デレツンよりツンデレ

 最近、新卒に関するビジネスをする大手企業の方とお話をさせていただきました。非常に長いお付き合いでして、今回も新卒採用についての動向(学生の動向ではなく採用のあり方)についていろいろな話をさせて頂きました。

元採用部長:新卒採用のプロセスの中で、企業はどんなことに困っているのですか?

企業の方:私達がお付き合いしてる企業は、一定数の応募があるところが多いので、母集団とかには困っていないですね。むしろ、予定より辞退が少なくて困った、といいうようなことを言っていたりします。

元:それってすごく贅沢な悩みですね。そんな企業があるんですか。

企:はい。新卒採用の総数に上限が設けられているようで、それを超えるのもよくないですが、辞退されて数が足らなくなるのはもっと困るようで、多くの学生を囲い込んでしまった結果らしいです。

元:自分もそういう状況で新卒採用やったことあります。私の場合は正直に学生にそのことを伝えていましたけどね。最終面接を合格したときに、「あなたは最終面接に合格しました。内定を得る権利があります。この場で内定受諾の返答していただければそれで確定ですが、決めるためのお時間も必要だと思います。しかし、採用数に上限がありますのでいつまでもお待ちすることはできませんので、2週間はあなたのために枠を確保します。それ以後に返答があった場合には、枠があいていれば内定とさせていただきます。」といいうような説明をしています。

企:いや、そんなに強気にものをいうことのできる企業はないんです。学生に対して、気遣いをするといいうか、なんとか囲いこむことを考えていて。。


確かに最近の就職活動では、売り手市場ということもあってか、学生に媚びているともいえるような振る舞いをする企業・採用担当者が多いように思います。思えばちょっと前は”美人事”みたいなことが流行ったり(?)して、ちょっとおかしな感じになっている気がします。

就職活動の時、食事に招待されたりちやほやされたりして、”自分を大切にしてくれている”と感じる学生の方が多いですが、あなた一人だけにそうした対応をしているわけではない、ということに気づいてほしいです。どの学生にもそうした対応をとる会社は、多くの場合、その会社のネガティブな情報は明示的・積極的に開示しません。結果、いいことばかりの会社に見えてしまいます。

が、裏を返せばそうしなければ興味を持ってもらえない、そうまでしなければいけない事情がある、ということになります。

私は違いますが、”入社させてしまえば、こっちのもの”といいう考え方は、残念ながらいまでも多くの企業にあります。大手企業であってもです。実際皆さんが入社してしまえば、評価も報酬も人事権も会社がもちますので、生殺与奪件をしっかり握られてることになってしまうのです。先輩社員からの話であっても、結局は社員ですから100%本音ではなしているとも限りません。

新卒採用の時にはデレデレしていながら、入社した後は厳しい対応をする、という企業は割と多く、デレデレな対応をされて入社した人には”こんなはずじゃなかった”という思いは非常に大きなものになります。新卒で入社した人が早期に退職するのは、学生のみに責任があるのではなく、こうしたデレデレ採用に大きな問題があると思っています。

私は、良いことも悪いことも誠実に情報提供をして、意思決定に必要以上に関与しない企業をお勧めします。デレデレ採用をしている企業と比較すると冷たい印象がありますが、そうした対応こそが本当にあなたを尊重した誠実さの表れだと思うからです。

採用担当者の方も考えていただきたいと思います。このデレデレ採用は、お金も手も間もかかり、会社の本来の姿を隠してしますことになります。100人に一人のキャリアを、さも全員が歩めるかのような説明をするのは、本当によくないと思います。
「そんなことしたらいい学生がこない」と思われえるかもしれませんが、私達が採用すべきなのは、いい社員になる学生です。デレデレ採用でよい学生を入社させたとしても、入社後にGAPに悩みウツウツとして早期に退職することの原因となるような採用は行うべきではありませんし、経済合理性にも反します。

誰にでも良い会社は存在しませんし、どの企業にも良いという学生も多くはないはずです。

お互いが誠実に対応して、お互いをきちんと見極められるようなそんな就職活動を目指したいところです。

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