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【古民家庭づくり_雨庭プロジェクトvol.1】〜車路づくり&既存石発掘〜

*土地を傷めない庭づくりの備忘録


🌱プロジェクトの背景

3年前に購入した自宅は、築100年以上の養蚕農家の古民家です。前住人の方はご高齢で別の場所に住まわれて約10年ほど空き家状態でした。

Before:県道沿いで背丈以上の草もボーボーの状態。草刈りからスタート
Before:既存木も伸び放題でした

お庭も背丈をこえるが草がボーボーです。草刈り機で開拓するところから始まったお庭づくり。果樹のなる木や既存木も立派で、大切にしていきたいなと思った植物たち。土地を傷めない形でお庭づくりを実践するため前職の造園会社の同僚を講師にワークショップ形式でガーデンデザインの専門学校の友人たちを中心に手伝ってもらいながらやろう!と思いました。

🌱”境川雨庭プロジェクト”の始まり

私が住んでいる笛吹市の境川町というエリアは甲府盆地を見渡せる山側の地域。水源も近く、集落の住人たちで水源をきれいに掃除したり自分たちの生活用水を守っています。

そんな水の豊富なエリアで、土地の地形を読み解きながら大切に、自分たちも地域に根付いていきたいなと思いました。

「雨庭」というコンセプトにしたのも、この土地が水を大切にしている場所でもあったからです。

 「雨庭」とは、地上に降った雨水を下水道に直接放流することなく一時的に貯留し、ゆっくりと地中に浸透させる構造を持った植栽空間

国土交通省中部地方整備局

アスファルトなどに覆われた都市空間では、地上に降った雨はほとんど地中に浸み込むことなく"排水"されていきます。一方、雨庭は、雨水を一時的に溜めることで、氾濫を抑制し、地下水を”涵養”することで水を循環させていきます。

雨庭の考え方

また、我が家は、県道沿いの高低差が非常に大きいところに建物があることから、山からの雨水は自宅側に流れ、水が溜まりやすい地形でした。
実際に、手を加える前は、雨の日には水たまりが庭にたくさんできていました。
「排水」じゃなくて「涵養」。土にゆっくりじっくり染み込ませ、地形も整えながら、健全に循環していく形を目指していくことを目的に設定しました。

◾️プロジェクトにおいて大事にしていること

土地を大切に扱う想いから以下のことも大事にしようと決めました!

・地のものをなるべく使う!
・環境負荷が少ない方向で!
・すでにあるものを生かし、ゴミを出さない
・植栽は宿根草などナチュラルで。野草とか
・人間も楽しく、学びながら
・石組、設計デザイン、環境造作などの各造園スペシャリストから庭づくりのプロセスを楽しく学ぶ
・地域の自然や歴史などの背景をふまえた古民家にふさわしい庭づくりをする
・みんなで対話と交流を通じてお互いの学びの機会にする!

こんな感じで水源近くにある、築100年以上の元養蚕民家で、土地の背景を読み解きながら次世代に残る庭づくりワークショップがスタートしました。

🌱[第一回WS]実施したこと

日時:2022年4月9日・10日
<1日目>
レクチャー: 「雨庭とは?」を知る
雨庭の事例紹介、考え方の視点(高崎先生・石井さん)  

<2日目>
既存石据え直し
車道づくり

<使用した材料>
竹炭、くん炭、栗石、瓦、レンガチップ、ウッドチップ、砕石、しがら枝など

<講師・指導>
いしい造園:石井さん・坂口さん
髙崎設計事務所:高崎先生・宇野さん

◾️1日目

学校時代の先生や前職の同僚にワークショップの講師をお願いし、最初にレクチャーからスタート。この土地の背景などを知ってもらいつつ、雨庭についての共通認識をみんなで共有しました。

先生によるレクチャー開始!
雨庭とは?


◾️2日目_車路づくり

2日目は朝からがっつり作業の日となりました。

県道からみた我が家全体。赤い屋根が母屋

上の写真のとおり、WSに自分たちで草刈りを終えた庭のBeforeは、土が剥き出しの状態です。ここに雨の日にはいくつもの水たまりができてしまい、車で道路に出る際には、いつも土を引きずって道路を汚してしまう状況でした。。。
この場所を過去の高田造園の施工事例を参考に改善していくことにしました。

参考:呼吸する緑の駐車場をつくる。 (平成27年9月27日) 
http://www.zoukinoniwa.biz/blog/2015/09/27927.html

高田造園設計事務所

まずは、水が染み込んでいく溝を掘っていきます。そこに竹炭・くん炭・藁などの有機物などを入れながら、微生物たちの住処を整え、水や空気が浸透しやすい環境を整えていきます。
見た通り、ガッチガッチの土で、スコップやダブルスコップで掘るのもやっとの重労働です。男性陣が頑張ってくれました!

溝同士も繋げて流れをつくる
溝に転々と縦穴を掘る

横溝の両端、真ん中などには、水が浸透するように50〜60㌢くらいの縦穴を点々と掘りました。雨水は横溝に集まり、 ゆっくり浸透しながら縦穴に染み込んでいくようになります。ダブルスコップでの上下運動はなかなか背筋にきます。
縦穴には、炭・くん炭・しがら枝を絡ませながら、泥詰まりを起こさないようにちょうどいい空間をつくります。その上にはガラ石を詰め、足場を整えて仕上げました。

ガラ石で整える
ガラ石・炭・くん炭も一緒に
大きい溝にはポイントで枕木を配置。溝にスポットハマる気持ちよさ
道路との境目には車の荷重が加わっても平気なように砕石を敷き詰める
枕木を配置。高さの微調整まで丁寧に
溝が綺麗

車路全体は表面を少し削って整えつつ、レンガチップ・砕石・ウッドチップを混ぜ合わせてカバーしました。これで土が剥き出し状態にならず、雨の日でも泥だらけにならない路が完成しました。
踏み心地もよし。見た目もナチュラルで、大変だった分、愛着がすごいです。
溝や縦穴は実際に目には見えないところにはなりますが、ここをちゃんとやるかどうかで、効果が大きく変わってきます。カチカチの土がフカフカになった心地を身体全体で感じることができたのが最高でした。

歩くとレンガチップや炭がしゃりしゃりと気持ちの良い路に

◾️2日目_既存石発掘

人数も多かったため、車路づくりをするチームともう一方で、お庭には既存の石がたくさんあったので、その周り綺麗にしつつ、据え直すチームに別れて作業をしていました。

Before:母屋の西側。自宅購入時のボーボー状態。既存石が植物に覆われてしまっていた

石組師の先生指導のもと、石の傾き加減を直したり、周りの植栽もどかして、綺麗に整えました。土を掘るとさらに石が出ていたりと、遺跡発掘をしている感覚でとてもおもしろかったです。

石の傾きを調整。当然石は重いので2~3人がかり。
この石は何を意味しているのかなど考察したり
水で洗うとすごく綺麗に!どういう意図の石組だったのだろう…

本来は石の向こう側には建物がなかったので、きっと、母屋の西側の部屋からは甲府盆地が見える百景になっていたのでは?などなど考察が広がるのもおもしろかったです。

西側の軒下の犬走はセメントで後から固められていました。ここも剥がすことで、空気の通りが良くなり、壊したガラは車路づくりの溝埋めに使用もできて、ゴミを出さない施工をしました。その土地にあるもの、出るものもまるっと生かしてゴミを出さない改善方法を実施。
ゴミが出ないって本当に気持ちがいいです。

整いました

◾️おまけ

2日間にわたるWSの宿泊先はご近所さんのアーティスト・レジデンスで。こちらも古民家を自分たちでリノベーションしたお家で外にキッチンがあったり、宿泊棟もありとても素敵な空間。
火を囲みながらBBQをして、飲んで、幸せな時間と空間でした。

◾️WS後

車路全部をWS時に整備はできなかったので、続きは夫婦で施工をしました。見た目もナチュラルで新緑に馴染む車路が完成!
歩くたびにレンガチップのシャリシャリする感覚が足元から伝わって心地いい。枕木が雨水が浸透する装置としても機能的に作用しながら、デザインとしてもアクセントになってかわいいところがとてもお気に入りです。
何より、本当に水たまりができない。
目には見えない世界ではあるけれど、土の中の菌糸ちゃんたちがじわじわ水を浸透させてくれている環境をつくってくれていると思うと、愛着もじわじわと。自然と隣り合わせで暮らせていることに感謝が溢れてきます。

◎ポイント
・経過観察
雨の日にどう変化するのか、観察することが大事
・自分たちでやるから愛着が芽生える!

合宿のようにできるので、準備やガチの土木作業は身体にきますが、疲れた身体にビールもさいこう。
仲間に手伝ってもらって、指導も含める形で施工を進めてくださっている講師の皆さんにも本当に感謝しかないです。

引き続き、継続して土地に馴染む空間・風景を作っていきたいと思います。



いつもありがとうございます!スキもメッセージもシェアも全部嬉しいです。なかなか発信下手ですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします😁