元採用部長から新卒採用担当者へー4、採用プロセスと選考プロセスの設計

 採用、特に新卒採用では数字を把握することが重要であることは前回お伝えいたしました。その数字の動きをもとに採用プロセスの設計を行います。ここでいう採用プロセスとは、選考プロセスを含む採用全体についてのプロセスのことを指します。おおまかなプロモーションプランと募集方法、選考、Attraction Activity(会社への興味と理解を深めるための活動)、内定の出し方、内定後のアクションなど、全体についての大まかなプロセスを設計します。その際に重要なのは、それぞれのプロセスおよびアクションについての人数の動きも予想することです。新卒採用は水ものですので、実際の数字はプラントはことなる動きをすることは確かですが、全体として採用活動がどのように進んでいるのかについて大まかな状況を把握するためにも、人数を予定することは重要になります。

 採用プロセスの設計は詳細である必要はなく、以下のような内容について数字と合わせて設計を行います。

・プロモーション(社内・外)の方法と時期
・プロモーション資材(会社案内やブローシャ―)の作成
・エントリーの方法と時期
・学生からの提出書類と時期
・取得した情報や書類の管理
・関係者および協力者の洗い出しと説明の内容、時期、方法
・選考の評価軸の決定と評価シートの作成
・アセスメントテストの選択と実行の方法・時期および結果の利用
・選考・面接の方法とそれらに関係する書類のさばき方
・合否決定の方法と時期および結果の伝達方法
・内定の決定方法と時期および結果の伝達方法
・内定後のアクション
・活動全体の把握とその状況の共有の方法
・Attraction Activityの内容と時期
・入社後の配属決定の方法とその時期
・入社手続きの方法とその時期
・学生との接し方(プロセス全体を通じて)
・計画した数字と大きく異なった場合のバックアッププラン

 これらを決定していくときに重要なのが、コンセプト・ノートの内容です。全ての採用プロセスを通じて、コンセプト・ノートでまとめた内容を盛り込んでいき、プロセスそのものにそのフレーバーを付加するのです。例えば、ターゲットとなる学生について、”慎重であること”を求めるのであれば、合否の連絡をメールではなく、電話で行うようにします。そして、結果だけではなく評価の内容やフィードバックも含めて行い、今後のプロセスでなにを評価するのか、どのような面接になるのか、も説明するようにします。”慎重さ”をもつ学生であれば、そうした会社の行動に対して好意をもつことはあっても嫌がられることはまずないと思います。すこし面倒に思えるかもしれませんが、そうした行動を通じてい、学生にとって相性のよい会社であることを伝えることになり、会社への興味を高めることになります。

 大まかな採用プロセスがきまったら、選考プロセスの設計を行います。ここは採用プロセスの中でももっとも重要なところですので、慎重に設計をすることが重要です。設計にあたっては、やはりコンセプト・ノートからスタートすることになります。
 まず、採用すべき人材の定義から、確認すべき事項を箇条書きで書き出し、それそれの重要度を決めていきます。次に選考の方法として実施可能な方法を羅列し、それぞれの重要事項をどの方法で評価できるかを確認します。選考の方法には、例えば、面接、GD、GW、アセスメント・テスト、ビジネス・ゲーム、論文・作文などがありますし、短い劇を演じさせるという方法もあるかもしれません。この段階では実際に実施できるかどうかは置いておいて、どのような方法があるかを可能な限り羅列することが重要です。そのうえで、制約事項(期間、予算、人的リソース)などを考慮して、どのような順番で何を評価していくかを絞っていきます。そうしてある程度のプロセスと評価項目がきまったら、それに応じた評価シートを作成します。評価シートはなくてもかまいませんが、やはり最終的な判断をするときに過去の選考がどのようであったかを知ることは重要ですので、どのような形でも評価シートは作成し記述していただく方がよいと思います。
 アセスメント・テストは多くの会社が新卒採用で利用されていますが、残念ながら有効に利用されているとはいいがたい状況です。実施いているほとんどの会社では、選考の前半(多くは最初)に行っており、面接の参考程度に利用しているのが現状のようです。しかし、どのようなアセスメント・テストであってもそれをしっかり読み込むことで、その人物の傾向は大まかにつかむことができます。ほとんどの場合、提供会社が結果の読み方についてのレクチャーを行っています。できれば選考にかかわるひと全員に、最低でも新卒採用担当者は、必ずそれを受けることが必要だと思います。
 こうした作業によって選考プロセスの全体を設計することによって、最後の選考が終わったときには、コンセプト・ノートで定義した人材が残るような仕組みが出来上がっていきます。
 新卒採用の選考は経験やスキルではなく人的要素の評価ですので、一般的な”良い学生”を評価するような評価軸であることが多いように思います。そしてそれらは、どの会社でも大差ないものが利用されているようです。しかし、具体的な人物象をもつことにより、どのタイミングでだれがどのようにそれを確認するかを定義することができるので、評価軸も構造化することになり、”良い社員になる学生”を見つけることができる可能性がより高くなります。

 また、可能であればこれらの選考プロセスをどのように繋いでいくかも考えたいところです。選考プロセスはそれぞれが点で存在するわけではなく、全体として流れていくことが重要です。うまく流れるためには、それぞれのプロセスを繋ぐ必要があります。あるプロセスから次のプロセスへ移るときにそれまでの情報と次回のプロセスで確認すべきことなどがうまく伝達されることが重要です。そしてそれは学生側にも言えます。例えば、面接が終わった後に学生と5分話す機会を設けて、学生からのフィードバックをもらい、それに対してコメントすると同時に次回以降の選考についての解説をする、といったようなことも考えられます。特にステージが後半になってくると、こうした繋ぐ作業がとても重要になってきます。

皆様のご検討をお祈りいたします。


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