ロボ・アドバイザーが日本で普及しないと思う3つの理由(前編)

今年の4月下旬に、三井住友アセットマネジメント社が全国の20代〜60代の計1,200名を対象にした「老後生活資金と退職金」に関する意識調査結果を発表しました。

その調査結果によると、50代までの現役世代で約8割が「老後生活に不安を感じる」と回答し、老後の生活について最も不安を感じるものの約8割が「金銭面について」とのことです。

一方、その不安に対して自分でできる対策として約3割超が「対策は分からない」という結果が出ていることから、資産運用という選択がまだまだ定着していないと言えます。

最近、資産運用を助言(投資における顧客プロファイルや運用商品のアセットアロケーションと自動リバランスを行う)する『ロボアドバイザー』というサービスが一部の銀行や証券会社、フィンテック企業から出ています。ターゲット顧客は、投資や資産運用に目覚めていない(金融リテラシーの低い)潜在顧客層である無関心層でしょう。

米国では投資助言サービスである『ロボ・アドバイザー』の利用が増加*1しています。

その背景には、米国労働省が公表した投資商品販売に係る『フィデューシャリー・デューティー』の適用が関係しているようです。

この読み難い『フィデューシャリー・デューティー』とは「受託者責任による投資家保護=顧客利益を第一に考え、善管注意義務をもって行動する」です。

従来の大口だけではなく小口投資家層を含む投資家全般にリスク許容度の考慮や商品提案の適正性、継続的なレビューや助言を提供するという概念であり、商品の開発、販売、資産管理の局面で金融機関が担うべき役割と責任を果たしていくことが課せられています。

日本でも三井住友アセットマネジメント社を歯切りに、ニッセイアセットマネジメント社やその他大手の運用会社が宣言の準備をしています。 

米国では更に政府が踏み込み、この4月には長く金融機関の反発もありながらも401kやIRA*2の退職金制度も対象にフィデューシャリー・デューティー適用の規則が発効されました。

反対していた金融機関がこの規則に軟化し受け入れる姿勢を示した背景に『ロボ・アドバイザー』の存在があります。

この点が前提として日本と米国で大きく異なる点です。つまり、法規制という制約により必然的にロボ・アドバイザーの普及につながっているのが米国の現状のようです。

一方、日本国内で登場しているロボ・アドバイザーは貯蓄から投資への橋渡(解決手段)としての側面が強い印象です。

後編では、日本ではロボ・アドバイザーの普及が難しいと思う3つの理由を載せます。


【NOTE】

*1 ロボ・アドバイザーは2015年末時点で運用残高は約600億ドル(約6兆円)。A.T.Kearney社は2020年には残高が約2.2兆ドルに達するとの見通し。

*2 個人退職勘定のことでアメリカの年金プラン。401(k)は雇用主によって提供されるプログラムであるのに対し、IRAは雇用主とは関係なく、銀行口座のように個人が自分で開くもの。日本の個人型DCに近い制度で、拠出時に非課税のものと受給時に非課税のものなどバリエーションがある。

*3 金融庁も資産運用業の課題性を注視しており規制等が検討されているとも言われている。


【参考文献】

『国内金融市場の改革で注目される論点』2015年6月24日 東洋経済ONLINE

・『金融庁が語る資産運用の高度化とフィデューシャリー・デューティー 前編後編』The finance 2016年3月23日、3月30日

・『大和証券、ロボ助言のラップ口座 手数料下げ若年層開拓』日本経済新聞 2016年5月18日朝刊

・『米国のロボ・アドバイザーによるヒトとの競争と共生』NRI 金融ITフォーカス(2015年3月号)

『米国のフィデューシャリー・デューティー論議とロボ・アドバイザー』NRI 金融ITフォーカス(2016年3月号)

『米国IRA− 適合性原則からフィデューシャリー・デューティーへ』アライアンス・バーンスタイン株式会社

『老後生活資金と退職金調査レポート』三井住友アセットマネジメント 2016年4月27日

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