データ分析とコミュニケーション|THE STUDY by THE GUILD #3 参加レポート

こんにちは、tomaです。今回はTHE GUILDが主催する THE STUDY by THE GUILD #03 「データ×UXデザイン」 に参加したのでレポートを書きたいと思います。

第一部は以下の4名の方々による講演、第二部はこばかなさんモデレートによる登壇者のみなさまのパネルディスカッションでした。

大竹 雅登|dely株式会社 CTO/執行役員
山田 智久|アドビシステムズ株式会社 エクスペリエンス ビジネス部 シニアコンサルタント
安藤 剛 | THE GUILD / UX Designer
鈴木 陽介|日本経済新聞社 デジタル事業BtoCユニット

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必要十分の工数で意思決定するために

1人目はレシピ動画サイトkurashiruを運営するdelyの大竹さん。データに基づいたアイデアの検証プロセスについて、サンプルケースをもとにお話されました。

delyでは改善プロセスを定形化して、データ活用時に陥りやすい失敗を防ぎつつ効率的なアイデア検証を行い、データを用いた正しい意思決定をできるようにしているそうです。以下がアイデア検証プロセスを簡略化した図。

Source of Image : 認知バイアスを回避するためのアイデア検証プロセス / Validate Ideas - Speaker Deck

ポイントとして以下のようなお話がありました。

■ 課題事実に解釈を加えない
課題事実はデータが示す、誰が見てもそうである事実。解釈を入れない

■ アイデア検証はユーザテストメイン
A/Bテストもいいが、時に効果が出た理由がわからない、納得感がない、ということがある。その点ユーザテストだとスピード感もあり、Face to Faceで肌感もわかるのでアイデア検証には適していると感じる。

■ 検証したいことを整理して必要十分な工数で意思決定する
上記の図のように事実をアイデアまでブレイクダウンする段階まで整理してからアイデア検証に取り組んだ方がいい。また、必要以上の精度を求めることも不要なので、そのためにも検証したいことと何があれば達成できるのかを整理することは大事。
途中で原因仮説が間違ってると気づいたら、それに紐づく解決策は実施しない。こうすることで効率的に実装するアイデアを意思決定できる。

当日の資料はこちら。
▼ 認知バイアスを回避するためのアイデア検証プロセス / Validate Ideas - Speaker Deck

delyで行われているアイデア検証フェーズの詳細については、以下の記事で詳細に説明されていました。こちらもぜひ参考にされてください。

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徹底的な分解と言語化によるデータ活用

2人目はAdobe Systemsの山田さん。日頃コンサルタントとして様々な企業のUX/UIの設計・改善支援を行ってらっしゃる方です。UX/UI改善にAIをどう使えばいいか、その活用イメージを描きやすくするためのポイントを紹介してくださいました。

※ AIのコトバの定義として、山田さんの講演では主に機械学習を用いた、分析・最適化施策を指す、とされていました。

施策を行う上では以下の思考プロセス経て、これらを徹底的に言語化することが重要とのこと。

目的と目標を徹底的に言語化
1. 目的を構造的に分解
2. 改善目標を設定
3. 目標達成のための課題特定
このとき、
・AIでカバーできる改善プロセスの範囲
指標(PV、離脱率...)とセグメント(流入経路、デバイス...)の違い
分析(行動パターンを特定したい...)と施策(行動内容に沿った情報を出したい...)の分け
を意識することが大切なポイント。

AIを使った、とされていますが、この思考プロセスやポイントは普段の改善プロセスでも使えるものだと思いました。当日は実際にヘルプガイドサイトを例に、このプロセスと意識すべきポイントについて解説されていました。以下のスライドでチェックしてみてください。

当日の資料はこちら。
UX/UIを高度に改善!AIを有効活用するポイント - Speaker Deck

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チームを巻き込むデータ活用のために

3人目はTHE GUILDの安藤さん。チームでデータを活用する文化を醸成していくためのデザイン・コミュニケーションについてのお話でした。

日頃、安藤さんがデータ活用についていろんな会社とお話されている中で、

・データの分析は各社ちゃんとやっているイメージ
・一方、効果的に人を巻き込むことができていないのでは?

ということを感じられてきたそうです。その原因の一つとして安藤さんが考えたのがダッシュボード。

Source of Image : デザインとコミュニケーションで改善するデータのUX - Speaker Deck

安藤さんが仰るには、ダッシュボードに問題があるのでは、と。

ダッシュボードの問題点はコミュニケーションが生まれづらいこと。
コミュニケーションが重要な理由は、
・INPUTとして:データ分析に一次情報(現場の意見)はとても重要
・OUTPUTとして:データを活用する人が増えるほど組織が賢くなる

つまり、データのUXが改善すれば、データを活用する人が増え、コミュニケーションが増え、組織としてビジネスやゴールに関するピントが合ってくる可能性がある、ということ。パートナー企業では、UX改善とコミュニケーション活性化について、それぞれのアプローチを実践されているそうです。

■ 伝わるデータのビジュアルのデザイン
データのUXをどうデザインで改善するか?
→ インフォグラフィックの考え方を理解し取り入れてみる。
すべてのグラフを怪獣のようにデフォルメしろというわけではないが、少なくとも統計上は、視覚的に美しいものを作るとより多くの人に認知される・記憶されるということが言える。

■ データを介したコミュニケーションのデザイン
データを介したコミュニケーションを活性化させるには?
→ ダッシュボード以外でのデータの提示・共有方法を考えてみる。
例えばnoteチームではSlackとRedashを連携してSlackに日々データをポストする仕組みにしている。こうすることで、
・カジュアルにコミュニケーションが生まれ、
・他の人のデータの見方を知ることができ、
・結果として重視すべきKPIを全員が理解

できる。

Slackへのデータポストについて、安藤さんは初期段階ではと仰っていましたが、Slackですら会話がない場合、ダッシュボードを作ってもコミュニケーションは生まれないかもしれません。そういう意味で、Slackにポストすることによる会話の可視化自体にも価値があって、データを介したコミュニケーションの練習にもなるだろうなと思いました。

当日の資料はこちら。
デザインとコミュニケーションで改善するデータのUX - Speaker Deck

ちなみに安藤さんはtwitterで、データ視覚化のデザインについてのツイートをイメージ付きでポストされているので、フォローされると良いと思います。
これまでのまとめは以下。

データ視覚化・デザインだと、過去に安藤さんも挙げられていましたが、以下の本もオススメです。書名が惜しいですが中身はとても良いです。

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データ民主化で皆が同じレベルで話せる環境を

ラスト4人目は日本経済新聞社の鈴木さん。日経電子版の企画開発、内製化を主導されてきた方です。電子版になりデータを取れるようになってから、データ活用できる組織にしていくデータの民主化についてお話されました。

日経では、電子版の開始を期に取れるデータが増えたこと、2015年のフィナンシャル・タイムズ(FT)買収が大きな契機となりデータ活用が進んだそうです。特にFTは新聞業界でもデータ活用がかなり進んでいて、その知見を吸収しながらデータ活用の知見を高めてきたとのこと。最近では以下のように指標を設定し、チームでの共通目標としているということでした。

エンゲージメントレベルの設定とカテゴリ毎の施策
・過去20日の利用頻度からエンゲージメント指標を設定し、それを上げていくことをわかりやすい共通目標としている。
・指標の数値ごとに5つのカテゴリーに分けていて、カテゴリー毎に施策を変えている
・日経電子版は上位2カテゴリで過半を締めているが、それ以外の人たちをいかに離れないようにするかが重要

現在は自社製のデータプラットフォームを構築し、データを扱える人を増やしていく「データ分析の民主化」フェーズとのことで、よくある「ツール導入したけど誰も使ってくれない問題」を避けるため、データ道場というトレーニングの枠組みを作ったとのことでした。

■ データ分析のノウハウを身につける「データ道場」の実施
 ・期間は3ヶ月、毎週1日3時間(宿題がでることも)
 ・5-10人ぐらい
 ・対象はエンジニアではなくビジネス・デザイナー側の人
 カリキュラム
 ・SQL基礎編(簡単なSELECT文/縦持ち・横持ち/with句...)
 ・実践編(PDCAサイクルの回し方/チーム毎のカスタマイズ)
施策をやる時の基本姿勢を身につけることが目標
・施策がビジネスゴールに結びついてるのか
・施策の中止条件の設定
・インパクトのシミュレーション

これらの施策の結果、日経では社員200人以上がSQLの基礎的な知識を持っている状態になっているそうです…

最後にデータ分析の民主化の必要性について、以下のように仰っていました。

データ分析の民主化が必要な理由
専門の人だけじゃなくて全員でやれるほうがいい
データ分析はまじめにやるとコストが高い。データサイエンティストやっといてよ、では人が足りない。
足りないデータに気づける・本当に役立つデータが取れるようになる
分析をやったことがない人だと、取らなきゃいけないデータがわかってないケースが多かった。分析して初めて気づける重要性がある。

課題当日の資料はこちら。
創業140年の古い会社でデータの民主化を進めた話 / nikkei data driven 20180823 - Speaker Deck

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パネルディスカッション

予め準備された質問と、会場・Twitterから寄せられた質問に登壇者が回答・議論する形で行われました。いくつか興味深かったものを紹介します。

■ データとの出会い・きっかけ
dely 大竹さん

とにかくサービスを伸ばしたかった。どうしたら良いか考えたときに先人の知恵を借りようとヒアリングに行った。「データを取ってるのか?」と聞かれ「GAは入れてる」と答えたところ、「それでは暗闇で走っているようなもの。もっと細かく見ろ」と言われた。そこからデータ基盤を作った。当時はデータ分析初心者でもなかった。その重要度を知らなかった。
データをどう周りに普及していっているのか
日経 鈴木さん:フロアにディスプレイ置いて常時ダッシュボードで見せてる。データを使って上手く施策回りました!みたいな成功事例を共有するようにしている。

THE GUILD 安藤さん

社内勉強会。流行っているサービスがなぜ優れているのか競合含めて調べて分析。

dely 大竹さん

データの話はよく社内でする。あの会社のあのデータ見られたら面白いとか、このデータはウチでいうとxxだから高いね、低いね、みたいな話。あとは、事業の決算情報とかを自分たちの指標に置き換えて比較したりする。勉強会の話でいうと、どうしてもこの分析やってほしい、というときにはマンツーマンでやる。

Adobe 山田さん

動機づけが大事。社内認定制度みたいなものを作ったりしてる。
データ分析していく時に大切にしていること
Adobe 山田さん
ギリギリまでデータを見ないようにしている。目的と目標のブレイクダウンをやって、仮説を立ててから。

dely 大竹さん

見たものを共有するのが大事で、このときに「金脈があったぞ!」みたいにできる限りセンセーショナルな文言をつけるようにしている。Slackで深く話すと、会話の中で発見がある。コミュニケーションまでがセットでデータの分析だと思っている。

THE GUILD 安藤さん

データ分析は意思決定のためにやるので、それに資さないものはやらないほうがいい。あとは、拡散される前提で作って、資料が独り歩きしても誤解がないように気をつけている。

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今回登壇された4名は、企業規模と事業会社/コンサルタント・サポートという立場で見ると、それぞれ異なる役割を担ってらっしゃる方々で、立場・視点の違いも見られた一方で、共通してコミュニケーションの大切さ、プロセスの大切さをお話されていたように思います。
どの方の講演も濃密で、あっという間の勉強会でした。THE GUILD勉強会は初めての参加でしたが、note枠での参加者にはレポート用に写真素材も提供される(このnoteの写真も提供いただいたものです)など、ホスピタリティにも溢れていました。また、終了後の安藤さんの以下のツイートを見て、「ここまで考えてらっしゃるのか…」と驚きとため息がでました。本当にステキなイベントだと思った次第です。

次回以降もチャンスがあれば、是非参加させていただきたいです。ありがとうございました!

写真提供:THE GUILD


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toma

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