8/7 覚えられないのは人の名前だけじゃなく

 人の名前を覚えられないのは自覚があったのだけれども、どうやら、覚えられないのは人の名前だけじゃなく、名前全般だったようだ。曲のタイトル、本のタイトル。思い出そうとしても全然出てこない。どれひとつとしてまともに出てこなくて、あまりの精度の悪さに我ながらびっくりするし、呆れる。

 『蜜蜂と遠雷』を読みながら、曲のタイトルを見て、文字の並びは絶対見覚えがあるのに、どんな曲だったか思い出せない。ピアノを長年習ってきて、バッハの平均律クラヴィーア第1巻第1番なんて、そんなしょっぱなの曲、多分覚えがあるはずだと思うのに、どんな曲だったかさっぱり思い出せない(というか、そのときはバッハのインベンションの最初の曲を思い浮かべて読んでいた。あとから違うことに気がついた)。ハ長調という手掛かりから音階を思い浮かべるも、記憶の泉からは曲のさわりも湧いてこない。あきらめて、YouTubeで検索して聴いてみて、「あー! これね! あの曲の伴奏になってる曲だ!」となって、そして今度は、その『あの曲』のタイトルが思い出せない。YouTubeを伴奏に鼻歌でメロディを歌うも、曲名がどれだけ思い出そうとしても出てこない。これまたあきらめて『平均律第1巻第1 伴奏』で検索した。すぐに答えがでた。『アヴェ・マリア』。そうだ、アヴェ・マリアだ! 鼻歌じゃなくて、きちんと口で歌詞まで歌えば一発だったじゃないか。少し前の自分が歌詞まで思い出せていたかどうかはさておき。一事が万事、そんなかんじだ。

 どうも、その『もの』と、その『名前』を、きちんと結びつけて覚えようとしていない気がする。ものにラベルを貼らない。ラベルのついていないものを、脳のどこか適当なひきだしに、特に整理もせずに放り込んでいるのかもしれない。そして、取り出したくてもどこに入っているのやら、そもそもそのものの名前もわからず、二度と取り出せなくなっている、のでは。

 今からこんな調子では、年をとって記憶力が低下していったら、どんな惨状になってしまうのか、今からおそろしい。それとも、逆に今がこんなだからこそ、これ以上下がりようがなく、年をとってもずっと今くらいの「ほらアレ、あのあれ!」具合でいけるだろうか。

 ステータス値の割り振りをミスってるのか、もともとのステータスが低いのか。前者だったら、記憶力に振るはずだった値は、どこに振っているのやら。やれやれ。


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