「悪友」東京 感想

東京は愛せど何もない

「丸の内サディスティック」で椎名林檎女史はこう唄った。

林檎女史は埼玉生まれの静岡、福岡育ちの所謂転勤族の家庭で育ったため、どこの地域にも特に愛着がなかったのではないか?と勝手に想像してしまう。ただ、東京の駅名が歌詞によく出てくるところから、住んでいた地域の路線のなかでも、東京の路線が好きなんだろうなぁと思う(やっつけ仕事の「銀座線終電何時? 然して問題じゃないし」等)。
丸サの「終電で帰るってば 池袋」なんて、全埼玉県民共感の歌詞だし...。西武線終電何時?はダサい。デビュー当時は福岡出身として売り出してたのも埼玉出身はダサいからだと断定できる。
めちゃくちゃ林檎さんについて語ってしまった。本当はある同人誌の感想を書きたい。

劇団雌猫さんの同人誌は「恋愛」を除いて全て読んでいる(「シンゴジラで性欲を断ち切る女」が気になりすぎるので恋愛も近々通販で買います)。毎回期待値を超えてくる面白さで、普段日常ではなかなか遭遇できないオタク女たちの秘密がたった500円で読めるなんて劇団雌猫の方々には感謝しかない。

さて、今回はそんな悪友の新刊、「東京」の感想を書きます。


悪友「東京」、どのエピソードも面白かったです。
でも、「これ以上青森では小説を書けなかった女」が一番刺さった。
ネタバレになるからあんまり書けないけど、このエピソードの概要は「東京には選ぶ権利がある。それは厳しいこともあるけど選択肢がない地方に比べたら全然マシ」といった内容である(本当はもっと小説みたいに綺麗な文章で綴られている)。

東京には学生ですら、どこに行き、何を着て、何を食べて、将来何になるか、沢山の選択肢がある。地方都市には東京には劣るけどその選択肢が少しはある。私は一応、地方都市に入るところに住んでいる。新宿、池袋へは電車で30分くらいだ。中学、高校の時から池袋、原宿には時々遊びに行き、ロリータ服を買ったり、アニメイトやとらのあなで男同士の恋愛に関する同人誌を買い、青春を謳歌していた。
交通網は発達しているため、青森の女の「車がないとどこにも行けない」という気持ちは実際よく分からない。でも学生時代の私にとって世界はとても狭くて「どこにも行けない」と常に思ってた。インターネットだけが救いだった。

青森の女と同じく私も小中高とネットに没頭していた。文才はないから小説は書けなかったが、ピクシブに推しカプのイラストをあげたりして、知らない人から反応が貰えたり女性人気イラストのランキングに載るととても嬉しかった。テストで良い順位を取るよりもずっと。
学生時代、現実世界が窮屈で仕方なかった。毎日学校と家の往復の繰り返しで、部活動だって同じ曲を吹き続けるだけで、顧問の先生もプロではないし、周りもやる気ないし、何のためにやっているかさっぱり分からなかった(あの時、麗奈がいれば久美子になれたかもしれない...)。

東京の大学に進学した。大学までは実家から1時間くらいだったため、全くもって上京と呼べる距離ではない。そこで私は青森の女と同じく、東京はただ綺麗なだけの街ではないと知った。選択肢が無尽蔵にあることは必然的にその選択肢の中に優劣が生まれ、上位にある選択肢の奪い合いになる。私は結構、そういう競争が好きなんだと思う。
非常に嫌な言い方になるが、地方都市の大学にそのまま進学した友人は、あまり競争心がないなぁ、と思う。
多分その友人が地方都市では普通で、自分が東京を知って変わってしまったんだと思う。会社にいても、日々同期との闘いだと思うし、つらくて辞めそうになったけど今は会社との上手い距離の取り方を見つけて(本当はもっと色々あったけどコンプラ的なあれでここに書けない)なんとかやっている。

選択肢が沢山あることにより幸福になれるかどうかは、それを選ぶ人次第で、選ぶ基準を見つけたもの勝ちだ。だから「まだ東京で消耗してるの?」という問いかけは万人に当てはまるものではないと思う。むしろ「まだ地方都市で消耗してるの?」という人も私の周りにはいる。

悪友「東京」には、東京最高!な人と東京来たけど地元or地方都市の方が自分には合ってる人どちらのエピソードも書かれていて、普段得られない知見を得た。私は東京最高!側の人間だが、今はとにかく貯金したいし実家のある地方都市のままでいいかなぁと思っている。一人暮らしするか微妙な距離すぎるのもあるけど。

28歳頃までには結婚してるしてないに関わらず東京に住み、その時、答えのない「東京」観の答え合わせをしたい。

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