連敗を断ち切る完璧な試合<J2第28節ファジアーノ岡山VSアルビレックス新潟>


3連敗を断ち切るべく、新たに選手を補強し天皇杯3回戦で見せたベンチメンバーの意地が主力選手を刺激し、チームがまた1つの同じ方向に向かって走り出した。

試合情報

スタジアム デンカビッグスワンスタジアム
入場者数  1,4583人
主審 榎本一慶
副審 関谷宣貴、植田文平
第4の審判 大矢充

試合結果

新潟0-3岡山

【得点】
32分 仲間隼斗
63分 山本大貴
90分+6分 イ・ヨンジェ


スタメン

 岡山は早速、新加入のFW山本大貴、DF増谷幸祐をスタメンで起用。この2人がチームにどんなものをもたらすか非常に楽しみだった。そして、前節はうまく機能しなかったMF上田康太の右サイドハーフ起用はどう作用するのだろうか。

 川崎から復帰したDF舞行龍ジェームスをCBで起用。彼の正確なロングフィードが、FWレオナルドやMFフランシスの得点力を生かす新しい武器になるだろう。また、急性白血病を乗り越えたMF早川史哉が復帰後初のメンバー入りし、明るい材料となった。


ハイライト


マッチレビュー


マン・オブ・ザ・マッチ 喜山康平

 この試合、ファジアーノ岡山の選手たちはリーグ戦3連敗を忘れさせるような素晴らしいプレーを終始見せ、アルビレックス新潟を圧倒した。その中でも一際宝石のような輝きを放っていたわけではないが、与えられたタスクを黙々と完璧にこなした”暗躍”した選手がいる。それは日本屈指のユーティリティプレイヤー喜山康平だ。守備では持ち前の危機管理察知能力の高さを生かしてスペースを素早く埋め、セカンドボールへいち早く反応し、新潟の攻撃を単発なものにした。
 パスの出し手としての喜山は新潟に効果ばつぐんだった。岡山が低い位置でパスを回すビルドアップ時、新潟はFWレオナルドとMF高木善朗が2トップを形成しDFラインにプレスをかける。そこで喜山はDF田中裕介とDFチェ・ジョンウォンのパス交換をFWレオナルドとMF高木善朗の間に顔を出してサポートしていた。この動きによって岡山は数的有利を作り出すことができ、両SBをいつもより高い位置に押し上げれたことで新潟の両サイドハーフをピン止め。ボールを相手陣内へスムーズに運べるようになった。さらに今までMF上田康太が担っていた中盤の底からパスをサイドに振り分けるという役割を引き継いだ形となった。したがって、より高い位置で起用されているMF上田と高さの異なるパスの出し所を2つ設けることができていた。


得点シーンを言語化してみた

 32分、左サイドの高い位置。仲間が相手を2枚引き付け、椋原へパス。椋原は関戸へ下げると中へ寄ってきた上田康太にそのままパス。始まりとなった仲間へ1タッチスルーパスが通り、完璧なファースとタッチを決めゴールへ蹴り込んだ。この先制点でのポイントは上田康太のポジショニングだ。前述した通り、上田康太のポジションは右サイドハーフ。しかしパスを受けた位置は左サイド寄りのバイタルエリアだった。この試合、上田は守備時は表記通り右サイドハーフだったが攻撃では2トップを指揮する役割も位置もトップ下だった。”偽右サイドハーフ”上田康太の効力が最も発揮されたシーンだった。

 2点目は63分。GK一森純のパントキックをFWイ・ヨンジェが新潟ゴール方向へそらし、そのボールが新潟DF舞行龍とDF大武の間にポジションを取っていたFW山本大貴の前方のスペースに転がり、新潟GK大谷が飛び出すもFW山本の気迫が入ったスライディングシュートがの方が速かった。
 3点目は試合終了間際の90分+6分。またしてもGK一森のキックから、落下地点の憶測を間違えたDF大武が背後を取った途中交代のFW中野誠也をペナルティエリア内で手をかけファールを犯し、PKを獲得。これをFWイ・ヨンジェが冷静に流し込み、J2得点ランクトップの17ゴール目を決めた。この2つのゴールはGK一森のキックによって生まれた。GKがボールを蹴るとき、相手からプレッシャーをかけられることはほとんどない。相手がプレスをかけられないところから正確なロングフィードを蹴ることができるゴールキーパーはチームにとって貴重な存在である。DAZN週間スーパーセーブに高い頻度で選出されているセービング能力とゴールに直結するキックを蹴ることができるゴールキーパーはJ2リーグにおいて稀有な存在だろう。


新加入選手がもたらしたもの

 この試合では松本山雅から加入したFW山本大貴、FC琉球から加入したDF増谷幸祐をスタメンで出場。彼らはシーズン途中で加入した選手だけあって即戦力として自分のプレーを表現できていた。
まずはFW山本について。山本はDFラインの裏を取り続け新潟DFラインを下げさせ偽右サイドハーフの上田康太がバイタルエリアでプレーするスペースを作り出した。また2トップを組んだFWイ・ヨンジェとの互換性は抜群であり、得点シーンのようにヨンジェが競ると裏へ抜け、逆も然り。簡単に言うと、磐田から加入したFW中野誠也に似たタイプのようだった。長期離脱中のFW齋藤和樹の穴を埋める存在として適任だと思った。

 続いてDF増谷。増谷は172㎝と決して背の高い選手ではないが、クレバーな選手であり空中戦で負けるシーンは少なかった。彼の一番の魅力は右足から放たれる一級品のロングフィードだ。岡山はDFラインから、相手SBの背中かつCBの脇に2トップを走らせるロングボールを蹴り、そこを攻撃の起点とすることが多々見られる。そこで増谷のキック精度が活かされるわけである。本職はCBではあるが、新潟戦では高い位置を積極的に取っていた。足元のスキルに自信があるDFは現代サッカーでは重宝され、ファジアーノ岡山でも同様だろう。


次節に向けて

 既存の戦力と新戦力の融合がうまくいき、3点を取り無失点で終えたことはチームにとって連敗トンネルを脱出した試合としてこれ以上ない結果と内容だった。次節はホームに町田ゼルビアを迎え撃つ。前回対戦では先制するも追いつかれ引き分けに終わった。町田はドイツ・ブンデスリーガのライプツィヒのように片方のサイド選手を集め、ボールを奪う戦術を採用している。この試合のように喜山が逆サイドに展開するパスを多く出せると潤滑に攻撃をすることができるだろう。町田が試行する戦術を有馬監督は、ファジアーノ岡山はどのような対策を打つのか。また連勝街道に乗ることができるのか非常に楽しみである。


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