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俺のCD棚 第32回

今回は、KID FRESSINO 【ai qing】※アイ チンと読みます。

KID FRESSINOは、東京出身のラッパーで、jjjとFebb as young masonの3人で組んだユニット「FA$HBACKS」のメンバー。元々はトラックメイカー志望だったが、最終的には自身でラップするようになったいう異色の経歴。今では、シーンを代表するような活躍ぶりで、スキンズを彷彿とさせるようなスタイルはもはや彼のアイコンと言える。

このCDは、そんな彼が2018年にリリースしたアルバムで、今のスタイルを決定づける転機となった作品である。

このCDとの出会い

JJJの時と同じく、STUTS【Pushin'】がきっかけで彼を見つけて以降、JJJと同じクルーであったという事もあって、じゃあ彼のソロ作品はどんな感じなんだろう、と思っていたところにリリースされたので即購入!といった経緯。まあ、至って普通ですな。

当時はまだスキンヘッドではなく、ファッションも今のような感じではなかったため、アルバムに収録されている曲のPVを観た時には、その変貌ぶりに驚愕したものである。

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楽曲について

名うてのバンド編成で制作した楽曲を中心に、セルフプロデュース曲のほか、バラエティに富んだ才能豊かなプロデューサーを迎えて制作された、それまでの作品とは全く違ったアプローチに挑戦した楽曲構成…というのが一般的な評価のようだ。

一方、個人的な意見としては、前述のような生音のバンドサウンドをベースとしながらも、そのアプローチはよくあるジャズ的な方向性でもロック的な方向性でもない、不思議な印象を受ける。

よくこんな複雑なラインにラップできるな、とそもそも全くラップできないくせに感心してしまうほどである。

特に1曲目「Coincidence」は、即興演奏なんじゃないかと思うほどに唐突な転調が何度もやってくる、とても複雑な楽曲。だが、聴いてるうちにそれがまたクセになる。病みつき。

また、客演勢のラップが、どうも彼に向けてのメッセージのように受け取れるものが多く、かわいい後輩が心配だから、みんなでこいつをメインストリームに押し上げてやろう、という気概すら感じる。

この辺りについては、リリースするまでの期間に彼自身が経験した、急激な状況の変化を危惧しているように思う(アメリカ留学と予期せぬ帰国、結婚、子供の誕生、そしてFebbの死)が、そんな部分に共感できなくても充分に楽しめるのでご安心を。

一曲挙げるなら

9曲目「not nightmare

このアルバムの中で一際目立つ、美しいフレーズを軸に展開させていくトラックに、彼にしては珍しくラップを強調して聴かせてくれる楽曲。

しかし、それもその筈。客演はあのISSUGIが担当なのだから。

ISSUGI…古き良きブーンバップスタイルを貫き通す、日本のHIPHOP界で最も硬派な、いわゆるリビングレジェンド(勝手に命名)。

控えめに言って最高。

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ジャケットについて

透明なケースに二回りも小さい彼のポートレイトが入っている、思わず二度見してしまうデザイン。(というか、そもそも透けて見える)

歌詞カードも入っていない為、中身が知りたければとにかく聴くしかないというのは、ある意味潔い。

※これがお洒落なのかどうかは未だに分からないが、後にも先にもこれしか見たことが無い、唯一無二なアルバムという位置付けのCDである。

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以上、第32回でした。

次回は、HIPHOPアルバムというパッケージで括った場合、間違いなくTOP5入りするであろう名盤中の名盤
Kendrick Lammar 「good kid, m.a.a.d city」を紹介します。

それでは、また。




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