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松田宣浩がいなかった日本シリーズ最後の夜

日米野球もすっかり終わった2018年プロ野球はストーブリーグ真っ最中。
そんな中なんとしてもわたしはこの話をしなければならないという義務感に駆られているので、大大大好きな松田宣浩の話をします。

去る11月3日、福岡ソフトバンクホークスは球団史上初・2位から日本シリーズを制することができました。ヤッター! 嬉しい! これで2004年、2005年、2010年に流した涙が報われたぞ!!
なんてテンションで初の下剋上日本一に浮かれたかったのに、どうしても手放しで喜べない。

試合終了の瞬間、松田宣浩がサードの守備位置にいなかったから。

奇しくも、この日広島の27個目のアウトはサードゴロ。
去年の秋に楽天からトレードで加入し、この試合も先制スクイズを決めた西田哲朗が、鈴木誠也の打球を掴んで一塁へ送球する。一塁の中村晃がなんなくそれを捕球してゲームセット。

いつも、勝った瞬間は泣くほど嬉しい。最後の打者となった鈴木誠也の4番としての意地や執念にもしびれた。
優勝が決まるまであとアウト1つ、という瞬間に抱くハラハラドキドキとした感情は、なかなか他では味わえない。しかも1年のうちでその瞬間を味わえるファンは、たった1チームだけなのだから。

しかし今年は勝った瞬間よりも、ベンチのいちばん前から声を出し、最後のアウトの瞬間を待っていた松田の姿ですでに泣いていた。

最後のグラウンドにはいつも松田宣浩がいた

ここ10年でリーグ優勝、日本一回数共に5回という圧倒的に強い常勝球団である2010年代のホークス。2010年、7年ぶりのリーグ優勝時。2011年、8年ぶりの日本一が決まったとき。2014年、2015年、2017年。その歓喜の瞬間が訪れる試合で、最後までサードの守備位置にいたのが松田宣浩だった。

松田はポストシーズンも含めて全試合出場することにこだわっている。タイトルよりも全試合、できればフルイニング出場。
これは王会長の「お前にとっては1年のうちの1試合かもしれない。けどお客さんの中には、今日この1試合しか観に来られない人だっているんだ」という教えでもある。
だけどここ数年はケガがなくてもフルイニング出場できないことが増えてきた。連続先発出場も、今年508試合で途絶えた。

連続先発出場508試合という唯一無二の価値

わたしは松田の、言葉は悪いけどちょっとしょうもないところが好きだ。
6年で5回も骨折したり、まばたきが深すぎて牽制死したり、通算1500本安打まであと1本でシーズンを終えてしまったり。ちょっとしょうもない。そういうところが愛おしい。完璧じゃないからこそ、応援したくなる。

だから意識していなかった。
恐らく12球団でいちばん競争が激しい常勝球団のホークスにおいて、連続で500試合以上もスターティングメンバーとしてその名を連ねることのすごさというものを。
故障以外でのスタメン落ちは、なんと2009年まで遡らないといけない。
しかも常に元気で明るく、誰よりも声を出す。試合後は声が嗄れることもあるほど一生懸命で、全力疾走するプレースタイルは一切変わらない。

CS時点でのスタメン落ちの際、工藤監督は「苦渋の決断」と言っていた。
スタメンにならないことを、監督にそう言わせる。スタメンではないことがニュースになる。

いつの間にか松田宣浩は、そんな選手になっていた。
しかしホークスは、日本一を決める最後の試合で松田をベンチに置いたまま勝ってしまった。

人はこれを、世代交代というのだろう。
プロ野球を、ホークスを見るようになって約15年。松田も来年は36歳。これまで見守っていた時間より、これからプレーを見られる時間のほうが短いのは明らかだ。
今年のポストシーズンスタメン落ちや、最後の試合で出場なしは引退までの序章に過ぎない。きっとこれからはレギュラーシーズンでも、そういうことが起こり得る。

あの夜からずっと、この感情の正体がわからなかった

わたしは、悔しかった。悔しかった!! 勝ったことは嬉しいのに、松田が試合に出なかったことが本当に悔しかった!! こんな感情は初めてだから、ずっと正体がわからずモヤモヤするしかなかった。悔しい!!! 悔しかった!!!
理論ではちゃんとわかっている。あの日、あの時点で勝つための最善の手段だから仕方ない。
でも感情だからどうにもできない。そんな物分りのいい大人になんかなりたくない。
松田宣浩という選手が大大大好きだからこそ、試合に出なくて悔しかったし、誰よりも活躍を信じていた。

もちろん松田本人がいちばん、誰よりも悔しいだろう。
だから信じる。2019年の開幕スタメンにも三塁・松田宣浩の名前が載ることを。通算1500本安打をホームランで決め、ヤフオクドームにこだまする熱男コールを。

ファンには選手の痛みや辛さを肩代わりすることはできない。でも信じることはできる。わたしが信じなきゃ誰が信じるっていうんだ。
わたしは好きな選手が「今日で引退します」と言うまでは、絶対絶対なにがあっても活躍することを信じ続ける。

とかいいつつ、意識しすぎて開幕戦では決められない予感もあったりする。
ま、そういうところも松田の魅力なんだけどね。

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