「融けるデザイン」まとめ

「融けるデザイン ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論」を読んだ。この本では、まずインターフェースとは何かが書かれている。そして、良いインターフェースを設計するために必要なこととして著者の意見が事例とともにまとめてある。以下は本の内容のまとめである。

メタファ

コンピューターはそれ自体が道具ではなく、コンピューター上のアプリケーションが道具となり何にでも見立てられる自由度を持っている。私たちはWordで文章を書くことや、Illustratorで絵を描くことなど、今まで道具を通して行ってきたことをアプリケーションの上でするようになった。行為をアナログからデジタルに置き換える場合、アナログでの行為と同じようにユーザーが分かりやすく操作ができることが重要になってくる。ゆえにコンピューターは現実世界にある道具のメタファ(見立て)を採用している。カレンダーのアプリは、実際に紙でカレンダーをめくっているようなメタファを取り入れている。

メタファからの脱却

これまでコンピューターの役割を人に認知させるためにメタファを用いていたのだが、スマートフォンの登場以降、メタファでは表現できないサービスが生まれた。それが、Twitter、FacebookなどのSNSである。Twitterは、世界中のつぶやきを集めることで、一つのサービスとして価値を生み出している。この価値は、それまで現実世界の中にはなかった新しい体験である。このようにメタファでは言い表せない自由な発想がこれから重要になってくる。

体験設計のレイヤ

メタファでは表現できない新しいコンピューターの設計において、UX(体験)を元に考えることが良い。著者は3つのレイヤに分けて体験を説明している。

- 社会レイヤ:経済的価値や、社会的価値などの視点
- 文化レイヤ:人のライフスタイルからの視点。コンテンツのストーリーなど
- 現象レイヤ:知覚、行為、身体性など、人間の振る舞いについての視点

「現象レイヤ」は他のレイヤと比べミクロな視点のUXである。触っていて気持ちいいと思う感覚を生み出すこともこの現象レイヤからである。本書では、「現象レイヤ」の視点からのインターフェースの設計論についてまとめる。

インターフェースとは何か

ものづくりにおいて、インターフェースとは、モノと人との境界面のことを言う。インターフェースのデザインは「知覚と行為のデザイン」であり、人の行為を可能にできるものである。ゆえに、人の活動から設計を考えなくてはいけない。そして、インターフェースの本質として書かれているのが、その透明性である。

道具の透明性

ハンマーで釘を打つとき、人はハンマーを意識しない。ハンマーが自分の腕の拡張となり、釘に集中することができる。このように道具を意識しなくても利用できることを、道具の透明性と言う。

自己帰属感

自己帰属がもたらすのは、そこにある新しい知覚世界だ。

iPhoneのタッチスクリーンは、その仕組みを知らなくても指に動きに応じてサクサク動く。このサクサク動かせる体験は、iPhone自体を意識せずに直接指で情報に触れているという感覚を生み出す。このような自分でその道具を制御している感じのことを、自己帰属感と言う。道具として引っかかりがなくデザインされていると、自分の身体と同じような状況になり、身体が拡張される。自己帰属感がないと、人はモノをモノとして意識してしまい、使いにくいデザインと捉えてしまう。

IoTの時代のデザイン

IoT(モノのインターネット)とは、様々なものにIPを振り分け、インターネットによってモノの通信をすることである。これにより、モノの状態をデータとして利用することもできる。今まで、インタラクションを設計するのは画面を中心に行ってきたのだが、IoTのデバイスまでデザインがカバーする領域は広がっている。ハード、ソフト、メディアの境界が消え、融けてゆく世界で、デザインはどう機能していくべきなのか。ここでプログラミングが重要なツールになっていくのではと著者は語っている。プログラミングは、以前よりも学習コストが少なく、様々な言語を目的に応じて学ぶことができる。プログラミングは、プログラマーやエンジニアだけのものにせず、アイデアを動かして見せることで共有するためのツールとして活用していくべきであるとまとめている。

感想

今まで「気持ちがいい動き」と呼んでいた感覚的な表現は何だったのかを、自己帰属感や道具の透明性などの言葉で理解することができ、新しい視点を獲得できたように思う。そして、自分は良いインターフェースというものを、表面的にしか捉えられなかったのだと気付かされた。これからのデザインは、ハードウェアやソフトウェア、デザイナーやエンジニアなどの垣根を超えて、体験を設計するという発想になっていく。現在、私はスマートフォンアプリのデザイナーだが、数年後はどのようなメディアが主体になっているのか分からない。メディアの形式に囚われることなく、柔軟な視点を持ったデザイナーになりたいと思う。

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Saori Takehara

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