【ダイの大冒険ファンは必読】過ぎ去りし勇者アバンの時代を体感せよ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王』
【レビュアー/澤村晋作】
現在、『ドラゴンクエストダイの大冒険』のアニメが好評放送中ですね。
本作は、その外伝であり、前日譚となります。
原作を、本編と同じく三条陸先生が担当しており、まさに『ドラゴンクエストダイの大冒険』の持つ魅力を備えています。(ちなみに作画の芝田優作先生の父である芝田浩樹氏は、旧アニメで演出や劇場版の監督をしていた方であり、意外な縁があります)
というわけで、ぜひ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』好きに読んでほしい作品として、本作を紹介したいと思います。
1・導かれし者たちの謎
本作の時代設定は、ダイたちの冒険より十数年前。アバンが勇者の家庭教師ではなく勇者そのものとして、魔王と戦うお話です。
勇者アバンが魔王ハドラーを倒したことは本編でも語られており、旅のスタート時点、それから最終決戦については断片的ながら描かれています。
しかし、その道中については、大魔道士マトリフと拳聖ブロキーナとの三人パーティ時の1エピソードを除くと、ほとんど謎に包まれていました。
中でも一番の謎と言えば、僧侶レイラと戦士ロカについてです。
この二人は、本編のヒロインのひとりであるマァムの両親であり、アバンのパーティメンバーです。それだけの重要キャラクターですが、両者ともほとんど戦闘シーンがなく、どんな戦い方をしていたのか、アバンとどう連携していたのか、それから馴れ初めはどんなものだったのかなど、謎に包まれていました。
本作では、彼らにスポットが当たると同時に、アバンがどのようにしてアバン流刀殺法を編み出したか、マトリフやブロキーナとどう出会ったかなど、長年の謎がどんどん明らかになっていく快感があります。
同時に、全く新しい要素が盛り込まれるのも魅力です。
例えばレイラの意外な戦闘スタイルには、度肝を抜かれることでしょう。
2・目覚めし四つの幹部
全く新しい驚くべき要素といえば、ハドラー率いる魔王軍にも言えます。
具体的には、魔王軍には四人の幹部がいたことが明らかになりました。このうち、地獄の騎士バルトスは、本編の重要人物である魔剣戦士ヒュンケルの養父で、魔王軍最強の戦士と明言されていたキャラクターであるので、四人の一角を担うのは自然でしょう。
驚きなのは、幹部の中に鬼面道士ブラスがいたことです。
そう、ダイの養父であるじいちゃんこと、あのブラスです。
魔物ですので、魔王軍に与していた過去があるのは当然ですが、まさか幹部として登場するとは……!
彼ら既存のキャラクターに加え、2体の全く新規のキャラクターがおり、早くも個性を溢れさせています。また、ハドラーも魔軍司令時の保身を図っていた彼ではなく、魔王として威厳ある姿を見せています。
おなじみの温かみあるモンスターたちと、現代的にアレンジされた幹部たちのバランスが絶妙で、そのカッコよさにしびれることうけ合いでしょう。
3・ゲームタイトルである「ドラゴンクエスト」
現代的にアレンジと言いましたが、だからといって本作は、『ドラゴンクエスト』らしさを放棄しているという意味ではありません。
むしろ『ドラゴンクエスト』らしさを随所に感じることができる作品です。
一例をあげれば、本作で明かされたアバンのポリシーは「初めて来た村では全員に話しかける」というもの。
これは、まさに原作ゲームのプレイヤーも、よくやる行動ではないでしょうか。
それは原作ゲームの要素をただ使うのではなく、ボスモンスターの連続攻撃から生まれたかの有名な天地魔闘の構えのように、うまく漫画に落としこまれたより深い愛からのものであり、ドラクエファンほど胸躍るものとなっています。
そして伝説へ…
本作は現在、単行本1巻が発売されており、入りやすいタイミングだと思います。
これを読むことで、本編のアニメもより楽しくなること間違いなし。見せ場のオンパレードで、お話もどんどん掘り下げられていきます。
ぜひこの機会に、過ぎ去りし勇者アバンの時代に、そして伝説へ飛び込んでみませんか?