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デザイン調べ_5 : 「ロゴについて考察_2」ポール・ランド氏について

 当noteは様々なプロダクト/サイト/サービス etc の中で見えてくるデザイン仕事を調べ、「デザイン」って何なのか を考察しよう、という内容です。
 
 前回は1907年からの、CIの創設となる AEG と ペーター・ベーレンス氏 の仕事について調べてみました。

 今回は1950年代のアメリカでCIブームを巻き起こしたデザイナー ポール・ランド氏ついて調べてみます。

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 氏の仕事として良く知られているのは、現在でも当時のままに使用されている企業ロゴで、有名なのが IBM や ABCテレビ などです。

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 シンプル・明瞭でありながら、IBMロゴもabcロゴもフォントの形が親しみある印象です。


 氏は1914年にニューヨーク/ブルックリンで「ペレス・ローゼンバウム」として生まれ、幼い頃からデザインに関心をもち、氏の父親が経営する食料品店や学校のイベントの為に看板を描いたりしていたそうですが、

 芸術で生計を立てることに懐疑的だった父が進学させたマンハッタンのハレン・ハイスクールに通いながらも、それと並行し、建築・美術・デザイン等の科のあるプラット・インスティチュートの夜学クラスに通ったそうです。ど根性ですね。


 しかしながらそこで何か得たとは彼自身は思えず、デザインに関しては独学だと考えていたそうで、

 欧州の雑誌に掲載されていたフランスのグラフィックデザイナー/アドルフ・ム−ラン・カッサンドル(1901−1968)の作品や、ユダヤ系ハンガリー人の視覚造形作家/モホリ・ナジ・ラースロー(1895−1946)の作品から学んでいたと語っています。

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 アール・デコやバウハウスの影響を受けていたようです。


 氏の経歴の初期は新聞や雑誌にストック・イメージを提供する会社のパートタイムで、仕事と学校の課題の合間をぬいながら大量のポートフォリオを作成していたようです。野心的で意欲的だったのかもしれません。


 氏が自身の「ペレス・ローゼンバウム」というユダヤ系と分かる名前を隠し「ポール・ランド」という名前に変えようと決意したのもその頃だそうです。


 北アイオワ大学でデザイン史を教えるロイ・R・ベーレンス教授曰く、

 「ランドは新しいペルソナを手に入れた。これはその後の多くの業績のブランド名になったもので、つまり彼が最初につくりだしたコーポレートアイデンティティだったのである。そしてこれは最も長持ちしたものだった」と指摘しています。

 彼自身のセルフ・プロデュースからCIの仕事が始まったと考えると面白いです。


 名を変えてから氏の仕事は急速に注目を集めるようになり、20代の初めにはすでに国際的に認知されるようになったそうです。


 ビジネスにデザインは必須と認知され、デザイナーの地位が向上したのは氏の功績によるところが大きいそうで、

 また、氏はデザインに対する考え方を書籍として残すことにも意欲的でした。

 彼自身の著作ではありませんが、
「ポール・ランド、デザインの授業」 https://www.amazon.co.jp/dp/4861005841/
という講義録では、氏がデザイン学校の講師や生徒に向かって厳しくも優しくデザインとは何かを問い詰めていくやりとりが記録されており、

 皮肉っぽい返しと端的な定義で、憎めないキャラ立ちした人物像が垣間見えます。爺さん萌え。

 ソクラテスの助産術的な話法で対話者からデザインについての考察を引き出していく刺激的な会話から、以下のような定義が引き出されたりします。


・すべてのものがデザインである
・デザインはコンテンツの関係性である
・デザインは形と中身の関係である
・デザインは地と図の関係である
・デザインは形と中身が相まって生まれるものだ


 例えば、氏自身はロゴデザインに関して、それ自体には意味は無いというような、以下の言葉を残しています。

「製品、サービス、ビジネスあるいは企業と関連づけた時に初めて、ロゴが本当の意味を帯びるのだ。企業が二級なら、ロゴも二級品に見られる。それを見る人々が適切に状況を整える前に、ロゴがただちに仕事をすることを期待するのは無謀である」


 何かと何か(例えば企業と社会)の関係性に形を与えるのがデザインであって、デザインとはそれ以上でも以下でもないと考えていたのかもしれません。


 先の講義録の中で氏が講師や生徒に あの本は読んだかこの本は読んだか と読書歴について追求する場面が多々あるのですが、氏がここまで研究熱心なのはリスペクトするモホリ・ナジ・ラースローに会った際に批評書や体系書を読むかと問われ、読んでないと伝えたところ、不勉強なことを失望されたことが要因としてあるそうです。


 講義録の中でポール・ランド氏は講師や学生に、米国の社会心理学者/哲学者/教育学者のジョン・デューイ氏著の「経験としての芸術」という本を勧めており、この本は氏の思想の根幹に影響を与えていると指摘されたりしています。

 この「経験としての芸術」を読み進めてから、またポールランドのデザインに立ち返ってみるのも面白そうなので、次回からしばらく、ジョン・デューイ氏著「経験としての芸術」の章を読み進め内容要約していく回が続く予定です。

 お読みいただきありがとうございました。

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