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【グループD】選手名鑑だけで語る2018ロシアW杯プレビュー

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アルゼンチン

前回大会では走らない現人神メッシと走りまくるマスチェラーノの奮闘で決勝まで進出。しかし、現代サッカーのトップであるドイツ軍団に屈する形となった。今回も予選をギリギリで突破するなど多難な道のりだった。メッシ、イグアイン、アグエロ、ペロッティ、ディバラ、ディ・マリアなど相変わらずアタッカーはGAPのセール並に投げ売りできるほどいるが、結局このうちピッチに立つのは3人程度。イカルディとかも含めて残りはどうせ暇するのだから、W杯期間中だけでもジェフユナイテッド千葉で夢を叶えないか。それでも、うまくいってないっぽい。ビリアは優秀なMFだし、バネガもボールを運べる、新鋭ロ・チェルソもいるし何とかなりそうな気はするのだが。守備もマスチェラーノは正直衰えはいかんともしがたいが、シティの「グァルディオラ縦パス教室」によって精度のいいボールを入れられるようになったオタメンディもいるし、ローマのファシオは堅実だし、ロホはなんか名前がいい。普通にある程度まで勝てそうな面子なのだが、監督が問題なのだろうか。サンパオリ監督は重度のビエルサ信者でオールコートマンマークな戦術でチリを南米選手権制覇に導いた。ただ、そのインテンシティの高い戦い方がもしかしたら今のアルゼンチンに合ってないのかもしれない。メッシはサンチェスよりも得点できるけど、サンチェスより走れるわけではないしね。ビエルサも最終的にW杯でダメだったように、もしかしたらビエルサ男塾の戦術は母国アルゼンチンにはあまり合ってないのでは……?という悲しい結論になってしまうので、サンパオリ監督には頑張っていただきたい。具体的にはビエルサ式完全放棄でドン引きからのメッシ、アグエロ、ディ・マリアのカウンターで勝っても「これはビエルサ式」「ビエルサもこうやってた」「ビエルサはこうやりたかったってダイイングメッセージで書いてあった」って言って、羊頭狗肉でビエルサ式の復権をしよう!なあに、勝てば官軍、「そんなんわいのサッカーちゃう!」って叫ぶビエルサの声なんかかき消されてしまうこと間違いなし。ネオビエルササッカーでマラドーナ以来の戴冠や!(でもベスト8くらいで消えそう)

コミュニケーションよさそう アンヘル・ディ・マリア
マンUではイマイチフィットしなかったが、PSGでは復調し、さらにはアルゼンチン代表では欠かせない選手である。アタッカーではあるのだが、惜しみない運動量と気の利いた顔出しで中盤と前線を繋ぐことのできる潤滑油となれる選手。アンチェロッティ率いるレアル・マドリーではベンゼマ、ベイル、ロナウドのBBCが揃い踏みで守備が死にかける中、セントラルミッドフィルダーとウイングを兼任して間を繋いで守備もしてバランスの悪いチームを成立させ、CLまで制覇したのは記憶に新しいところ。まさにコミュニケーションである。多様な役割をできるからと言って本業がしょぼいかというとそうでもなく、普通にウイングをやらせても当然のようにうまいので監督としては非常に使い勝手のいい選手。今大会でも普通に重宝されるだろう。なにしろ、絶対的エースのメッシの邪魔にならないというところが重要である。同じアタッカーのディバラ(NHK表記だとジバラ)はメッシとまるっとかぶっていてお互い全く機能しなくなるので、どちらがいいとかいう問題ではなく相性は重要なのだな、と。そういう意味で誰とでもメイキンラブできるディ・マリアのあばずれっぷりじゃなくて柔軟性はまさに現代フットボーラーの鑑であり、たぶんめっちゃ頼めばやらせてくれる聖母マリア様なのである。

誰とでも繋がれるディ・マリア

クロアチア

前回もよい面子ではあったが、今回もなかなかの面子で上位を狙えるのではないか。円熟期に到達したモドリッチの存在は心強い。その判断速度は異常でリヴァプールの猛烈プレスをクロースとともに悠々とかわしていた。彼とラキティッチのコンビにいつの間にかボランチ仕事が板についてきたコバチッチが絡み、ブロゾビッチも控えている中盤は今大会のチームで最も華麗ではないだろうか。前線も強力。世界ナンバーワン斧持たせたら似合うサッカー選手のマンジュキッチはシンプルだがとにかく屈強だし、インテルで躍動するペリシッチは城の留守を任せたら簡単に叛旗を翻しそうな顔してるが、強力で精度のいい両足のキックは脅威そのものだし、クラマリッチは使い勝手がいいし、カリニッチはミランでそんなに試合出てないけど名前がカリニッチでかわいい。ディフェンスは「当たるも八卦、当たらぬも八卦」でおなじみのロブレンがいて不安は拭えないが、前回大会で頭を怪我してクロアチア国旗柄のサポーターをつけてクロアチア面白おじさんになったチョルルカ、ELで退場になって死ぬほど面白い驚き顔を披露してたバルサミコ酢じゃなくてブルサリコもいるし、なんとかなるだろう。ただ、それよりもアンテ・無能・チャチッチがクビになったのは大きい。後任のダリッチ監督は予選敗退の危機を潜り抜けてプレーオフながらも本選に辿りついたので、少なくともチャチッチよりはマシ。クロアチアサッカーを牛耳っていたドンであるマミッチもクビになり、ようやく新しい時代が始まりそうなのだが、そこで普通に新しい独裁者が来そうなのが旧ユーゴの闇である。ともかくグループは厳しいが、抜ければベスト8あるいはベスト4くらいまではいけそう。そして負けたところで発煙筒がんがん炊いて会場を厳戒態勢にしてFIFAから「クソ暴徒どもよ思い知るがよい」とか罵られて次の予選の勝ち点を剥奪されて欲しい。

コミュニケーションよさそう ルカ・モドリッチ
この男の空間認知能力と判断スピードはどうなっているのだろうか。リヴァプール戦だけでなくとてつもないプレスを体の向きとトラップ、あるいはダイレクトでアウトサイドで流すなどその時々で最善の判断を瞬時に行ってあっさりと回避する。相棒のクロースがとにかく100点のプレーをし続ける天才ならば、モドリッチは相手の裏をかくことで時に120点のプレーをすることのできる天才だ。伊達にレアル・マドリードの10番を背負っているわけではない。ただし、昔、ラサナ・ディアッラがレアル・マドリード10番を背負っていたことはここだけの話にしたい。もはや彼のパスは言葉よりも雄弁に語るコミュニケーションであり、モドリッチの優しいインサイドパスを受けた女性は絶頂に達するし、強烈なインステップのパスを受けたベンゼマはああなったし、アウトサイドの変態的なパスを受けたマルセロはショックで髪の毛がアフロになってしまったことは有名な事実である。モドリッチ猊下におかれましては、そのマジカルパスで某日本サッカー協会幹部の頭を射抜き、有能とまでは言わないけどせめて正気に戻していただきたい。というか、引退したら日本サッカー協会会長やってくれませんか。どうですか、1日1寿司でどうですか。2寿司でもいいですよ。

食後のコーヒー感覚で発煙筒を嗜むクロアチアサポーター

アイスランド

魂のチームはクロアチアを抑えて予選を首位通過。ユーロベスト8はフロックではないことを証明しての初出場は立派の一言である。人口30万人で日本でいったら福島県郡山市くらいの規模なのにユーロでベスト8に入るチームを作るのは本当に育成が機能しているのだろう。サッカーはそれほど難しいことをしていない。規律の整った守備と基礎的な能力を備えた選手たち、そしてオーソドックスな戦術を遂行し切ることのできる継続性であり、どこぞのフリーダム代表に爪の垢でも煎じて飲ませたい次第である。その中でもスターと言えるのはエバートンのシグルズソンだろうか。スウォンジーで活躍し、大柄ながらも繊細なボール扱いと豪快なミドルシュート、さらには正確なキックで点に絡み続けた。ただ、怪我あがりなのが心配。あと、サイドのグズムンドソンはバーンリー所属なのだが、よく走り、テクニックもある非常にいい選手だ。そして、アイスランドはとにかく全員でかい。180㎝以下はサイドバックのスクーラソンだけで、あとは大男揃い。ここにFKやCK、さらにはグンナルソンが必殺のロングスローを叩きこんでくるのは普通に怖い攻撃であり、足で蹴るだけがサッカーではないことを教えてくれる。さらに、試合後にはユーロ8で有名になったアイスランドのバイキング・クラップも楽しめる。死ぬほど単純な応援ながら「リズム感いらない」「歌詞も特にない」「政治性ゼロ」というすぐに始められる応援なので、試合後の挨拶がマンネリ化してきているJリーグのチームもどんどんパクっていけばよいのではないだろうか。ともかく厳しいグループではあるが、可能性が全くないどころではなく下手すればアルゼンチンも食える。アイスランドといえば火山なので、補給ドリンクに溶岩を仕込む(アイスランド人は溶岩を飲んでも死なない)とかの事前準備をしっかりとして初のW杯を楽しんでもらいたいものである。

コミュニケーションよさそう 全員よさそうだから特にいナイスランド

バイキング・クラップ

ナイジェリア

さあ、ナイジェリアである。毎回出場しているのだが、毎回特に語ることがなくて困っているのである。ナイジェリア代表については、有史以来、戦術はずっと「がんがんいこうぜ」だったが、昨今はヨーロッパのクラブで長いことやってる選手も多いので共通の戦術基盤は持っている。はず。モーゼスにもある、はず。昔のようにオコチャがとにかくぐるぐる回ってるとか、カヌが常軌を逸したキープ力だけどそこはセンターサークルとか、マルティンス速すぎて時空の壁を超えてうっかり古代ローマ時代に突入、とかそういう規格外のことは起きなくなっているはずである。なので、前線にアーメド・ムサ、ヴィクター・モーゼスとかの一騎当千風な奴らがいたら、結果的に討死するとしても無茶を承知で正面から突っ込ませてみたい気持ちはわかるが、現代表ではそういうことは起こらない。「なに小さくまとまってんだよ……」とリーゼントを整えながら苦言を呈したくもなるというもの。俺は昔ナイジェリアを初めて見た時の「わーー!すげーー!わーー!すげーー!!わー!なげー!!でも負けたー!」っていう純粋な驚きをもう一度取り戻したいのである。我々が期待するのは、たとえばモーゼスが大地に蔓延るマンパワーとして増殖していったり、アーメド・ムサがタンザニアを走る列車を走って追い越したり、イウォビが空中を浮遊しているとかそういう感じのびっくりアフリカ現象なのである。裏切らないで欲しい。

コミュニケーションよさそう ジョン・オビ・ミケル
俺たちのミケルが何度目かのW杯である。毎回ナイジェリアの試合はちょろっとしか見てないので、いつも「ああ、ミケル、でかいな」と思ってそこで終わりなので、活躍してるのかどうかもわからない。ただ、旧所属のチェルシーではロッカールームのまとめ役として控えなのにモウリーニョからの絶大な信頼を得ていたというからものすごいコミュニケーション能力なのだろう。しかし、本当にプレーの記憶がない。2006年から2017年までチェルシーに所属していて240試合以上出てるので絶対に俺もかなりの数を見てるのだがミケルのプレーはほとんど覚えてないのはなぜなんだ。ショートパスがほとんどだし、アンカーのポジションでどっしり構えて前に上がるわけでもなく、でかいからと言ってセットプレーで得点を取れるわけでもなく、とにかくバランスを取っているので印象に残りづらいのは確かなのだが、ここまで記憶にないのはおかしい。ここまできて俺はグーグルを検索する。そんな選手はいない……?過去の雑誌を開いてもチェルシーにそんな選手はいない。待て、俺は誰を探していたんだ……?ミケ……?俺は……誰だ……くっ……頭が……オー……バー……メーヤ……ン……

顧客が本当に欲しかったもの

さあ、グループEはこっちだ!!

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