感性的所与を生み出せる場の創造を

―ヒトの感性の歴史を振り返ろう―

ヒトの感性の歴史を振り返ろう
 私達、人間は生物学の分類上は霊長類のヒト科(Homidae)に属する動物で、現世のヒトはホモ・サピエンス(Homo sapiens)の1種類として分類されている。ヒトの祖先あるいはヒトとチンパンジー等の霊長類の共通祖先をいかなる化石霊長類に求めるかは、いまだに結論を得ていないようである。しかし、中新世末から鮮新世初頭に現れたとされているラマピテクスを私達人類の祖先とされているようであるが、ラマピテクスの出現は何と今から約1200万年前のことである。平均寿命を単純に30歳と計算して、世代交代は40万回続き、20万年前に私達の祖先ホモ・サピエンスが出現したとされている。何と約39万3000回の世代交代の後でやっと生まれてきたわけである。地球の誕生が46億年前と推定されているが、2億3000万年前から6600万年前までの1億6000万年もの長きにわたって恐竜時代があり、この間生まれた哺乳類の祖先は恐竜の目を逃れてひっそりと隠れ住んでいたのであろう。恐竜時代が終わり哺乳類の時代になってから5400万年もかけてやっとラマピテクスという人類の祖先が生まれたのである。自然科学の発達のおかげで、私達現代人はこの壮大な地球の生命体誕生のドラマを知ることが出来るようになったにもかかわらず、何故、今存在している命の大切さに思い至らないのだろうか。
 草食動物が肉食動物から逃れるために四肢を発達させたのと同様、私達人類の祖先は肉食動物から逃れるために、直立二足歩行を進化させ、竪穴式住居に隠れ住むことで種の保存を計ってきたのだろう。下肢を発達、進化させることで手を自由に使えるようになった結果、これを使って道具を作り出すことを学び、この繰り返しで脳を発達させていくことになった。これと並行して弱い者同士が助け合い、支え合うという「やさしさ」や「おもいやり」などの言葉で表現される感性が生まれる前頭葉に存在する情緒中枢という脳の機能も発達してきたのであろう。この中枢はヒトという種が環境から受けるマイナスのストレスによってことさら発達したのではないだろうか。ところが、紀元前3000前年頃に出現した古代文明の発祥から知性によるマイナスの環境ストレスを解消するための手段が発達し始め、19世紀から20世紀の僅か200年の間に生まれた自然科学、科学技術という近、現代文明の出現によって極論すれば19万9800年間に亘って育ててきた感性的所与を放棄してしまったのである。多くの先進国の人々は、都市文明という自然から隔絶された人工空間の中で自然科学がもたらしてくれた多くの素晴らしい果実の中から物欲、快適性という果実だけを求め、自然科学に対して無知のまま、これを悪用する輩に未必の故意によって加担し続けた結果が今日の自然環境破壊につながっていることに一日も早く気付くべきである。
 せめて、自然科学の知識だけでも共有して頂きたいと思う。SNSで検索すれば簡単に検索できる時代である。一般の人々が自然科学を学び、自分のものとして身に着け、その長所、短所を「命をことほぐ」という観点から考えて頂ければと願っている。(続く)2020/4/18

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