見出し画像

あの子は花弁、わたしは茎。輝きの定義が違うのは当たり前。

「すべての人が輝け」という時代になったと思う。
一億総活躍っていう言葉が話題になったとき、わたしはなんだかすごくなまぬるい気持ちで苦笑いしていた気がします。

輝くのはすばらしいことなんだけど、言葉ばっかりが独り歩きしてしまって、全員が「花弁」になろうとしてしまっているような、そんな感覚がありました。

***

たとえば、今の時代なら「クリエイター」。
すごく評価されやすいと思うんです。何かを作り出す人。出来上がった作品を見て、すごいねって評価されて。輝いている人になれる。

0から1を作り出すのは、本当にすごいと思う。そのすごさは全く変わらないんですけど。でもそれが世に出て輝きを放つ状態になるまでに、いろいろな人の力が必要なんです。

まず、作品を見る人。そして作品のすごさを見出す人。すごさを周りに広める人。マネジメントする人、製品化する人。それを売る場所や仕組みを作る人。その作品を購入する人(重要)。
そういう人たちがいて初めて、クリエイターっていうのは存在できるんです。誰にも認知されず、ひたすら作品を作り続けることはほとんど不可能です。


すべての人が、花弁なわけではない。
でも大体ね、評価されやすいのって花弁なんですね。

花を見て「きれいな花だね」っていうとき、大多数は花弁の形や色、集まり具合なんかを見ていると思うんです。花瓶に入れるとき、葉っぱや茎なんかは真っ先に切られたりして。笑
でも、花弁だけでは生きられない。というか、生まれてこない。花弁だけの花なんていうのは。みんなちゃんと、根があって茎があって葉があって。

すべての人が輝くっていうのは、すべての人が花弁になることではない。それは社会の仕組みとして、無理な話なんです。自分は茎なのに、「花弁のように輝こう」と思って自分に色を付けてみたり形を工夫してみたりするようなものです。
本当に「輝く」ためには、まず、自分が花弁ではなくて茎なんだと自覚することから始まるんだと思います。

自分が茎だって自覚したなら、色や形ではなく、きっと「どれだけ性能のいい維管束を発達させるか」に重きを置くことができる。
まあね、維管束を見てる人なんてそんなにいないんです。一部のマニアくらいです。でもね、それでも、茎の自分が一番輝けるのは、きっと「維管束」なんです。

わたしが発達させた維管束のおかげで、花弁が輝いている。
それって実は、わたしの輝きでもある。
切られた時にしか見えないけど。維管束。笑

全員がね、花弁にはなれないです。
だけどそれぞれに、葉緑体を持ったり維管束を発達させたりすることができる。それが「輝く」ってことであって、花全体の輝きにつながること。
一億総活躍ってきっと、そういうこと。

***

好きなことして生きていく、という記事を3つ前くらいに書きましたが。
好きなことや好きなものに対するアプローチっていうのは、なにも「それを生み出す」だけではないんです。
すでに生み出されているものを世の中に広げていく、というのもそれに対する関わり方だし、それを買う、というのもそれに対する関わり方。その分野のマーケティングをするのも、発達していない部分の仕組みを発達させるのも、必要な材料を仕入れるのも、それが好きな人を集めてイベントを開くのも、全部全部「それに対する関わり方」の一つ。

「生み出す」が注目されがちな世の中で、「生み出す」以外の役割に徹する。
それは、思った以上に誇り高いことだと思うんです。
生み出す人に敬意を払い、そして、それ以外の役割を全うする。

花弁のあの子が輝いているのを、喜べるように。
あの輝きの一部に、自分が貢献できるように。

***

誰もがね、自分以外の場所で役割を担っている人に、敬意を払えるといいなと思います。
だれがえらいとかではなく、みんなえらいの。
もちろん大元の「作品」がなければ生まれない役割だらけかもしれないけれども、「作品」が世に出るには、その他の役割が必要不可欠なわけですから。

美術品なんて、何が描かれているかよりも「どの画廊のオーナーが発掘したか」「どの評論家が見出したか」のほうに価値が寄ったりすることさえありますよね。その「目」に評価のポイントがあったりします。それによって、作品の価値が跳ね上がることもある。

だから、自分に適した役割をぜひ、考えてほしいです。
誰もがクリエイターを目指す必要はないです。できることって、たくさんある。大層なことから、ちっちゃなことまで。
陰ながら押すその一つの「いいね」が、作品の価値を押し上げているかもしれない。好きそうな友達に教えてあげることで、ファンの輪が広がるかもしれない。そうだ、キャッチコピーつけてSNSにポストしてみたらどうかな。その分野で仕事してるバイヤーさん知ってるから、繋げてみようかな。……いろいろ出てきますね。
自分のアクションで作品のキラキラが増えていくイメージ、よくないですか。すごく幸せで、いいイメージだと思うんですけど。笑

***

切られてはじめて、わたしが心を込めて発達させた維管束が見える。しかも、その時ですら、マニアしか見ないかもしれない。
それでもわたしは本望でござる。花が美しく咲いたなら。



最後まで読んで下さって、本当にありがとうございました! 意識低めなので、いただいたサポートは書籍代などにはならず、おいしいケーキや紅茶に消えると思います……(*´ω`*)♡