【小品】おれの会計士観と若者がやるべきこと

今後のテキストのためのネタ帳。

おれは、会計士は企業をサポートする役回りの仕事だと考えている。保証サービスをメインにしていると、表向きは市場の番人的な社会的な使命がまず第一に来るのかも知れないが、やはりあくまでも主役は企業であり、まっとうな会社が沢山市場にあるようになることが、何よりも重要なことなのではないかとおれは考える。そのために、役割を逸脱しない範囲できることがあれば、それは貪欲に学び、自分のメニューに加えられるように取り込んでいく姿勢が必要だろうと思う。

こういう考え方は、保証サービスを外れて、アドバイザリーの領域を手掛けるようになると、当然に重要なポイントになることについては異論がないのではないかと思うが、監査に来るまだマネージャーにもならないような若者と接していると、まだその意識が強く持てていないと感じることが多い。

それは、どういった教育を受けてきたかということも原因のいったんにはあると思うので、最近の若者は、めいた論を語るつもりはさらさらなくて、そういうことを教える人が減ったのかなと、若干心配には感じている。

業界人なら知ってのとおり、監査法人でパートナーにまでなる人間というのは、割合で言うとさほど多いものではなく、乱暴に言ってしまえば、大体のやつは途中で辞めて、何かしら違った役割で、会計とかに関わっていくことになる。これは、ニュービーの段階から、意識しておくべきことだとおれは考えている。おまえは、いつ何時、内部か外部かを問わず、会社側の人間として会計とか会社の管理運営に関わる立場に転じるかわからないのだ。

そう考えた場合に、日々の監査業務の中で、直接本業とは関係のないことについて学ぶ機会はたくさんあるだろう。特に、イケてない会社は、助言し放題なところがあるので、そういったジョッブを持っている奴は、役割にかたくなになることなく、関係無いような領域についても、学んだり、それこそ隙あらば助言をしたりとかしてみるといい。

それには、やはり、会社の人間と話す時間を十分に持ったほうが良いだろう。助言というと、おれさまが教えてやるとイメージするやつは、結構間違っていて、悩み事を共有したり、それについて答えを出すでもなく、自分の考えを述べ、レスポンスを受け、議論を徐々に深めていく、そういった取り組みだ。それをやり続けるためには、おまえは関係ない事には関心を示しませんという態度を決してとってはならない。いつ何時、おまえの立場が変わって、似たような問題がおまえの身に降りかかってこないとも限らないのだ。

監査法人をいずれ辞めたいと考えているのだが、なにを学んでいけばよいのか?めいた質問は、ストリートで会計士をやっていると、定期的に聞かれる質問だ。おれはそれについて、特にない、と回答するのが通例ではあるが、本当に命じられた監査業務を遂行するだけの人生を送っている奴に対しては、少し違った回答を用意するべきなのかもしれないと最近は思い始めている。

もちろん、専門分野がはっきりしないことには、仕事の入り口的なところがあいまいになるので、おまえは会計をドメインに据える・・・多少、そうならないやつもいるが、だいたいはそうするだろう・・・ことはいいとして、周辺の領域について、どの程度の知見を有しているかということは、おまえが一味違うアドバイザーになれるかどうかという部分に大きく影響する。

おまえが、打率の高い飛び込み営業のやり方に精通していても大して会計アドバイザーとしては役には立たない(おまえ自身の役には立つだろう)と思うが、例えば、監査役会の運営のしかただとか、会社のステージにあった会議体の設置方法だとか、会計に関する情報を素早く適切に利用するためには、どういったデータの持ち方が必要か、とか、内部監査がテーマとして考えるべきことはどういったことか、といったことは、わりと役に立つ場面が多いだろうし、労務管理だとか、関連当局への届出とか、登記とか、そういうところの知識も使う場面が多い。

どうしても仕事がら経理の人間と接する機会が多くなってしまうために、もしかしたらあまりよく見えていない場合もあるだろうが、経理部門は単なる記帳屋ではなく、経営管理を行うためにも多くの役割を担っており、真面目に取り組むと、他部署との調整であったりとか、新しいビジネスについての経理処理とか報告、情報伝達のルートをどう設計するかといったことにも関わっている・・・べきだ・・・。そういった仕事のコツについても、おまえが経理マンになったり、内部管理のアドバイザーになったりした場合にはとても役に立つ。

つまり、おれが言いたいことは、監査法人を辞めて、自分の立場が変わったらどうなるか、ということは日ごろから想像しておくべきだし、そういう視点をもってクライアントを眺めると、興味深い、得難い経験というものがそこらにごろごろ転がっているはずだ。それは一朝一夕で、例えば本を読んだりして身につけるようなものではなく、おまえが日々の経験を通じて、自分のこととして学んでいくようなことだとおれは思う。

教科書的なことは誰でもわかるし、シンプルにすると、結局は教科書的なことを言っているに過ぎないというケースは多々あるが、おまえのトークに人を納得させ、行動に移らせるだけの強さや深さ、インパクトがあるか、ということは、おまえが語るストーリーに、おまえ自身の実体験に基づく何かがプラスされているかどうかじゃないかとおれは思っていて、たぶんにその正体は、おまえ自身の感情が奥にあるかないかじゃないだろうかと思う。「感じる」には、テキストというものは、多少不便なところがあるのだ。

ぼくには関係ありません、という態度をとらないことは、おれの中ではPROのアドバイザーとして仕事をする上では、極めて重要なことだし、頼れる経理マンになるうえでも、営業部隊の気持ちがわからないことにはどうにもならないだろう。どこかで線引きは必要となるが、顧客と悩みを共有する感性は必ず必要になるといっても過言ではないので、それを磨くことは日ごろから意識しておくべきだろうと思う。こういうのは、鈍感なおっさんになる前にトレーニングしておいたほうが良いと思うぞ、ということを言ってみたかった。というお話。

なにより、そういう姿勢を出してくるやつは、現時点のスキルには満足していないとしても、クライアントサイドからしても色々教えてあげたいなという気持ちになるし、そういった人間が周りに沢山いると、おまえは自然と成長していくだろう。だからお前も得をするのだ。



誠にありがたいことに、最近サポートを頂けるケースが稀にあります。メリットは特にないのですが、しいて言えばお返事は返すようにしております。