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2019観劇記録(7)『Die Möglichkeit einer Insel』

10月9日

Die Möglichkeit einer Insel  ある島の可能性

劇場 Berliner Ensemble (Großes Haus)

原作 MICHEL HOUELLEBECQ ミシェル・ウェルベック

演出/舞台美術 Robert Borgmann

衣装 Bettina Werner

音楽 Rashad Becker

照明/映像 Carsten Rüger

ドラマトゥルギー Amely Joana Haag


フランスの小説家ミシェル・ウェルベックのSF小説『DIe Möglichkeit einer Insel』(邦訳「ある島の可能性」2007, 河出書房, 中村佳子訳)を舞台化したもの。Robert Borgmanは殆どの演出で舞台美術をデザインしている。舞台ツラ上方に「L'éternité(永遠)」のネオンサイン、アクティングエリアの前方後方にスクリーンがあり、上演中ほぼ常にゆっくりと上下に動いており、時間経過や場面転換を表す。舞台中央には巨大な花が吊られ、こちらもくるくる回りながら上下に動く。花に詳しくはないがキキョウの仲間に見える。花言葉は「永遠の愛」「従順」「誠実」「友の帰りを願う」だ。

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5千年紀の地球。世界は戦争、核爆発、地球軸のズレにより気候的、地質学的に変化。海は僅かな水たまりを残し、消えていた。そして今、世界には二種類の人間が存在している。無気力に暮らす二十一世紀の廃人たち、そして自給自足のハイテク・ステーションに暮らす新人類だ。新人類はある新興宗教の遺伝子実験によって生まれ、エネルギーを光合成で賄っている。愛や憎しみという感情は薄れ、コミュニケーションはヴァーチャルなものとなり、身体的接触はなくなっている。新人類が死ぬとセントラル・シティで保存されている遺伝子コードに基き、その都度18歳の複製が作られる。こうして死は平準化したのだった。深い悲しみに陥っているコメディアン――すでに24回目のクローン――ダニエルは、失われた世界を振り返るのだった。(BEのHPより拙試訳)


原作が一人称独白体のため、舞台も多くの場面がモノローグに費やされる。二幕冒頭の(体感時間のため実際はもう少し短いかもしれないが)30分ほど続く Wolfgang Michael の語りは、初日ということもあるか少々危なっかしく、詰まったり笑い出したりしていた。しかし、ベテランの茶目っ気とユーモアでカバーし、拍手も起こった。

全体的に演出家の美意識が貫かれ、よくコントロールされた芝居だが、2時間40分は長く感じた。それでも幕間で抜けた観客は思ったよりも少なく、疲れながらも「考える」ことを楽しんだようだ。


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