おかあさん、おかあさん。8

「おかるとかると何~」

ついていけないわたしは、とにかく叫べる部分だけ叫ぶ。

母は演劇部の部員たちが体育館でやってるように、口をぱっくりぱっくん動かして、私に教えた。

「オカルト、 と 、カルト・カーゴ・サイエンスーー」

中学生にはとっても大切な、理科の考え方で考えることだから、ノートを取りなさい。と母は言った。

因果関係が証明されていて、条件を整えれば誰にとっても再現可能なものが、人類の共通財産。それがサイエンス。因果関係が不確かで、再現がなされないにも関わらず魔法的な効果を主張するものは、カルト。オカルトはさらに、魔術的であったり、たとえスピリチュアルという口ざわりのいい言葉でラッピング・コーティングされていたとしても、現実からの逃避を含む人間の願望欲望に、都合よく食い込んでいるもの。

「おおおー」

実際には、まったくよくわからない "うーん" って感じの合いの手が本当なのだけど、わたしはこれ以上母の難しバナシが続かないように、全力でごまかした。

カルト・カーゴ・サイエンスまでは、お腹いっぱいで聞けないね。ほんとはカーゴ・カルト・サイエンス、語呂のリズムがいいからひっくり返して覚えてる。と、私の様子を見て、母は残念そうに言った。

とにかくお母さんの言葉には、迫力はあったとしても、クズどもを苦しめる魔術的な力は持ち合わせません。と、勝ち誇ったように母は言った。

「最大値の2割」ぐらいで構わないから、ご機嫌でいたい。いろいろあって、いろいろ重なって、とてもご機嫌でいられない時の「逃げ場」であってほしい。そういう書き物を書けたら幸せです。ありがとう!