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Vol.0 - レコードをリビングで聴き始めた理由

▶︎家にはレコードがいっぱい

自分は長いことレコードを買い続けている。

旅行などで遠方に出掛けた時も、まずはレコード屋を探し赴き、休日なども近所のレコード屋は当然のことながら、はるばる別の街に出かけることもしばしばある。

これだけ長いことレコード屋に通い続けていると、デートの際にレコード屋に寄ってはいけない、もっと言えば「ちょっとレコード屋寄っていい?」「いいよ」という会話の「いいよ」は嘘であることも学んだりした。

現在膨大なレコードが我が家にはあるが、そのほとんどはテクノやハウスなどのダンスミュージックの12インチである。中学3年生の夏休みにラジオでUnderworldのRezを聴いて以降、ダンスミュージックに取り憑かれたように踊り聴き回し作りしてきたのだが、実はDJの時に使用するレコード以外のレコードもかなり増えてきている。

▶︎家の構造上の問題

家の作り的に、我が家はリビングルームがあり、その隣の部屋(以下マイ・スタジオ)に機材やターンテーブルが置いてあるため、リビングルームはレコードの音を聴くのに向いていない。

折角のレコードをマイ・スタジオで聴く以外は手立てがないというのもなんだか勿体ない気がしてきた。マイ・スタジオで真剣に向き合いのも良いが、食事の際や、朝起きてボーッとする時、自宅で仕事をする時などにも、レコードで音楽を聴くことができたらなと思い始めたというのが大きい。

▶︎サブスク&Bluetoothスピーカーの限界

それまではリビングで音楽を聴く時はSpotifyを利用していた。この音はとにかく酷い。音量が小さいだけでなく、薄っぺらな音質で音楽を聴くダイナミズムが感じられない。便利だし有効利用させていただいているので、悪く言いたいわけではないのだが、これは音楽を聴いたフリをしているだけのような気がずっとしている。

別に「レコードの音がいい」「温かみがあって好き」などと言いたいわけでもなく、個人的にはCDやデータの方がよっぽど音はいいと思っている。ただし、何度も申し訳ないのだがSpotifyの音は驚くほど悪い。これで音楽を聴き続けるのは酷だなと感じた。

では何故レコードを買うのかと問われれば「ジャケットが大きいから」と、「For Diggers Only」に書かれていたように「レコードそのものが好きだから」が答えになる。

レコードを買うのは、聴いたことがない音源を聴きたいからでもないし、フォーマットとして優れているからでもないということ。誤解を恐れずに言えば、レコードという物体そのものが好きだからというのが唯一の核心だということ。
(D.L.ら『For Diggers Only レコード・コレクティングの深層』リットーミュージック)

▶︎豊かな時間を求めて

レコードは一度流したら基本的に通して聴くしかない(簡単に曲をスキップできない)。つまりアーティストが丹精込めて作り上げた音と、その曲順などにしっかり向きあうことができるメディアであるとは思っているし、何よりでかいジャケットを眺めながら音楽を聴くのはとても贅沢なことで、コーヒーの味もわからないくせに(牛乳を入れないと苦くて飲めなかったりもする)、コーヒー豆をわざわざ挽いて飲む自分のような豊かな時間を求める人間にはお誂え向きの聴き方だと思っている。

もちろん冒頭にも書いたように、気軽に聴けるようになりたいというのが目的の一つではあるが、ソファーに座りながら味わうようにレコードを聴くというのも生活の中ではとても大事な時間になるのではないかと感じた(マイ・スタジオにはソファーはないし基本飲食を禁止しているので)。

▶︎加齢による記憶力の低下を補う

そして、noteにそのレコードの感想を書き連ねようと思った理由でもあるのだが、加齢のおかげで最近はめっきり記憶力が衰え切っており、とにかく曲名や曲を覚えられない。同じレコードを買ってしまうなんてことは昔からあったが、昔は複数回レコードを聴けば、どのレコードの何曲目はこんな曲でというのを思い出すことができた。

シングル主体のテクノのレコードではそれが今でも何となくできるのだが、アルバム単位で聴くロック・ポップス、そして最近買い始めたソウル・ファンクのレコードではそれが出来ない。「このアルバムは良い」ということは覚えているのだが、悲しいことにどの曲がどう良かったかが定着しない。

ちょっと関係ないかもしれないが、ドラクエの街の名前なんて子供の頃にやった2や3はしっかり覚えているが、8や11は街の名前やモンスターの名前は愚か、ストーリーすらままならない。

▶︎そして日々増えるレコード

年齢を重ねることで、ある程度金銭的余裕もでき、家族がいない自分にはレコードを買うくらいしか楽しみがないと言っては言い過ぎだが、レコードを買う機会が加速度的に増えている。現在会社に属している身としては、うっかりウイルス感染などしてしまうと多大な迷惑がかかるため、ライヴやクラブにも通えず、レコード屋くらいならいいかしらとなっている節もある。

ストレス発散の捌け口とも言えるかもしれないが、酒を飲んだりして消えてなくなるものでもないし、昔からレコードのことは「動産」と呼んでおり、生活に困ったら売ることができるという点で、とても優秀な趣味と言えるかもしれない。

▶︎記憶の記録

Twitter上で出会った「記憶を記録する」という言葉がある。これを実践したいというのもきっかけの一つだ。このままでは買っておしまいになってしまうのではないかという危機感から脱するためにも、そして折角買ったレコードをじっくりと紐解くためにも、誘惑の少ないリビングにてレコード鑑賞を楽しみながら、音楽を頭に定着させたいというのが目的でもある。

▶︎さいごに

つまり、自分がそのアルバムを聴いて思ったことを淡々と書き連ねる場であり、おすすめ!というわけでもない。もちろん面白くなかったレコードのことを書くつもりはないので、結果的にはおすすめにはなるのだが、きっちりとした評論や正確な情報に基づいた紹介業的な文章でもない。何を隠そう一応文学部文学科の学士(ただし英米文学専攻)なので、文章を書くのが嫌いということはないが、長けているわけでもない。しかし、文書を書くことは指先も使うし、頭も使うしで、格好のボケ防止になると思っている。

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