春だよ。

エーステ 春組単独公演

あまりにも良かった。これ!これを求めてた。また会えて嬉しかった。たしかに私は舞台化したA3と俳優を観るために劇場へ向かうのに、幕が開いた瞬間MANKAIカンパニーを観に来ていてMANKAIカンパニーが大好きな監督であり観客になっている。それがまったく違和感なく自分に浸透してくる、春夏公演でも起きた不思議な感覚をまた味わった。まずはOPのバック映像がエモい。春夏秋冬の旗揚げ公演を経ての第2、第3公演なんだね。
 そして終演後に何よりも感じたことが、原作A3自体の許容範囲の広さが恐ろしいということ。私が見た回は驚きの噛み率だったしテンポ崩れてる所もあって全然完璧とは言い難かったけれど、それがエーステでは作品として成り立つというか。劇中劇で至さん演じるボイドが台詞を思いっきり間違えた時に咲也がフォローをしていて、それはちゃんとロミジュリの「咲也がアドリブで繋いだ!」に繋がっているんですよね。その瞬間、MANKAIカンパニーは季節を巡ってまたここに立ってるんだって実感した。舞台上で起きた事全てが作品の一部に変わる、show must go onだった。私の書き方が下手すぎて、いやちゃんとクオリティ上げるべきでしょと思われるかもしれないけれど、その小さな歪みさえ見越してキャスティングされてるのではないかと思うくらいキャストの立ち位置と台詞が綺麗に噛み合う。

 初見の時にあまりにも色々な所が出来上がりすぎていて何処を褒めれば良いのか分からなかった。そしたら2日目連番した方が、「何処を褒めれば良い?脚本?キャスト?演出?音楽?照明?」と全く同じ事を言ってた。
 私は好きな俳優がいるのでどうしてもキャストメインで見てしまう事が多いはずなのに、どれも突出してないと言うと誤りになるけど全てが期待値を遥かに超えてきてて、キャラが立つのではなくて空間全てが素晴らしいと思った。
 観劇中は「中卒」の映像効果で確実に遊んできてるなって分かるのがただ面白いってそれだけだったのに、よくよく考えたら映像で遊びを入れてきたり演出だったり脚本、衣装色々な舞台には欠かせない役割の人たちにスポットが当たる瞬間が必ずある作品って凄すぎるのでは?と思った。ここ原作の許容範囲が広すぎるポイント2個目。
 そして水野の「毎公演必ず見に行く、手紙を書く。顔を合わせる事はなくても僕はずっと君のファンだ。(要約)」。最近のオタ会で私に対しての問いではなかったけれど「何のために推してるの?」という質問がずっと印象に残ってて、私も何のためにこんなに必死になってチケット取って足繁く劇場へ通ってるんだろうって思う時があったんだけど、水野の言葉を聞いてストンと落ちてきた。私の好きな俳優がカテコで時々鳴り止まない拍手を聞いて泣きながら言う「届いた」って言葉が大好きなんだけど、キャストに届いたよって伝えるためには大勢の観客の拍手が必要で。だから私は舞台上と客席でしか感じとれないものを感じに行きたいし、その場で感動したよと伝えられる1観客になりたいのかもしれないって思った。なんてそんな自分語りはどうでも良くて、舞台に欠かせない役割として観客も入れてくれるの流石です。ここポイント3個目。
 演出家には観客が居なくても舞台は完成する派と観客がいて初めて完成する派の人がいるけど、お客さんありき派の松崎さんが演出に選ばれたのめっちゃ納得する。


 劇場からの帰り道、至さんの顔が良かったから始まる友人との熱い演劇トークがとても楽しかった。水野が満開寮に訪ねてきて東さんが応対するシーンの照明が良かったねとか、ストーリー中の笑いと涙の緩急が絶妙すぎる話とか沢山話した。確かに至さんの顔が良いと3分に1回くらい思ってたけどただそれは会話の導入でしかなくて、構成、テンポ、全てがエーステを彩り、そこでキャラクターとして輝くからこそ俳優さんの持ってる原石が光る。春夏公演の時も確かに顔綺麗だなとは思っていたけれど正直そこまでずっと目を奪われる感じでもなかったので、立石くんが至さんをさらに理解深めたからこそ良さが生まれたんだと思った。

 始まりの季節、自由で爽やかでそれでいてとても心地良い季節だった…あー楽しかった!

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