5/16 「趣味は読書です」

 以前は、「休日、何して過ごしてるの?」と聞かれるのが苦手だった。ゆっくり寝るのは好きだけれど、「寝てたら一日終わります~あははは」では会話がそれ以上ふくらまないし、もうちょっと余暇を楽しんでいる感を出したい、という見栄っ張りなところもある。趣味で余暇も充実しています、みたいな返しをして、そこから話も広げて盛り上がりたいと思っていた。でも、堂々と人に言えるような趣味もなく。なので、これ系の会話が始まったら、自分のことは適当に濁して、相手の話を聞く側に徹していた。もっとも、相手もわたしと同じタイプの『趣味と呼べるような趣味もない』タイプだと、「なんだかな~……」「なんか楽しいことないかね~……」とふたりして遠い目をして話題をかえることになるのだけれど。その点、好きなことについて熱く語ってくれる人はいいやね。楽しそうに話してくれるので、聞いてるこっちまでうれしくなる。

 そんな、昔の話がありつつ。最近、ネットで『趣味を見つけよう』的な記事を読んでいたときのこと。『こんな趣味はいかがでしょうか』と提案してくれている一覧のリストを眺めていて、気がついた。「趣味、あった!」と。

 読書。

 ずっと、本を読むことは好きだったのだ。それこそ、物心をついたころから。大学時代くらいまでは、自己紹介をすることがあれば「趣味は読書です」と堂々と言ってきた。それが、うつ病になって本が読めなくなって以降、趣味の欄は空白になった。うつから回復してきて本が読めるようになってきてからは、書店や図書館で働き始めたこともあり、本を読むことは好きだけれども仕事の一環でもあって、周りは本を読むなんて生活の一部、という人が大多数になり、そんな中で、いわゆる名作やらベストセラーやら古典やらに精通しているわけでもないわたしが「趣味は読書」なんて言うのはおこがましいと思っていた。

 でも、本に関する仕事から離れてそろそろ1年が経って。書店で買ってきたこれから読みたい本や雑誌がソファの肘置きに平積みで嵩高に積んであって、本棚もぱんぱん、図書館にも2週間に1回は通って、図書館の予約もほぼ枠いっぱい。毎日欠かさず本を開くわたしが、「趣味は読書です」と言っても、そろそろ誰に非難されることもないでしょう、と。もう、いいでしょう?

 誰の目を気にしていたんだ・誰に遠慮していたんだ、とも思うけれども。やっと自分の中のこじらせをほどいて、素直に堂々と「趣味は読書です」と言える自分を取り戻しました、というお話。

 人の目を気にしすぎない。『自分を裏切らないで生きていく』byジェーン・スーさんのお言葉を胸に。『わたしがオバさんになったよ』、おもしろかった。かっこいい先輩たちが前を歩いているのはしあわせだ。


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