舞田敏彦

教育社会学者

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最近の記事

あなたの年収は何位か?(性別・年齢層別・従業地位別)

 前回は,有業者全体の中での年収順位診断表を出しました。男性と女性に分けたシートも載せました。  しかしこれは大雑把に過ぎ,自分の年齢層の中ではどうか,正社員の中ではどうか,という関心もあるかと思います。それに応える,細かい診断ツールを作りましたので,エクセルファイルをアップいたします。総務省『就業構造基本調査』(2022年)に出ている,有業者の年収分布表より作成しました。  男性総数,男性正規職員,女性総数,女性正規職員,という4つのシートを設け,それぞれの中にて,5歳

    • あなたの年収は何位か?

       タイトルの問いへの答えが分かるツールを,エクセルで作ってみました。2022年の『就業構造基本調査』に出ている,有業者の年収分布表から作成したものです。  開くと,以下のような画面が表れます。  2022年10月時点において,年収が分かる国内の有業者は6489万人。この人たちの年収分布を,下から積み上げた累積%値にします。これを見れば,ある人の年収が全体の中の何位くらいかが分かります。  650万円の人は,累積%が83.0と88.3の間ですので,ひっくり返して17.0位

      • 30~40代の大学・大学院卒業者率(区市町村別)

         海外では,住民の階層的「棲み分け」が明瞭であるといいます。ここは豪邸がひしめくブルジョワ地区であっても,道を一本隔てればスラムが広がる…。中学校の地理の資料集に,南アフリカの例が出ていたような気がします。  日本でも,住民の階層構成の地域分化(segregation)はみられます。階層の指標としては収入がよく使われますが,住民の学歴で可視化してみましょうか。基幹統計の『国勢調査』は5年間隔で実施されますが,10年に1回の大調査(西暦の末尾が0の年)では学歴も調査されます。

        • 未婚者の「女性/男性」比(区市町村別)

           区市町村別の「女性/男性」人口比を出した,週刊誌にしては力作の記事をネットで見つけました。しかし下品な釣りタイトルをつけているので,シェアは止めました。勿体ないなと思います。  ただ,この手のデータに興味を持つ人も多いかと思い,私は『国勢調査』(2015年)に当たって,データを自前で作ってみました。結婚期にある,25~34歳の未婚者の「女性/男性」比です。  全国値をみると,25~34歳の未婚男性は387万人,未婚女性は306万人で,男性のほうがだいぶ多くなっています。

        あなたの年収は何位か?(性別・年齢層別・従業地位別)

          一人親世帯の低学年児の率(市区町村別)

           一斉休校により共働き世帯が悲鳴を上げていますが,一人親世帯にとっては,まさに死活問題です。  幼子を家に残して仕事に行くのは不安ですし,仕事を休んだら収入が断たれます。一人親世帯の大半は母子世帯ですが,収入が低い(時給制の)非正規職で,貯金もほとんどないという家庭が多いでしょう。  そんな「崖っぷち」の世帯はどれほどあるのか。2015年の『国勢調査』によると,一人親世帯で暮らす5~9歳人口は43万2029人となっています。5~9歳人口全体の8.17%です。低学年の子の1

          一人親世帯の低学年児の率(市区町村別)

          30~44歳有配偶女性の就業率(市区町村別)

           今月から一斉休校が始まっています。共働き世帯のことを考えてない愚策と言われていますが,その通りだと思います。低学年の子がいる労働力(主に母親)を自宅に縛り付け,社会の至る所での機能不全を引き起こしています。  栃木県茂木町は,一斉休校を取りやめる英断を下しました。町長さんはその理由を「共働き世帯の率が高いから」と説明しています。データを見たのでしょうね。  2015年の『国勢調査』から,低学年の子がいる年代である,30~44歳有配偶女性の就業率を出せます。栃木県茂木町の

          30~44歳有配偶女性の就業率(市区町村別)

          都道府県別の正規職員の所得中央値(2017年)

           総務省『就業構造基本調査』(2017年)をもとに,都道府県別の正規職員の所得中央値を計算しました。自分の県では,フツーの正社員の稼ぎがどれほどかが分かります。データをエクセルファイルで提供いたします。  所得とは,税引き前の年間所得です。「賃金,給料,手間賃,諸手当,ボーナスなど過去1年間に得た税込みの給与総額」とあります(用語解説)。  性別・年齢層別に中央値を出しています。私の属性(神奈川県,男性,40~44歳)を例に,計算の方法を説明します。  元資料には,所得

          都道府県別の正規職員の所得中央値(2017年)

          生徒・学生のアルバイト

          1.アルバイト実施率の推移 大学生の生活は,①授業(勉強),②サークル,③アルバイトという3つの領分に分けられるのが一般的です。それぞれの比重は時代によって異なり,同世代の数%しか大学に行かなかった頃は①がメインでしたが,大学が大衆化してくると②や③の比重が高まってきます。  大学進学率が50%を超えた「ユニバーサル」段階の現在では,③のウェイトが最も高い学生も少なくありません。普通の家庭,貧しい家庭の子も入ってきていますが,日本の大学の学費はバカ高で奨学金も貧弱ですので,

          生徒・学生のアルバイト

          職業別の女性比・若年比(2015年)

           総務省『国勢調査』(2015年)の職業小分類統計をもとに,232職業の従事者の女性比と若年比を計算しました。後者は,40歳未満の割合です。エクセルファイルでデータを提供いたします。  女性比のシートは,こんな感じです。  管理的公務員の女性比は10.3%,低いですねえ。はて,他の職業はどうでしょうか。若者が多い職業というのも興味深い。高い順に並べたランキング表も載せています。  「元データ」のシートに,計算に使った元データ(各職業の性別・年齢層別の従事者数)を出してい

          職業別の女性比・若年比(2015年)

          市区町村別の世帯年収(2018年)

           総務省『住宅土地統計』(2018年)をもとに,全国の市区町村別の世帯年収中央値を計算しました。エクセルファイルのデータを提供いたします。  計算したのは,上記資料に世帯年収分布が出ている1241市区町村のデータです。世帯とは,普通世帯の主世帯をいいます。施設等の世帯や同居世帯を除く,普通の世帯のことです(用語解説)。世帯年収とは,世帯員の年収合算(税引き前)を指します。  資料の元データからどうやって出したのかを,私が住んでいる横須賀市を例に説明します。  元資料には

          市区町村別の世帯年収(2018年)

          大学受験の変化

          1.数字で見る大学受験史 「四当五落」という言葉があります。4時間の睡眠時間なら試験に受かるが5時間も寝たら落ちる,という意味です。この言葉を座右の銘にして,受験勉強に励んだという人も多いでしょう。  今の受験生は,こういう言葉は知らないかもしれませんね。少子化により受験競争は緩和されてきていますので。私は1995年の春に大学受験をしましたが,結構大変だった記憶があります。世代を遡ると競争はより熾烈で,悲惨な事件も起きています。  1980(昭和55)年の11月に,20歳

          大学受験の変化

          犯罪の認知度

          1.犯罪者出現率の国際比較 日本は治安のいい国か? 誰もが「イエス」と答えるでしょう。来年に東京オリンピックが開催されますが,治安のよさも招致にプラスに作用したそうです。「落とした財布が,お金を抜き取られることなく戻ってくる。こんな国は,世界中で日本だけだ」。こうアピールしたそうな。  治安の指標といったら,犯罪者の出現率です。法に触れることをしでかして御用となった人が,国民あたり何人いるか。やや古いですが,UNODC(国連薬物犯罪事務所)の2013年の統計によると,日本の

          犯罪の認知度

          OD・非常勤講師問題

          1.大学院博士課程修了者の進路 大学の上には,大学院があります。法規上の目的は「学術の理論及び応用を教授研究し,その深奥をきわめ,又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い,文化の進展に寄与すること」です(学校教育法99条)。  厳めしい雰囲気を醸し出していますが,大学院に入る人は,以前に比して増えてきています。大学院は修士課程と博士課程に分かれますが,後者の入学者をみると,平成初頭の1989年では7478人でしたが,2018年では1万490

          OD・非常勤講師問題