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2024ウィーン観劇記録(2)Animal Farm

2月28日、ウィーン2本目はウィーン・シュターツオーパーで新作オペラの『Animal Farm』。ジョージ・オーウェルの同名小説が原作。

指揮 Alexander Soddy
演出 Damiano Michieletto
舞台美術 Paolo Fantin
衣装 Klaus Bruns
振付 Thomas Wilhelm
照明 Alessandro Carletti
ドラマトゥルギー Wout van Tongeren, Luc Joosten
出演 Gennady Bezzubenkov, Wolfgang Bankl, Michael Gniffke, Andrei Popov, Stefan Astakhov, Karl Laquit, Artem Krutko, Margaret Plummer, Isabel Signoret, Elena Vassilieva, Holly Flack, Daniel Jenz, Aurora Marthens, Clemens Unterreiner, Yechan Bahk, Michael Mensah, Siegmar Aigner, Benedikt Berndonner, Orchester der Wiener Staatsoper, Projekt Animal Farm & Chorakademie der Wiener Staatsoper, Jugendchor der Opernschule der Wiener Staatsoper, Komparserie der Wiener Staatsoper



 150年以上の歴史がある威厳に満ちた豪奢な劇場。中の吹き抜けで記念撮影をする若い観光客が多い。服装に関してベルリンに比べると「厳格である」というブログ記事をいくつか読んだが、そうでもなかった。自分の買ったチケットに見合う格好をすれば良い。1階席もロングドレスやタキシードばかりではなく、(生地に高級感はあるが)チノにジャケット、セーターなどを着ている観客も半分以上はいた。わたしは29€のチケットなので、ウールの黒ワンピースにマーチンのスパンコールシューズ。周囲もお洒落はしているが、「厳格」ではなかった。
16€の6階立ち見席から232€の席まで95%ほどが埋まっていた。わたしは5階Balkonの上手サイド席。見切れはベルリン・シュータツオーパーより多少マシで、乗り出せばなんとか上手奥まで確認できる。安い席ゆえ後列立ち見客の観劇マナーに難はあったが、値段なりなので仕方がない。

字幕モニターは斜めに起こすことが可能
パンフレットや楽譜を確認するための手元灯もあり


 いわゆるストラヴィンスキー系の現代音楽のため、特に一幕は音楽的に楽しむことが難しかった。オーケストラ編成にエレキベースや動物の鳴き声のような音が出る見たことのない楽器(?)もある。演奏者たちが頻繁に舞台の方へ顔を向けていた。生肉のミンチ製造機や新聞印刷機を舞台上で稼働させるなど、大道具の入れ替わりは面白い。現代の屠殺場を想起させる清潔で真っ白な空間。ネオンサイン。壁にグラフィティ。
 インターバルで臨席の高齢ご婦人に話しかけられ、演劇やオペラの話ができて楽しかった。本作については「音楽で筋を表現していないのが残念。声楽家たちは素晴らしい声で歌っている」というご意見。また、わたしが翻訳するべき新作演劇を探すためベルリンに滞在中だ、と話したら、「今のウィーンの演劇はあまりうまくいっていないと思う。トーマス・ベルンハルトが生きていたクラウス・パイマン時代のヘルデンプラッツ(ブルクテアター)はとても良かった」と。チケットがまだあれば、来月末のベルリン・シュターツオーパー『ニーベルングの指環』通し上演に来るそうだ。また劇場で会えるかもしれない。女性一人客同士、束の間の邂逅。ロンドンでも似たような経験をしたことがある。劇場かくあるべし。

ドイツで観られるお芝居の本数が増えたり、資料を購入し易くなったり、作業をしに行くカフェでコーヒーをお代わりできたりします!