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色彩学を学び直すために読んだ本5冊

配色、色彩論について勉強し直すために読んだ本をまとめます。

学び直したきっかけ

私はグラフィックデザイナーですが、配色については業務で度々課題に感じていました。配色はセンスや経験によるところもあるのかもしれませんが、迷ったときにそれを上手く言語化するための知識が必要だと思いました。美大の色彩学の授業で知識を学んでいましたが、復習として読んだ本が以下になります。

ヨハネス・イッテン 色彩論

色彩学の古典といえばこれ。バウハウスで教鞭をとったヨハネス・イッテンの、美術家としての経験と直感から生み出された理論が記されています。色彩対比の7種類や色相分割による配色調和など、カラーの図と共に分かりやすく解説されています。

配色の設計

イッテンと同じくバウハウスで教鞭をとった、ジョセフ・アルバースの著書。この本では、色彩の理論から入るのではなく実践から生み出された結論を紹介しています。著者は、配色を見る目を養うためには、経験を通して色の作用を見抜いたり、関連性を感じることが必要だと述べています。この本の例では、自分の目がいかに周りの色によって騙されてしまうのかを実感でき、より色について深く考えるきっかけになると思います。

色彩の表記

グラフィックソフトで用いるRGBやHSLという色の表記がない時代、人は自分の思った色を正確に他人に伝えることはできませんでした。自分の思った「緑」が他の人の緑と違う、という経験はあると思います。

この本の作者であるマンセルは、色を色相、彩度、明度の3要素に分解できることを発見しました。私たちが普段無意識に利用している色の「楽譜」を定義した色彩学の古典の1つです。

ウェブ配色 決める!チカラ

デジタルの配色について学びたいと思い手に取りました。知識・実践編は、これまでの書籍にも書かれていた基礎の内容が書かれていました。応用編では、コミュニケーションで悩んだ時の説得術や、配色がまとまらない時の対処法が書かれており、実務で参考になると思います。

色彩デザイン・配色のルールを学べる本

配色調和のビフォーアフターの事例と共に理論を解説しているので、直感的に理解できる本。ひと通り色彩学の古典というものに目を通した後に、この本を読むと、現場での理論の活かし方にイメージが湧くのでオススメです。

感想

グラフィックソフトがない時代に書かれた色彩学の古典から参考となることはたくさんありました。 それは、色彩理論だけではなく、色彩への捉え直しでした。以下は印象に残った色彩学の考え方になります。

・色彩の世界は音楽と似ている

音楽は、どの演奏者でも正しく音を楽譜から読み取れるように音を記録します。しかし実際は音1つ1つを読むのではなくメロディーや曲全体のイメージが大切です。これは、色彩の世界も同じです。色は複雑で、同じ色でも面積や他の色との関係性や目の錯覚などすべてに影響され、違う見え方になります。狙った色彩効果を生み出すには、単にこの理論だけでできるとも限りません。理論は実際に体感し、自分の感覚の中に取り込んでいくのではないかと思います。

・主観的な色彩傾向と、客観的原理を知ること

自分の内面から、それぞれ人の好む色調というものがあります。デザイナーは、自分自身の主観的な色彩傾向に支配されがちです。自分の色彩感覚と近いものであるならば、自分の必要とする配色を発見できます。しかし主観的な判断では、色彩問題のすべてを解決できません。客観的原理の習得は色彩の正しい評価とその応用に不可欠なものであると書かれていました。

・色が持つ特有の心理的、表現的価値を理解すること

例えば「赤」は、オレンジよりの赤だと火のような激しさを感じます。また、その光は植物の成長とその勇気的なはたらきを促進します。他の色との正しく比較した場合、熱狂的、好戦的情熱を表します。このように、赤だけでも、黄がかった赤、青がかった赤でも持つイメージは違うのです。そして、その赤がどのような色と対比したときに効果的であるのかや、歴史的背景なども知っておくべきです。今まで自分は、独りよがりの色への解釈しか持ててなかったのだと気付かされました。

調和の理論は決してわれわれのイマジネーションを拘束するものでなく、むしろ逆に新しい、また変化に富む色彩の表現手段を案出する重要な手引きとなる

ヨハネス・イッテン色彩論より

色彩調和や色彩効果の理論は、今後の制作で配色を選ぶときの引き出しの多さに繋がるように思いました。理論を知った上で、配色調和の実例を多く見続け、色彩感覚を養いたいと思います。

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