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■ロシアW杯■敗者たちの挽歌 その2

続けます!続きます!

デンマーク

グループリーグを大過なく抜けたが、その後の決勝トーナメントでクロアチアとPK戦の末に敗れ去った。グッドチームだった。DFは固く、ハードワークをいとわず、そして決定力がイマイチという典型的北欧チーム。フォワードのポウルセンはワーワーしていて、北欧の藤田祥史みたいだった。それでもエリクセンというトッテナムの10番がいた分、他のチームよりはマシだったろうか。必殺のキックとセットプレーで常に危険な香りを漂わせ、まさに貫録十分。さすが普段からデレ・アリとかダニー・ローズとかアクの強そうな連中と付き合ってる奴は違うな、と我々に納得させてくれた。さて、決勝トーナメントのクロアチアとの死闘は序盤に両方ともミスから点が入ったが、そこからは神経戦。特にGKシュマイケルは延長終了間際のモドリッチのPKを止め、さらには続くPK戦でも2本のPKを止めて、親父譲りの能力を見せつけた。プレビューでサイコ野郎とか言ってごめんな、今でもけっこう思ってるけどごめんなシュマイケル。デンマークは各ポジションおしなべて特に弱点というところはなかったいいチームだったが、ここから先に行くには長い時間がかかりそうである。それは人口とかのどうしようもない部分に起因していることでもあるし、割と頻繁にベスト16に進出している現状こそが成功なのだと言ってもいいかもしれぬ。まあ、それでデンマーク人が納得しているとは到底思えないが、人は分かり合えないものである。デンマーク名物のお菓子・ラクリス(フィンランドではサルミアッキと呼ばれる)を一口でも食べれば「わたしはデンマーク人とは仲良くできない」ということに気付くはずである。土産で食べさせてもらって「喧嘩売ってんの?やるの?」と思ったお菓子は初めてである。

アスファルトを舐めた味がする

ペルー

実は!ほとんど!見てないのです!!謎の薬物反応を「たまたま」で乗り切ったゲレーロも!内田の元同僚のファルファンも!実は!ほとんど!見てないのです!本当は!わたしは!六畳一間の部屋で!1ヶ月かけて真っ白な壁にB'zのすべての歌詞を書き写し!次の1ヶ月をかけてそれを消しゴムで綺麗にしていく!そういう生活を!十五年ほど!送っています!幸せです!送っています!幸せです!

ゲレーロがたしなむ元気の出るお茶

オーストラリア

開幕半年前に監督を代えたオーストラリアだったが、予想通りにグループリーグ敗退。ポゼッションサッカーをハリルホジッチにずったずたに潰されて心神喪失状態に陥ったポステコグルー監督が辞任し、サウジアラビアから放逐されたファン・マルワイクを拾ってきたことでなんとか手当。ファン・マルワイクらしくハードに闘う集団を作ろうとしたが、どう考えても時間が足りず。スキンヘッドの闘うゲームメーカー・ムーイやコンビを組むヒゲ武闘派のジェディナクは好選手だったが、力は及ばなかった。初戦のフランス戦ではデンベレ・グリーズマン・ムバッペというわけのわからないスリートップ布陣できたフランスをぎりぎりまで追い詰めたが、結局なんだかよくわからないゴールを決められて敗戦。ここが運の尽きだった。その後はデンマークに引き分けで最終戦は開き直りペルーのマチュピチュアタックで粉砕された。とにかく点が取れなく、2得点も結局PKだけ。流れの中からチャンスを作る数も少なく、一番迫力があったのは終盤のパワープレーという毎度毎度のオーストラリアな感じだった。これだったら序盤にカンガルーを投げつけ、中盤にカンガルーを投げつけ、終盤にカンガルーを投げつけるという「カンガルー三段構え」で臨んだ方がよかったのではないだろうか(作者は正気です)。ここもタイプは違えど日本と悩みは同じで、今まで自分たちだけでやってきたサッカーが世界で通用しないので新たなスタイルを求めたものの放り投げてしまったのでどうしようという感じだった。もちろん代表だけではなく、育成も含めてなんだろうけど、もうここは地道に行くしかない。「カンガルーを育てるためには飼育人を育てなければならない」というオーストラリアのことわざ(今俺が考えた)に基づいて、がんばっていただきたいものである。

めっちゃ喧嘩強そうなカンガルー

アルゼンチン

現代サッカーとはいったいなんなのか、という深遠な問いを投げかけてくれたアルゼンチンはベスト16で華々しく散っていった。現人神メッシを要するアルゼンチンが初戦アイスランド相手にどういうサッカーを見せてくれるのか興味津々だったが、想像を絶するサッカーですごかった。基本的にボールを持ってる人以外は棒立ちで連動性は皆無。メッシもボールを捌いて、ボールを運んで、チャンスを作って、シュートを撃つという守備以外のすべての作業に従事。見ている人間に「これはいつのサッカーなのだろうか?いや、もしかして30年後の未来のサッカーなのか?」と首をかしげるばかり。何かあるのかと思わせつつもひたすら攻め倒してアグエロのシュートで先制するも、メッシのPK失敗が響いてアイスランド戦はドローで終了。2戦目のクロアチア戦は多少マシになったものの連動性のなさは継続。カバジェロのひどいパスミスを知力18っぽいレビッチにボレーで叩きこまれるとそのまま崩壊の一途をたどり、サンパオリ監督の権威は失墜。3戦目以降は「ベンチにいるおっさん」のポジションに降格となった。ナイジェリアとの3戦目はメッシの力技とロホの謎ボレーで勝つも、そこが限界だった。ベスト16ではフランスに完全に力負け。ここ50年で最高の選手メッシは結局W杯を取れないままおそらく代表のキャリアは終焉となってしまった。アルゼンチン国内事情からかあまりにもピーキーな対人スキルに優れた選手ばかりが揃い、バランサーとかゲームをコントロールできる選手がほとんどいないのが痛い。イグアインもアグエロもディバラもイカルディもオタメンディもいるのにラキティッチがいない。ヨーロッパの傭兵として1チームに2人くらいそういうやつがいるのは構わないのだが、それが11人集まるととにかく烏合の衆になってしまうという頭の痛い問題だった。ただ、問題なのはそれがおそらく国内リーグの傾向からそうなってしまうということであり、また、これだけバラバラな状態でも個人技からフランスをあと一歩まで追い詰めてしまうというスーパーサイヤ人的な戦闘能力の高さを披露しているため、なかなか改革というのは難しいのだろうなあ。ネクストメッシ待ち。

スタンドで喜ぶ典型的なアルゼンチンファン

ナイジェリア

「W杯という大会を教えてやろう。世界中のチームが出場する。ナイジェリアがアルゼンチンと対戦する。そしてナイジェリアが負ける」という具合に、今大会もナイジェリアはアルゼンチンと対戦し、また負けた。1994 ナイジェリア1-2アルゼンチン、2002 ナイジェリア0-1アルゼンチン、2010 ナイジェリア0-1アルゼンチン、2014 ナイジェリア2-3アルゼンチン、2018 ナイジェリア1-2アルゼンチンと出てればだいたいアルゼンチンにぶつけられて潰されてるのがナイジェリアである。今大会のナイジェリアは割とまとまったチームでそこにモーゼスとかムサ976-1号がいい感じのアフリカ味を出していたのだが、結局最終戦でアルゼンチンと対戦して終了間際にロホにボレー叩き込まれて死んだ。ロホて。よりにもよってロホて。20年ちょっとで5回対戦とかもうほとんど毎大会ぶつけられているし、もはやここまで来るとFIFAの陰謀なのかとも思えてくるし、もうそんなにずっと一緒にいるのなら付き合っちゃえば?と言いたくなってくる。「でもあたしアルゼンチンくんのことほんとに好きかどうかわからないし……」(トクン)。どうせ毎大会対戦するのならばもういっそのことプレW杯としてナイジェリア・アルゼンチン杯を大会前に開いて、勝った方がW杯に出場できるというのはどうだろうか。まあたぶん出てくるのはアルゼンチンなんだけど、そこはもうWin-Winということで。ね?そうしよ?というか、ここまできてミケルの父親が大会期間中誘拐されててめっちゃ身代金請求されてたってニュースが入ってきた(最近助け出された)。W杯がらみで父親が誘拐された選手としてはブラジルのロマーリオがいるけど、これは「解放しないとW杯出ないぞ」と宣言することで解放されたはず。父親が誘拐されながらW杯に出た選手はたぶん初めてだろう。どんだけすごい心臓してるんだよ、ミケル。リーアム・ニーソンかよ、ミケル。3試合ほとんどフル出場だぞ、ミケル。でも全然プレーが思い出せないぞ、ミケル。

顔を見てもピンとこないミケル

アイスランド

魂のチームは確実に爪痕を残してW杯を去っていった。つうかね、でかい。マジででかい。サイドバックのスクラソンが1人だけ180㎝以下らしいけど、そいつも179㎝とかで、俺だったら身長聞かれた時に「180㎝ですね」ってなんの罪の意識もなく答えちゃうからもうそいつも180㎝でいいんじゃないか。っていうか、スクラソンはスタメンじゃなかったし。ハイライトはやはりアルゼンチンとの第1戦だろうか。謎のアルゼンチン未来サッカーは他のチームと比べれば守りやすかっただろうが、それでもボールを持ったら確実に2人は剥がしてくる現人神メッシを肉体の圧力とゾーン守備で守る、守る。アグエロの一撃はサラリーの違いを感じさせたが、それでも最後のメッシのPKを止め、ドローに持ち込んだのはお見事。アルゼンチンを混沌のグループリーグ争いに叩き込んだのはまぎれもなくアイスランドの力だった。その後の試合も惜しいものばかりのグッドルーザーだった。しかし、終わってみれば健闘が目立ったものの限界も見えてきた。守備は非常に固いのだがやはりサイズの問題でスピード系は苦手としていたし(実際、ナイジェリアのムサには2ゴール叩き込まれた)、攻撃でもセオリー通りのカウンターとクロス以外ではシグルズソンとグズムンドソンのアイデアに頼り切りでそれもトップレベルだとなかなかきつい。育成の優等生アイスランドだが、やはりここらへんの多様性というものはけっこう人口によってきてしまうのだろうなあと思ってしまった。ただ、それはともかくサイドハーフのルリク・ギスラソンはゲーム・オブ・スローンズに出てきそうなバイキング系イケメンだったので、ぜひぜひ女子の方々はこれからも動向に注意していただきたい。現在はドイツのニュルンベルク(長谷部、清武、金崎が過去に所属)にいるので、さあ航空券をゲットだぜ!……と思ったら、ザントハウゼンとかいう聞いたことがないチームに移籍したらしい!調べて行け!お前にはグーグルマップがある!

ラムジー・ボルトンに拷問されると簡単に秘密を喋りそうなギスラソン


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