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寄生虫で性格が変わる。もし「好き」という気持ちも寄生虫の仕業だとしたら…。『恋する寄生虫』

【レビュアー/新里裕人

最初に以下の記事を紹介します。

主にネコを宿主とするトキソプラズマという寄生虫に人間が感染すると、
ドーパミン分泌が増加して性格が社交的になり、異性にもてるようになる、という内容。ちょっと眉唾な気もしますが、寄生虫が宿主の行動に影響を与える事例はいくつも挙がっており、まったく荒唐無稽なものではないようです。

ちなみに寄生虫には、微生物である原虫と、指でつまむことのできるくらいおおきな蠕虫というものがあります。

寄生虫というと、どうしてもギョウチュウとかサナダムシとか、ニョロニョロしているのをイメージしちゃいますが、それは蠕虫。トキソプラズマのようなタイプは原虫です。

本作では、極度の潔癖症のため人と触れ合えない青年と、視線恐怖症のため学校に行けない少女が登場します。そして、彼らの症状を引き起こしているものこそが「寄生虫」であることが判明します。

「寄生虫に感染している」とか言われるとぎょっとしてしまいますが、前述のトキソプラズマのように、その影響は必ずしもネガティブなものではありません。

むしろ、現代社会の中でうまく生きていけない人々を結び付けていくための新たな手段として描かれているのが興味深いです。

ホタテユウキ先生の繊細なタッチで描かれた青年と少女が、本当にわずかずつ心を開きお互いを受け入れていく過程が美しく、引き込まれます。

コミックスは全3巻で完結。
彼らの恋は本当に「虫」の影響だけなのか?
その顛末は各自で追いかけていただきたいです。

なお、主演:林遣都、小松菜奈で実写映画も上映中。