見出し画像

⭐️気まぐれ映画評   第六弾

『散歩する侵略者』。
これまた公開時は観る気満々だったが観そびれてしまった作品。

毎度ながら黒沢清監督の巧みな世界観の構築には唸らされる。撮影法、実に効果的な音楽。リアルな衣装。
そしてこれまたいつも思うのだが黒沢監督の映画は映像の教科書のよう。完璧な画角。T.O.Pに合った完璧なカメラワーク。視覚効果。どれを取ってもさすがです。

この映画は劇団イキウメの演劇作品が映画化されたものだ。イキウメは好きな劇団で毎回劇場で楽しませてもらっている。彼らの作品のファンタジックな内容ながらその裏にある人間臭さを丁寧に描いるところが好きだ。
毎回新作が楽しみな劇団の一つ。 

黒沢清とイキウメ。
日常と非日常を表裏一体に描き、人間の底にあるものを時に愛情深く、時にアイロニーを込めて描くという…双方の作風が見事にマッチした組み合わせだと思った。
最後がちょっと演劇的な説明が多かったように思われたが、総じてスマートでシュールなとても心地よい映画だった。
またどろどろとした人間関係や猟奇的な題材をも淡々とクールに描く黒沢映画の作風とイキウメの一見するとクールだが実はとてもエモーショナルな作風がとてもいい具合に混ざり合っていたのも良かった。

そして松田龍平、長澤まさみ、長谷川博己、恒松祐里ら俳優がとても素晴らしかった。

特に長澤まさみ。
素晴らしかった。全部は拝見してはいないがこれまで観た彼女の中で個人的には一番良かった。リアルであり理想的(笑)
苛立ちやら不安やら愛やら…細かな演技とナチュラルさの融合が素敵だった。

龍平は今回も素晴らしい。
見事に異質なキャラクターを成立させている。
蜷川さんが生前よく『演劇的リアリティー』という言葉を使ってらしたが、龍平からはいつも『映画的リアリティー』というものを感じる。
『映画的リアリティー』。
観る者をその世界に引き込む力。
日常の中にあるリアリティーをほんの少しだけディフォルメする。

肝心なこの物語の話だが、一枚皮を剥がすとこれまでの正義は悪で、強いと思ってきたものは実は脆く、どんな武器よりも強いものが心の中にある。常識的に作られた物、教えられたことや聞いたことが嘘かもしれない。
こういう概念に揺さぶりをかけてくる作品は大好きだ。高揚する。

歩道橋、ショッピングモール、廃修理工場そして教会で…素敵なシーンがいっぱいあった。

「愛なんんて誰もイメージ出来ないよ。お願いだからそんなもの奪わないで」っていうセリフがとても良かった。

まさか最後に小泉さんが登場するのを知らなかったのでドキッとした(笑)

イキウメの「天の敵」も映画化してもいいかも、、、なんて思った。

ぜひご覧あそばせ。



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

1

松浦徹

演出・脚本。1965年5月3日生まれ。東京都出身。 映画「ギミー・ヘブン」舞台「七日目にボクはキミと」「恋と革命」TV「小泉今日子50歳ニューヨーク」「情熱大陸」「NONFIX」など。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。