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2019ベルリン観劇記録(6)『Mütter und Söhne』

10月8日

Mütter und Söhne  母と息子

劇場  Berliner Ensemble (Neues Haus) ベルリナー・アンサンブル

作演  Karen Breece

舞台美術 Eva Veronica Born

衣装 Teresa Vergho

音楽 Christoph Cico Beck

照明 Steffen Heinke

Künstlerische Beratung Clara Topic-Matutin

Karen Breece 作演は昨年見た住所不定者へのインタビューをもとに構成された『Auf Der Straße(路上にて)』以来二本目。他の作品では主役級の、つまり場の支配力に長けた俳優5名が、主に右傾化する若者とその母親の関わりを演じていく。


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なぜ、若者たちは右傾化しているのだろう? ドイツのみならず世界中で、新旧の右派が少数派や外国人への憎悪を煽り立て、暴力や中毒性の高い好戦的な男らしさを説いている。この若者たちとは何者で、何を求めているのか? 特定の家庭環境が彼らの過激化を促しているのか? その際、母親や父親はどのような役割を演じているのか? 母親は子どもの過激化にどう対応しているのか? 
Karen Breece らしい徹底的な取材により、新旧の右派、ネオナチの脱退者、参入者、彼らの家族、脱退プログラムに関与している人々のみならず、右派の暴力の犠牲になった家族らをも描き出す。
上演テキストは専門家へのインタビューと対話を元に出演者と作り上げた。2019年秋――ドイツへ向けた、個人に迫る濃密な政治声明である。(BEのHPより。拙試訳)


シャウビューネとエルンスト・ブッシュ演劇大学の共同公演『ゼチュアンの善人』でシェン・テ/シュイ・タを演じていたLaura Balzer が、スマホを操りyoutuberをイメージしたキャラクターに扮する。変わらずよく響くきれいな声だ。暗い中でもよく映るように「女優ライト」のようなものをスマホにつけている、何かコードが出ている、などスマートなフォーンではなく残念。

母親の一人を演じた Bettina Hoppe が今回も素晴らしいキレ芸を見せ、拍手が巻き起こった。演技上の怒りの頂点へ達するまでのブレーキとアクセルの踏みわけが細かく巧みだ。非常に難易度の高いドリフトをこなした上で、最後のストレートを思いっきり突き抜ける。

舞台美術は五重の円形に組まれた130脚ほどの椅子。途中バラバラに倒されるが、最後の語りかけシーンのために、客席からも手伝いを募り、すべて客席側に向けて並び替えられた。場転で鳴るジングルが少々格好悪い。全体的に正攻法ゆえ目新しい要素はないものの、芸術鑑賞会らしき高校生たちは最後まで真剣に観ており、意義を感じる上演であった。

ドイツで観られるお芝居の本数が増えたり、資料を購入し易くなったり、作業をしに行くカフェでコーヒーをお代わりできたりします!