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バーテンダーは知っている

「最初からわかってたのよ。ここにいる間だけだったってことは。ただこの街の小さな世界の中ではアタシだったってことなのよ。ただそれだけのこと。アタシはあの人の一番なんかじゃなかったのよ。この街にいる間だけちょっぴりアタシを欲しかっただけなの」

「どうしてアイツは嘘をついてまでワタシと一緒にいたのかな。ちっとも好きじゃなかったくせに。何されても何言われてもワタシが文句も言わずにいるからさ、ただ居心地が良くて、都合が良くてさ…。アイツにとってワタシはただそれだけの女だったのよ。なのに、『お前がいなくなったら生きていけない』なんて嘘をどうしてつくかなあ〜」

「何でもかんでも『なぜ? なぜ?』って聞くんだよ。面倒臭いんだけど。可愛いんだよな〜。だからちゃんと真摯に答えてやんの! その質問に」 
「まあそのうちにうちの子も俺たちみたいに一言で説明出来ないことをさ、多く抱えて行っちゃうんだろうけどさ…」

「騙されてやることにしたんだ。なぜなら彼女がとても悲しく見えてな。昔っからよく使い古された言葉だけど、やっぱり騙すより騙される方がマシだと思ったよ。フフフ安っぽいこと言ってんな。…いい歳してな」

「最後の一杯頂戴。それ飲んだら帰るから」


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演出・脚本。1965年5月3日生まれ。東京都出身。 映画「ギミー・ヘブン」舞台「七日目にボクはキミと」「恋と革命」TV「小泉今日子50歳ニューヨーク」「情熱大陸」「NONFIX」など。
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