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Vol.2 - Zapp / Zapp

Zapp
Zapp
(1980)
Warner Bros. Records

自分は全くと言っていいほどブラックミュージックを聴いてこなかった。デトロイト・テクノは当然聴いてきたし、一部のヒップホップなどを齧ったりはしたのだが、ソウル/ファンク、R&Bに括られるような音楽はなぜか聴いてこなかった。他に聴く音楽がたくさんあったことと、感情込め切ったボーカルが苦手だったりしたのが原因だとは思う(だからマーヴィン・ゲイは聴いてた)。

しかしここにきてなぜか個人的にソウル&ファンクブームが来ており、ちょこちょこと買い始めた。何にせよ知識がないのでジャケ買いだったり、Spotifyのこれも好きかも的な所から少しずつ。この、求めているレコードを探すのではなく、どれがいいのだろうと怖々とレコード棚に向かう感覚はとても久しぶりで、高校生の頃を思い出しながら楽しくレコードハントしております。

そしてこのザップのファーストアルバムに関しては、大当たり中の大当たりで、ファンカデリックやパーラメントを聞いても、ピンとこなかったのだが、「デトロイトテクノ(というかホワン・アトキンスの音楽)は、クラフトワークとP-ファンクの融合」という言葉から想像していた音がここにあった!と興奮を覚えた。どうやらこのザップはパーラメントやファンカデリックの前座をしていたらしく、またこのアルバムも眼鏡が星のブーツィーがプロデュースしているので、自分の感覚もあながち間違ってはいないのではないかと思う。

A1: More Bounce to the Ounce

まるでリズムマシーンのようなリズムの音、ブリブリのシンセベース、トーキングボックスのロボットのような声、パッキパキのカッティングギターが音数少なく延々とミニマルに流れ続けるこの音楽には本当にびっくりした。まるでジェダイナイツを聴いているようで、これが元ネタなのだなーと今更ながらに感動。

A2: Freedom

1小節のベースラインが曲中ずっと繰り返されるこの曲も、そんな単純なことではないとは百も承知だが、テンポこそ遅いものの、まさにテクノではないかと驚いた。詰まりそうで詰まらず、絶え間なく流れていく構成がたまらなく気持ち良い。

B1: Funky Bounce

A面(正確にはZipp Side)に比べて展開もしっかりあるし、全体的にコミカルで人間味のある印象の音で、ギタープレイもかっこいい。トーキング・ボックスも再登場し、人間が楽しげに演奏している姿が想像できるパーティー感覚のある曲で、人に勧めるならこのB面(正確にはZapp Side)になるのかもしれない。個人的にはA面のほうが驚きは大きいが。

B2: Be Alright

ここに来て意表を突かれるようなロマンティックな曲で、これがうっとりするほど素敵な曲。唯一異性を感じるというか、恋をした時のようなうっすらとしたワクワク感が満載で、夜道にこれを聴いて歩いてなんていたら、いつの間にかスキップに変わってしまうのではないかと思うので、恋をしている人は誰か試してほしい。

B3: Coming Home

最後の曲にふさわしい、カーテンコールのような曲でポップスとしての強度も高く、このアルバムを名盤たらしめているのはこの曲かもしれないとすら思う。「また会いましょう!」という声が聞こえてくるようで、最後に力を振り絞って踊り切りたくなる。小学校の頃にセミプロのような劇団がお芝居をしに学校に来てくれたが、その最後などに流れそうな曲と言ったら悪口になるだろうか。

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フロントマンである、ロジャー・トラウトマンが亡くなったというニュースはエレ・キングで読んだ記憶があり、トーキング・ボックスも好きだし、ジャケットもかっこいいのでずっと興味があったのですが、ようやく聴けたうえに、想像以上に良い音楽で大満足でした。なぜかSpotifyには彼らのオリジナルアルバムはロジャー死後のものしか置いていないのですが、ベスト盤やコンプリートアルバムのようなものはあります。今回紹介したアルバムと、セカンドアルバムは手に入れたのですが、サード以降をレコードで見かけたことがないので根気よく探していこうと思います。ちなみにロジャーのソロアルバムも買いましたが、何故ザップと分けているのかわからないくらい、まんまザップでした。つまりとても良かったです。

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