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■ロシアW杯■敗者たちの挽歌 その3


セルビア

怒りのセルビアは頑張ったのだが惜しくも決勝トーナメントに行くことはできなかった。コスタリカをエネルギー充填100%のコラロフ砲で粉砕するも、2戦目のスイスとの決戦に敗北、3戦目のブラジルには普通に殺されてなんともあっさりとW杯は終わってしまった。悪くないチームだった。DFはスピードがそれほどなかったが悪くなかったし、チームの背骨マティッチはひたすら働き続けた。ただ、攻撃がうまくいかなかった。「大器過ぎる」「もはや器というより壺」「アレもデカそう」と噂のセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチはオフ・ザ・ボールの動きに優れていたのだが、ビジョンを共有してくれる選手がいなくて全然パスが出てこないので単なる囮にしかならない。前線のミトロヴィッチは屈強で恐ろしいFWだがパスを出せる感じでもないし、タディッチとかにそれを求めるのは無理だし、ましてや「カブトムシのほうが賢いかも」のリャイッチにそんなことができるわけもないだろう。なんだかむちゃくちゃいい動きしてるのにもったいなかったミリンコヴィッチ=サヴィッチだが、我々は決してその名前を忘れず、なんか言うと気持ちいいからたまに無意味に呼ぶだろうミリンコヴィッチ=サヴィッチ。どうしてもやはりこれより上に行くにはちょっとオフェンスにインパクトが足りなかったかなあ、と。マティッチも基本は黒子のプレーヤーだし、攻撃で決定的な仕事ができる選手がいるといいね、という感じだった。ただ、すす代表のジャカとシャキリの双頭の鷲煽りは普通にドロップキックしても良かったと思う。リャイッチあたりをちょっと煽ればすぐ突っ込んでいったと思うし。

敵軍に特攻するリャイッチ隊員とコラロフ隊員

コスタリカ

ペルーよりは見た!のだが、ひたすらケイラー・ナバスが耐えていて最終的に決壊するという悲しみの民族叙事詩みたいな感じになっていて悲劇的結末だった。セルビア相手に耐え続けたのにコラロフ砲で爆破決壊。2戦目はブラジル相手に善戦をしながらもロスタイムでコウチーニョに被弾した上にネイマールにトドメを刺されてなんかブラジル劇団に巻き込まれた形。最後のスイス戦ではようやく得点を上げるものの結局は引き分けどまり。前回大会の大躍進を再現という形にはならなかった。ただ、ナバスはとにかく止めまくった。わりとゆるふわパーマなDFラインだったので雨あられとシュートが飛んでくるのだが、そこはさすがレアル・マドリーの守護神である。あらゆるパターンのシュートを止めまくっていて、もしキーパーが拙いキャッチングに定評のあるヤンキース正捕手ゲイリー・サンチェスだったら5回7失点くらいしていて田中将大がニューヨークタイムズに「今世紀最大の災害はタナカによってもたらされた」とか書き殴られるはずである。しかし、正直な話、ナバスが正GKで何が不満だというのかレアル・マドリー。もはや国籍以外に代える要素が見当たらない。代わりに取りたいデ・ヘアなんてこの大会枠内シュート10本中1本しか止められてないんだぞ!(うちPK5つ以上)。ナバス先生は追い出されたらジェフユナイテッド千葉で一緒に夢を叶えましょう!

来たらうちのやり方を学んでもらうけどね

スイス

高性能だがハイパー地味国家スイスはやっぱりベスト16で消えた。ゾマーはいいGKだし、DFラインもそこそこ安定、サイドバックのリカルド・ロドリゲスはいい感じの葉っぱを横流ししてくれそうだった。ボランチはベーラミのバカがとてもよいし、前線ではシャキリも足が短いけど悪くない選手だ。しかし、ブラジルとは引き分けたとは言え、いかんせんFWのパンチ力が微妙すぎる。セフェロビっちにせよガブラノビっちにせよドルミっちにせよ、名前はめっちゃ3人共かわいいのに三者三様で微妙感が漂っていて、これではけっこうきついなあと。ここに移民でもなんでもいいからすごいのが入ればベスト8もいけるのではないだろうか。「求むムバッペ、もしくはエンバッペでもいい」の広告をスイス日日新聞に掲載しよう。他で気づいたことと言えば、アーセナルで見るたびに罵倒されてるジャカがスイス代表だとのびのびジャカになっていて、がんがん縦パス遠そうとするし、ちょっとおしゃれっぽくゲームを組み立てようとするし、殺人タックルをためらいなくぶち込むし、気が狂ったようにミドルを撃ったりしていて面白かった。でもよくよく考えたら最後の2つはアーセナルでもよくやってることだった。他にはスウェーデン戦でジュルーがユニフォームのパンツを引っ張られたときに解説の松木さんが「すごい伸びますよー!伸縮性すごいですね!」ってめっちゃ叫んでたのが印象的。たしかにすっごい伸びてて破れてなかったけど、そんなに感動することかよ。笑

スイス代表ユニフォームの素材

メキシコ

ドイツをスーパー奇襲で破ってノリノリだったが、あまりに調子に乗りすぎて最後は痛い目を見た。戦術家オソリオ監督が的確にドイツの弱点を見抜いた策が大当たり、メキシコ製エムレ・モルことロサノとチチャリート、ベラのカウンターでドイツを蹂躙。特にロサノはこの一撃で移籍金10億は上がったんじゃないかという先制点で、ドイツを地獄に叩き落とした。その後の韓国戦も地力を見せて勝ったのだが、最終戦で落とし穴。ちょっとノリノリ過ぎたのかスウェーデンの術中にはまって完敗。ドイツが負けたおかげで決勝トーナメントに行くことができたが、そこで待っていたのはブラジル。「おえええええええええ聞いてないトルティーーヤーーーーーー!!」と叫んだかどうかは知らないが、順当に叩き潰された。南無南無。戦術分析に定評のある俺の分析によると、やはりメキシコはパーティーが足らなかったのだと思われる。W杯前には派手なおっぱいパーリーを開いてサンチョをパンチョしたことでドイツを撃破したのだから、ブラジル戦前にもやはり景気づけにパーリーしてタコスをテキーラすべきだったのである。これでベスト16でまた散ったメキシコだが、1994年大会から7大会連続出場でそのすべてでベスト16で散っている。もはやこれは狙っているとしか思えず、メキシコ社会において16が神聖な数字とか、16人の敬虔なキリスト教徒の死とかそういう話があるのだろうか。いくらなんでも異常過ぎであり、その真相を探るべく私はメキシコ代表のパーティー会場へと潜入したのであった。

メキシコでは一般的なパーティー


韓国

とんでもない組に入ってしまってお先真っ暗だったのだが、僥倖のような1勝を得ることには成功した。予選の時よりはだいぶマシになっていたが、それでも他のライバルと比べるとかなり厳しい内容だった。攻撃もソン・フンミンの特攻以外は意図が見えず、速攻が整備されているわけでもないので、とにかく殴られ続ける時間帯が長かった。2戦連敗なのに星の巡り会わせでなぜか最終節まで可能性は残ったのだが、3戦目も気合が空回り。「韓国の大森晃太郎」ことムン・ソンミンがフルスロットルで頑張ったのだが、いかんせん「こ、これが限界~~~ノ~カムジャタン~~~」という個人的・組織的限界を見せてしまってとても悲しかった。一応ドイツ戦ではセットプレーから点を取ったが、ほとんど偶然である。シュティーリケ監督退任以降いろいろと模索してきたが、結局それがものにならなかったのはかなり辛い結果だった。このチーム状態で卵を投げつけられたソン・フンミンは超かわいそうであり、できることならば俺ではなくて日本サッカー協会会長が代わってあげたかったものである。なんか未来につながりそうな感じは全然しなかったが、とりあえずドイツに「m9(^Д^)プギャー」ってできたから、今大会はそれでよしとすればよいのではないか。今日はこれくらいにしといたる!(고기는 아주 맛있는)

映画『タクシー運転手』オススメです!

ドイツ

やややややややややややや、やってしまった!!!今大会最大のやらかしてしまった感のある前回王者は真価を1ソーセージも発揮することなくロシアの地を後にした。なお、フットボリスタ誌上で俺がドイツを優勝予想したからドイツがネタに巻き込まれたという一部の意見には強くノーと言わざるを得ない。俺のせいじゃねえよ!!開幕戦、ポゼッションからの一方的な展開を見てふむふむこれが今回のドイツかと思ったのだが、なんとそれはメキシコの罠でした!ぎゃー!という具合にクロース、フンメルスにマンマークで出所を塞ぎ、ケディラにボールを持たせてカウンターをかますというメキシコ大作戦にたじたじ。ロサノにシュートを叩きこまれるとそのまま敗戦となってしまった。「やっべえ、めっちゃやっべえグーテンベルク」と2戦目に臨むも、相変わらず覇気の感じられない内容で、超絶ポゼッションだがパターン攻撃ばかりですべて跳ね返され、スウェーデンに先制を許す。さすがにその後は必死になってロイスが同点弾を叩きこむも、そのまま逆転はできず。ラストプレー近くになってトニ・クロースのこれぞ個人技としか言いようのないFKからのシュートで首の皮一枚の勝利。しかし、「韓国?楽勝楽勝、楽勝アウトバーン」とばかりにエンジンはかからず。そうこうしているうちにセットプレーのこぼれ球を流し込まれて先制、ようやく必死になって攻めるも時すでに遅く、最後には上がってきたノイアーが敵陣でボールを奪われて超ロングパスからそれを受けたソン・フンミンに流し込まれてジ・エンド。ものすごくレベルの高いジェフ千葉キーパー佐藤優也を見た気分である。最後にせっかく上がってきたノイアーがなぜかクロスを上げてたのは混乱の極みの象徴で、いいところなんか一つもないW杯が終わってしまった。試合を見ていて思ったのは必死感のなさ。ボールを奪われてもプレスにいかずに簡単にカウンターを許していたし、それは絶体絶命の状況でも変わらなかった。狂ったようにパスを回して最後はフンメルスかゴメスがヘッドで外すという謎の未来サッカーこそ「自分たちのサッカー」と呼ぶのにふさわしく、本当に相手のことを考えていなかったのだなあ、と。そのプレー姿勢は傲慢、の一言だった。ただ、ドイツの偉いところはしっかりと分析して修正するであろうこと。次のユーロでは、また強いドイツになって戻ってきそうである。とりあえず留任が決まったレーブ監督は「心の中からグァルディオラを消す」「漫画で学ぶゲルマン魂全2巻を読破する」「乳首を強調するシャツを着ない」というところから始めてもらいたい。

ドイツに本当に必要だったもの


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