさを感じる方がいらっしゃるかとは思いますが、ここから先は今後の彼の活動を見守ってください。

削ったエピソードや細部については書籍化できた暁に文章にできればと考えております。

写真に関して、私の方から小田くんへ一点だけお願いをしました。陰から陽へというストーリーのために、モノクロからカラーで撮ってほしい。それのみです。

全体的に、写真の色合いで心境を表す。あえて文章にせず、随所にMVを埋め込み、聞いてもらうなどの工夫を凝らしたつもりです。それがしっかりと伝わったとは思っていませんが……。ウェブだからこそできる新たな表現方法にも一部挑戦しました。

まだまだ私の表現力や取材力が稚拙なこともあり、もっと彼の魅力を引き出し、より多くの方の目に触れることも可能だったかもしれません。その点ついては今後の課題です。

ただ、今回のプロジェクトを通じて、彼にはたくさんの応援している方々がいること、ウェブならではの表現が自分としては出来たこと、そしてチームのみんなが常に助けてくれたこと、それらすべてに感謝しています。

皆さん、本当にありがとうございました!

またあらためて「人はひとりでは何もできない」ことを実感しました。TKくんが喋るだけでも、小田駿一くんが写真を撮るだけでも、イトーくんが編集をしてくれるだけでもできなかった。もちろん、私ひとりで書くこともできなかった。4人がチームとして各自のやるべきことに加え、意見してくれたからこそ最後まで乗り切ることができました。チームのみんなにはあらためて感謝いたします。

ビジネスじゃない、ひとりでは決してできないことをぜひ皆さんも挑戦してみてください!人生が楽しくなりますよ!

『時計の針』TKda黒ぶち ft. CHICO CARLITO

チームTK 各自より自叙伝プロジェクト終わりに寄せて

TKda黒ぶち

チームリーダーである本多さん、編集のイトーさん、フォトグラファーの小田さん、そしてこの自叙伝を読んでくださった方々、本当に有難う御座いました。

各々が多忙極める中、自分の無茶なお話を実現してくださり感謝の気持ちでいっぱいです。仕事とはまた別の志で集まり、目標に向かって一緒に時を過ごせたことは人生の財産と感じております。

本多さんのインタビューを受けながら自分の人生を振り返る時間はとても刺激になりました。自分の語りが文字に変わっていき、編集のブラッシュアップが入り、そして進む物語に合わせ写真を載っていく。チームのプロの仕事に自分の企画ながら魅せられました。個人的にはこのプロジェクトを通してみんなと集まれる時間が本当に充実してました。(本多さんの豪快な酔い具合を読者の皆々様にめちゃ共有したいです。。。)

今月末にまた皆で乾杯する時間が楽しみでしょうがないです。チームのメンバーはじめこれを読んでくださってる方々、ここで繋がった縁を連載終了で終わらせることなく、末長く発展して行けたらと自分は強く思っております。第一シーズンは終わりましたが、また”チームTK”がカムバックする日をお楽しみに。

感想やレスポンスは本当に力になりました。
頂いたサポートはその気持ちが本当に嬉しかったです。
改めて、有難う御座いました!!!

そして家族へ。
生々しく話した故に不快な気持ちにさせてしまい申し訳御座いません。

ですが、決して明るくない話がインタビューで話せたのは

今のみんなが幸せだからだと俺は思ってます。

母は趣味を楽しんだり変わらず仕事をしながら割りかし自由に生き、姉は素敵な伴侶とともに家族に囲まれマイホームで暮らし、俺は俺で好きな仕事で生活を維持していて、あの時では絶対に想像できないような幸せな時を今過ごしてると感じてます。

思い出したくない過去を話してまでも伝えたかったことは、

自分達は過去を乗り越えて今日にいたるんだということでした。

見てるかわからないけどここに残しておきます。

イトー

今回の連載を読んでくださった読者の方々、本当にありがとうございました。Twitter等々でのみなさまのコメントは大いに励みとなりました。限られた時間の中で動いていただいたTKda黒ぶちさん、制作チームの皆さんにも合わせて感謝申し上げます。

春日部市に生まれ育った一人の男性がなにを思い、感じ、行動し、どのようにして目標に向かって突き進んでいったのか。黒ぶちさんが歩んできた人生を振り返るという連載はここで一度、幕を下ろします。

ただこれだけで、黒ぶちさんのこれまでの人生やスタイルなどをすべてを伝えきれたとは到底思っておりません。

構成するうえで泣く泣くカットしなければならなかったエピソードは数え切れないほどあります。このことはまた別の機会に、なにかしらの形でお伝えすることができればいいなと個人的には思っています。

とりあえず、一段落つけたということで4人で盃を傾けつつ、今後のプランをあーでもないこーでもないといいつつ練ることができればいいなと。まだまだなにかしら面白いことを仕掛けていきたいと考えておりますので、なにとぞよろしくお願いします

小田駿一

まず、今回の連載を読んでくださった読者の方、TKda黒ぶち、制作チームの皆さんに感謝申し上げます。短い間でしたが、お付き合いくださり本当にありがとうございました。

連載に携わって感じたのは、一度きりの人生を必死で生きる人間の清々しさでした。悩んで、踠いて、葛藤して、努力が報われたと思ったら、またその先に困難と喜びが待っていて。でもそれでも、自分が好きなこと、できることを信じて生きていく。そんな男っていいなということでした。

昨今、巷では「ワークライフバランス」「働き方改革」などなぜか人生の「正しい」生き方を国家や上位的な概念が規定してくることに違和感を感じていました。なぜ、この記憶を持って、生きられる人生は一度しかないのに、誰かに「正しさ」みたいなことを提示されないといけないのかと。

今回の連載は、TKda黒ぶちという男の人生の物語ですが、より抽象化してみると、自らの人生を、自らの力で切り開いていく。

正直で不器用で、一度の人生を謳歌しようとする男の話でもあります。
本当の多様性は、性別でも、人種でも、国家でもない。それぞれの人の魂に宿る願いを、それぞれが、それぞれの形でどう実現するのかという話だと思います。

この連載が、皆さんに勇気を与え、皆さんの人生の力になると本望です。
他ならぬ、私もその一人だったので。

本多カツヒロ

自叙伝を読んでさまざまな意見を送ってくれた方、SNS上で反応してくれた方、協力してくれた方、一度でも目を通してくれた方、TKくんの関係者の方、すべての方々に感謝の気持ちでいっぱいです。

正直に言えば、へこたれそうな時もありました。そんな時、皆さんの反応やチームのみんなに叱咤激励されたからこそなんとか駆け抜けることができました。ありがとうございました!

僕自身は、ファンタジーなどよりは事実やそこに多少の脚色があるものが好きです。「Based on the true story」ってやつです。それは映画でも本でも。ひとりの人間が生きるって、想像以上の事が起きたりする。そうした生身の人間の剥き出しの生。それは美しいことばかりではなく、世間では恥部と思われることもある。そんな多面的な顔を人は持っていることに気が付かせてくれる。

それは一面的に「この人はこういう人だ」とは断定できないのに、なにか問題を起こせばその問題がその人のすべてを決定付けるような風潮とはまったく別な人間の本質だと思うから。

今回、TKda黒ぶちという1人のラッパーの人生を描かせていただけて、彼のほんの一面しか描くことはできていないとは思いますが、こうした機会を与えてくれたTKくん、協力してくれたイトーくん、小田くんには感謝してもしきれません。そして僕らはこのプロジェクトを通じて仲間になれたかも。そして40も半ばになって、こんな青春の一コマのような2ヶ月半を過ごせて楽しかった。チームのみんなが今よりもっともっと素晴らしいものを作ることができることを願って。一番年上の問題児より

『Dream』TKda黒ぶち

2022年6月14日 TKda黒ぶち本多カツヒロ、イトー、小田駿一

Photo:Shunichi Oda/from PhotoBook『Night Order』

TKda黒ぶち自叙伝『Live in a Dream~夢の中で生きる』バックナンバー

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第2回「邂逅と疎外」
第3回「孤独な少年  居場所を見つける」
第4回「RAPで知った  人に認められるということ」
第5回「青春の幕引き  そして新たな旅へ」
第6回「New York で変化したHIPHOPへの認識」
第7回「LIFE IS ONE TIME, TODAY IS A GOOD DAY.」
第8回「Don’t Let the Dream Die」
第9回「夢の続きを創りに行こう」


もしよろしければサポートお願いいたします!今後の創作の活動費として活用させていただきます。