アートボード_2

細川剛という男

「こいつには一生敵わないな。」

細川剛(博報堂・クリエイティブディレクター)は、僕が同年代ではやばやと負けを認めた唯一の男だ。大学の時だった。彼とは大阪芸術大学デザイン学科ビジュアルデザインコースで学籍番号が前後だったのもあっていつも後ろから彼のすごさを見ていた。


↓細川剛(クリエイティブディレクター)/グランドキリン画像1


僕は大学に入って“遊ぶ”ことを選んだ。大学のことより、外向けの活動をしていた。天王寺Mioでイラスト展をしたり、指輪を作ったり、ロゴデザインをしたり、学校そっちのけで外の楽しそうなことに流れていった。一方、剛くんは課題をコツコツやるタイプ。その時は「剛は超まじめで頑張りやなんだな」と思っていた。「せっかく大学に入ったんだから、課題なんかせず、もっと楽しんだらいいのにつまんないなぁ」と少しだけ批判的にみてたかもしれない。レタリングの授業で、みんな拡大コピーしてトレースしてるのに自分で全部書いていた。剛くんが書いたトレーシングペーパーをみんなで借りて課題をショートカットした。僕もまったく罪悪感なく借りた。


↓大阪芸術大学
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当時はわからなかったけど、剛くんも“遊ぶ”ことを選んでいた。このレタリングの課題が喜びだったんだ。彼のレタリングは以上にキレイだったし、仕上がったものを見た瞬間とんでもなくうらやましかった。「ここまで本気で仕上げたら気持ちよかっただろうなぁ」というのがわかった。僕には全く見えていなかった景色だ。価値観の違いだから、どっちを選択したかので後悔はない。ただ、この男には「クリエイティビティにおいて一生敵わないな」と悟った。

僕が企画やおもしろいことにシフトしていったのは彼の影響が大きい。彼はじっくりコトコト煮込み最高のものを作り上げる。僕はそれが彼ほど突き詰めてできない。印象的なエピソードがある。剛くんはある課題でイラストを手描きでポスターカラーで描いていた。あたかもAdobe illustratorで作ったような絵で驚いた。ただ、提出日には間に合わなくて、ほんの一部分しかかけていなかった。でも、教授が「いい!もう完成が見えたから最高点をつける」と言って絶賛した。そうだろうなと納得する出来栄えだった。

心のどこかで僕は、彼とは違うところを伸ばそうとしたのかもしれない。僕は完全にフットワーク軽くノリでその場を楽しむタイプだ。今の前田デザイン室がまさに僕のスタイルそのもの。今振り返って、これがこの時に明確になっていた。もしかしたら、任天堂という広告デザイン業界から違うところに進んだのもどこか彼の存在があったのかもしれない。

↓大学時代の2人の写真画像3


大学4年の時に僕ら2人が上海大学交流展の作品を出品することになった。担当の教授に提出したら、猛烈な大目玉を食らった。なぜなら、教授になにを出品するかを相談なく勝手に作品を選び、提出をしたからだ。しかも、僕は北海道旅行で遊んでいた。帰ってきてすぐ教授に談話をして電話越しに怒鳴られた。「君は最低の学生だ!」って。作品のこともケチョンケチョンに言われた。僕は徹夜で新しい作品を作って教授の自宅に見せに行った。(その後この教授にめっちゃ気に入られた。)剛くんは、怒られた時に言葉で説得して切り抜けたらしい。しかし、彼は饒舌ではない。作っているものがすばらしいのはもちろん、誰よりも深く考えて作っているから、誰も彼に追いつけないのである。

卒業してからも、彼は博報堂で僕は任天堂で広告に携わった。出張で東京に行った時に彼の家に泊まってたくさん話した。「プロの条件とは?」「デザインのアートの違いは?」など。要は、僕の壁打ちあいてになってもらっていた。剛くんにこの間このことを話したら「そうなんだ?なに話したかあんまり覚えてない」って言ってるけど、僕にとっては大事な時間だった。クリエイターとしてもっといいものを作れるようになりたかった。彼のように。それは今でも変わらない。

(追記)2020年6月27日
※下記のイベントは終了しました。前田デザイン室で記事にしてくれたので掲載しておきます。よかったらどうぞ!駆け出しのデザイナーさんは特に勉強になると思いますよ。



【プレミアム対談】このやりとりの続き?を、代官山 蔦屋書店で対談します!細川剛くんの話を聞きに来て。マジで。細川くんあんまり出ないから。ここに細川くんをひっぱりだした前田さんありがとう!ってなるよ!

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7月3日(水)ノー残業デー!の人は来てください。いいもの作って人を魅了したい人にプラスになる話になります。

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追伸:
お会いできるのを楽しみにしております。名刺交換しましょう!


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