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夢だけど、夢じゃなかった。【幕張メッセにI Prevailを撮影しに行った話】

11月3日、幕張メッセで開催されたNEX FEST。
BRING ME THE HORIZONがキュレートしたという事で、彼らがチョイスしたんだろうなというのがわかる多種多様な実力者揃いの素晴らしいラインナップ。

ここにアメリカのデトロイト出身のI Prevailが主催決定し初来日。
そう、私が待ちに待っていたバンドの初来日。
BRING ME THE HORIZONが彼らを連れてきてくれた…!!

I Prevailは私が初めて海外のフェスティバルにPRESSとして入った、2017年のVans Warped Tourに出演していたバンドでした。
その頃はScarsのMVが出たばかり。他バンドの撮影が押して撮影可能な曲数には間に合わなかったものの、そのショーのクオリティに圧倒され目が離せなくなっていました。
彼らはスクリームを担当するEricとクリーン担当のBrianのツインボーカルのバンド。
全てが上手かった、演奏もパフォーマンスも、煽りを入れるタイミングもコーラスも。
ただ特筆すべきはこのBrianの少しハスキーなクリーン。刺さりまくった。Scarsが泣くほど良かった。

ただ、あまりの巧さにビビりすぎて、マーチブースにすら立ち寄れなかった。遠い遠い、触れちゃいけない存在に思えるほど、彼らのショーは凄かった。
それから何年もの間、今度こそ彼らのショーを撮りたいと思っていんです。海外での爆発的な人気と比べ、まだまだ日本での知名度は低い彼ら。
来日公演でバンドを招聘する側になった時には、最終目標はI Prevailの初来日だと密かに思っていたほど。

今回私は、ここが祝日を含む3連休だという事と9月にアメリカで開催されたBlue Ridge Rock Festivalに行く事が決まっていた為、仕事の都合も加味して泣く泣く断念。
I PrevailはBlue Rideへの出演が決定していたため、そこでショーを観て来日を楽しみにしている人への後押しになれば……と思っていたんです。

しかしここでまさかの出来事。
Blue Ridge Rock Festivalが記録的な悪天候により後半二日を残して全キャンセル。I Prevailの出演は4日間の開催期間中の3日目。
あまりの悔しさに泣きそうになりました。でも泣く暇があるなら、ハリケーンが通り過ぎた後に雪の予報が出ていた山から降りて、街までの数10キロの帰りをどう確保するか考える方が優先だった。もはや避難……。

来日公演も諦めているうちにソールドアウトしてる。
こんなにこんなに、彼らの来日を夢見ていたのに私はいけないんだ……そう考えるだけで涙が出そうになるほど悔しかった。

ただ偶然、繁忙期直前にも関わらず3日と4日がシフト上で希望すら出してなかったのに連休になっていたんです。
いや……でも。今私は来年のツアーの為に連日仕事の後に色々な準備をしていて、ビザの取得についても昨今は時間との勝負との情報が出ていたので凄く慎重に準備を進めている時期でした。
急遽キャンセルしたバンドの代打を打診したり、それでも決まらなかった時の為の代替案を話し合ったり。

私自身の楽しみの為に、皆の笑顔が欠けるかもしれないというリスクを作っていいのか。
東京まで行く移動費も、ツアー経費に充てるべきではないのか。

ぐるぐる考えて、無理だ諦めようと決めたんです。

仕事中も悲しかった。
ちょうど仕事が辛い時期で、その中でも笑顔で頑張ってはいたんだけど。I Prevailが日本に来たのに、その場に行けない事が悔しくてたまらなかった。

そして11月2日。
ツアーの事をまとめる為、2連休で休めばいいと連日朝の4時まで話し合いや書類作り。
ヘトヘトになった退勤後に、I Prevailの感想でも見ようかなとTwitterを開いたんです。

『I Prevailがカメラマンを募集している』

もうその該当ストーリーがアップされてから1時間は経過していた。
けれどわざわざ私をメンションして、「撮りに行ってほしい」とコメントをくれた方が何人かいらっしゃったんです。そのおかげで気づけました。

いや、でも行かないって宣言したじゃないか……でも。

そこからすぐダメ元でバンドへメッセージを送りました。もちろん既読は付かないし、返事なんてない。
インスタにもTwitterにも写真撮りたい気持ちをポストした。
すると、そこからたくさんの人達が「行ってほしい!」「写真撮ってほしい!」と応援のツイートをしてくださったんです。
この時点で募集のポストからは3-4時間が経過。

家族には「奇跡が起きたら朝イチの新幹線か飛行機で行かせてください」と話し、「あんま期待しんしゃんな、でも億が一にそんな奇跡が起きたら行ってきなさい」との言葉をもらう。
私が何の予定も入れていない2連休が半年ぶりだった為、お姉ちゃんと過ごす!と喜んでいた妹達にも頭を下げた。

だいたいこういう話が上がった際って、ネイティヴで都内に滞在していたカメラマンや、共演バンドのカメラマンが「いいよ、撮ってあげるよ」と手を挙げて内々で決まっちゃうもんなんですよ。

でも……せっかく自分の生まれ育った国に来てくれたし、メッセージまで送ったんだ。一人くらい日本人が撮っても良いじゃないか。
これまで海外での多くのPRESS経験がある私、これはポストしたものの、バンドの来日中のスケジュールで捌けるものではないのでは?
そう判断して、本国のメインマネージャーに即コンタクト。

該当のポストは削除され、朝の4時までに何かがあれば東京行きの飛行機で間に合うから……と祈りながら書類作りつつ起きてました。
ダメだって言葉は、ダメになるまで口にしたくなかった。私が信じなきゃ絶対奇跡なんか起きないと思っていたから。

ここで母から「ごめんけどどうするか後30分で決めて」との言葉。そりゃそうだ、家族の面倒を見るスケジュールだって変えなきゃいけないから。
「ごめん、難しい話だったよね、明日は行かない」そう口にしようとした瞬間、私の携帯に1通のメールが入った。

本国のマネージャーからの「必ずパスを用意しよう」という力強いゴーサインのメールだった。泣きそうになった。

「幕張メッセ、行かせてください!!」
そう家族に告げたのは11月3日当日の0時40分過ぎだった。

そこから急いで飛行機を取り、撮影に行くからとビザ用の書類とツアーのアナウンスの準備を急いで進めた。
本来なら少しずつ進めようとしていた書類のリストアップを、全て「任せろ、すぐ送るから」と受け取ってくれた仲間たちや、何度もごめんと言いながら確認事項を急かした私に対応してくれたエージェント達。
皆の協力もありがたかった。

そして11月3日、朝5時に九州の自宅を出発し幕張メッセへ。

彼らの出番直後のアリーナ内にて

I Prevailは今でこそ大人気で、グラミー賞にもノミネートされたバンドだけど、元々は動画投稿や狭いライブハウスで必死にショーをしていた叩き上げのバンド。

だからこそ、今回できる事を全てやり尽くした思いが届いたのかもしれません。本当に、私があの場にいられたのは偶然と運以外の何物でもない。

何より、日本の皆さまがSNSで後押ししてくれなかったら。覚悟も決まらなかっただろうし、しょんぼり眺めているだけだったと思う。

だから本当に、これは皆様にいただいた沢山の声のおかげです。ありがとうございました。

日本という、彼らにとっては前人未到の地。
そこであんなに楽しそうに、笑顔で歌い演奏をするI Prevailを見る事ができて幸せでした。

ファンの力って凄いよ、バンドの心を救うんだよ。

アメリカに行った時から「最近Brian調子が悪いらしいよ、MCもインタビューも、ずっとEricが頑張っているんだ」と実は聞いていて。
そういう所を決してSNSで見せないBrianは本当にプロだなと思ってた。

その彼が、あんなに嬉しそうにインスタのストーリーを更新していて心の調子が良くなかった事を告白してたのを見て涙が出た。売れたアーティストの悩みは私達には計り知れない、関係者として仕事しているとどうしてもそういう場面に出会う。
だけどそれを、日本のファンの人達は軽々超えて行った。あんなに嬉しそうなBrianの姿を見る事ができて嬉しかった。

そしてメンバーいち思いやりのある男であろうEricも。彼はBlue Ridgeの初日に既に会場に来ていて、ステージサイドでTHE GHOST INSIDEのショーを観ていた。数年前にはお忍びでアメリカで行なわれたSigns Of The Swarmのショーにも遊びに来てくれた。人との繋がりを大切にする彼は、何度も何度もイラストやフラッグを掲げていたファンや何公演にも参加してくれたファンの元へ足を運んでいた。


奇跡って起きるんだな、夢って叶うんだな。
笑いながら泣きながら撮ったショーは、あっという間に感じるほど楽しかった。

幸せすぎて、軽く放心状態です(笑)

激励と勇気をくれた皆様、本当にありがとうございました。

私を起用してくれたI Prevailとマネージャー、ありがとう。

きっと次はあなた達の番。
掴めない事なんて山ほどあるけど、諦めなかったら掴める事だってあるんだ。
そう思えた二日間でした。

私、Marinaの今後の取材や活動費、または各バンドのサポート費用に充てさせていただきます。よろしくお願いいたします!