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朝食のために

朝、目が覚めたのは11時すぎだった。

その前の晩、近所のビストロですこしばかり夜更かししてしまったからである。ワインをゆっくりと飲み、バゲットとパテ、キャロット・ラペをつまみながら、いろいろと話をしながらその時間をすごした。とくに何を話たのかは、もうあまり覚えていないけれど。

夕方だったのが、いつのまにか日もなくなり、そして夜も深くなっていた。

というわけで、朝おそくに、むしろもう昼が近づいているというときに、目を覚ましてしまったのだ。正確な時間をいうと、11時23分に。いや、それより前から目は覚めていた。起きるかそうでないかという決断を、そのベッドの上によこたわって、ただ先延ばしにしていただけだ。

そして、目を覚ました。

その時間に目を覚まして、まず考えたことは、「お腹がすいた」ということだった。

「ああ、お腹がすいた。そういえば、昨晩は途中からあまりなにも口にしていなかったなあ」

とぶつぶつベッドの上で、3メートル以上も上にある白い天井を、ぼんやりとながめながら考えていた。その天井と壁の縁には、いつのどの時代からあったのだろうかというような、ペンキで形もよくわからなくなってきた、彫りの装飾が施されていた。そういえば、滞在しているこの建物もずいぶんと古い。

「 朝食だちょうしょく! 」

そして、僕はさっさと身支度をし、家をとびだした(『 Modern love 』はかかっていない)。

まず向かったのは、パン屋だった。

休日のはじまりのお昼まえということもあり、そのパン屋には、ぼんやりと、まだ日射しをあびるには、ぱっとしてない顔であふれかえって行列をつくっていた。おそらく僕もそのうちの一人となってそこにすいこまれた。

しばらく並びながら、ショーケースにおかれている、たくさんの種類のパンをみていた。しばらくみてしまっていたので、一つのパンという総称をもった茶色いものが、そこに一つずつおおきなかたまりとなっているようにみえだしてきたところで、ようやくマダムに呼ばれた。

すこし悩んで、エビのサンドイッチにアップルパイを選んだ、そして滞在先にかえった。

エビのサンドイッチはおいしかったけれど、アップルパイはやはり甘すぎて、3口ほどしか食べることができなかった。

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