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Vol.1 - Prefab Sprout / A Life Of Surprises

Prefab Sprout
The Best of Prefab Sprout : A Life Of Surprises
(1992)
Kitchenware Records

Prefab Sproutという名前は前から知ってはいたのだが、聴く機会に恵まれず、素通りしてきた。バンド名やジャケットからネオアコ系のバンドなのかしらと勝手に思ってきたのだが、1984年のデビュー以来、5枚のアルバムを経てリリースされたというこのベスト盤を今回初めて聴いてみて、随分と勘違いをしていたのだなと感じた。

音的にはギターの音などよりも、80s的なシンセやキーボードの音の方が目立つ、discogsにも書いてあるような「Pop Band」という肩書がぴったりのサウンドで、思わず歌いたくなるような、CMにも使われそうな良質なポップスでいっぱいであった。

何故に今までこれを聴いてこなかったかなと後悔するほど素晴らしい楽曲ばかりで、ポップス系では久々に感動を覚え、これから自分は日本一のプリファブ・スプラウトマニアになろうかなと思うほどであった。

A1: The King of Rock 'n' Roll

最高にポップな楽曲ながら、ブラス系のシンセ音がThe 80年代なサウンドで若干古さは感じるものの、その素晴らしいメロディーがその辺りを払拭してくれている。おそらくプレスリーのことを歌っているのかしらと思いつつ、Breaking Bad大好きな自分にとっては「アルバカーキ」という都市名が入るだけでテンションが上がる。

A2: When Love Breaks Down

デジタルシンセやウェーブテーブルシンセの音が満載の物悲しくも美しい曲。この曲はセカンドの「スティーブ・マックイーン」に収録されているのだが、どうやらボーカルのPaddy McAloonとキーボードのWendy Smithがデビュー間近までは恋仲であったらしい。その後破局を迎えそのことを歌にしたものだとか。そしてWendy Smithはとても美しい。80年代映画のヒロインそのもの。ストレンジャー・シングスのナンシーは彼女の爪の垢を煎じて飲んで欲しいくらい。

A3: The Sound of Crying

このベスト盤用に作られたシングルとのことで、確かにサウンドが若干90年代的になっている気がする。特にリズムの音が。これもタイトル通り、物悲しさがありながらもグッドメロディーで、時々現れるアンビエント的なシンセの音が切なさを膨らませる。どうやら歌詞の内容は恋愛事と言うよりは、「世界中の人々の苦境を憂い、なぜ彼らを助けられないのかという問い」であるとのこと。

B2: Goodbye Lucille #1 (Johnny Johnny)

イントロからのギターや途中絡んでくるストリングス(シンセ?)なども素晴らしく、哀愁漂う曲が特に得意なのだなと思った。Johnny Johnny Johnny・・・は声に出したい英語というか中毒性が高く、うっかり口に出してしまうことが多い。

B4: Cruel

このベストアルバムの中で一番驚いた曲で、素晴らし過ぎて涙が出そうになる程であった。自分の人生においてもかなり上位に位置する名曲だと思う。バラードということになるのかもしれないが、物悲しさというよりは、とても日常的で、地に足の着いた告白を淡々とされているような、夜に物思いに耽りながらその自己問答に納得をしていくような、そんな不思議な気分になる。それもとびきり美しいメロディーにのって。ジャジーとも言えるアレンジもとても良い。そして、最後に出てくる「僕のアーバンブルーズへの貢献」という歌詞。まるで心臓を掴まれるようであった。

C1: Cars and Girls

この曲はとてもギターポップ的なアレンジで、元から想像していた音にとても近い。どうやらプリファブ・スプラウトの一番知られた楽曲はこれとのことである。つまらない曲ではないが、Cruelの直後だとどうしても霞んでしまう・・・とは言えいい曲。

C2: We Let the Stars Go

これもギターポップ的な質感の、美しく儚く切ない、星にまつわる歌なのだが、満点の星空の下で聴いたりなんてしたら、持ってかれてしまうに違いないような、心がざわつく素晴らしい曲であった。三拍子でもあった。いつか夏などにキャンプに行った時などは是非この曲を流したい。朝霧ジャムは今年こそ開催してほしい。

D1: If You Don't Love Me

この曲もこのアルバム用に書かれた曲のようで、若干サウンドが更新されている印象がある。とは言えエレポップマナーなシンセベースなどがあったりして、当時の評価が気になるところ。個人的には大好きなサウンド。これまでになかったようなとてもスケールの大きな曲で、ポップさ加減も爆発しており、これが代表曲!と言われたら信じてしまうくらい素晴らしい曲。

D2: Wild Horses

これは何かにサンプリングされているかしら。Wildという甲高い声の部分、どこかで聴いた覚えがある。それとも何かをサンプリングしているのか・・・ちょっとずれている感じがあるので、そうなのかもしれない。知らないが。彼らの十八番とも言える、切なさ溢れるローテンポの曲。やはり彼らのメロディーセンスは抜きん出ているなと感じる。

D3: Hey Manhattan!!

ここまで来るとエレピの音が好きなんだなー、おそらくDX7なのかなー、時代かなー、などと軽口を叩きながら聴ける余裕が出てきた。前の曲同様の方向性。ただ同じ曲ばっかりだなという印象にはならず、なんとなくひねりの効いたメロディーが、彼らの楽曲をくだらないものではなくしている最大の要因であると思った。

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いい曲だなー、というだけではなく、心に訴えかけてくるようなポップスには本当に久々に出会えました。しかも30年近く前のアルバムでこれを感じるのだから、音楽好きといっても大したもんではないな、もっと色々買って聴かないといけないなと思いました。サブスクなどでも気軽に聴けるようなアルバムだと思うので一旦聴いてみて、同じようなことを感じたらぜひレコードやCDで聴いてみてください。そして自分は、オリジナルアルバムやこのベスト盤以降にリリースされたアルバムなどにも手を出していこうと思います。この次に出たアルバムは「Andromeda Heights」というそうで、タイトルだけでも期待が高まります。

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