デリシャスパーティ♡プリキュア総括~進化する多様性描写

はじめに

 デリシャスパーティプリキュア(以下デパプリ)が最終回を迎えたので、軽く総括する。

プリキュアにおける多様性描写の変遷

 ここ数年のプリキュアにおける多様性描写の変遷をまとめてみると。まずプリキュア15周年記念作品・Hugっと!プリキュアでイクメンや男性プリキュアの描写によりジェンダー描写に重きを置き、次のスター☆トゥインクルプリキュアで異文化交流をテーマとすることで多様性描写の集大成的な作品となった感がある。
 しかし、そんな多様性描写に対して「多様性を否定する者の多様性は守られるべきか?」という疑問符を、次のヒーリングっど♡プリキュアが投げかけたのである。さらに次のトロピカル~ジュ!プリキュアでは多様性描写については控え目にしつつも、「ジェンダーフリーとは言うけど学ラン姿の女性の多い中でチア姿でいてはならないのか?」という疑問符をさりげなく投げかけており、従来の多様性という概念に疑問符を投げかけ続けている。
 そして今作のデパプリも、二つも疑問符を投げかけていた。

デリシャスパーティ♡プリキュアにおける多様性への疑問符

 二つの疑問符とは、一つは「女性の自立と叫ばれているが、他人に頼ることは多様性を阻害するかどうか」、もう一つは「プリキュアじゃなきゃ世界を守ってはならないのか」ということである。

他人に頼ることは多様性を阻害するかどうか

 東映ヒロインアニメの女性の自立に関する描写であるが、セーラームーンではいざというときに男性であるタキシード仮面が助けてくれていた。それに対してプリキュアでは「自立した女性を描くためにタキシード仮面みたいな男性助っ人は描写しない」というお約束があったらしい。
 しかし、本作ではブラックペッパーというタキシード仮面的な助っ人が登場する。それだけでなく、信頼のおける仮面ライダーのおやっさん的な大人であるローズマリー(マリちゃん)が支援したり、主人公である和実ゆいがおばあちゃんの言葉を頼ったりと、とにかく「他人に頼る」要素の多いプリキュア作品だったと思う。
 しかし、だからといってゆい達が他人に頼りきり自立してないかと言われるとそうではなかった。劇場版ではゆいがケットシーとの苦しみを分かち合うことを自分で考え自分の言葉で伝えた。また、最終章ではゆいがフェンネルに対して「交わした言葉から想いは受け取れる」ということを自分で考え自分の言葉で伝えた。たとえその言葉がありきたりであっても、ゆいなりに考えたという点では自立していると言えよう。
 自立することと、昔の人の言葉を大切にしたり信頼できる大人を頼ったりするということは両立できるのでは?という提案は、自立という名目で真面目人間が何でもかんでも抱え込んでしまうこのご時世にとって、本当にありがたいと思った。
 余談だが、Twitter上でコスプレ関連のツイートにて、「独学でここまで成長したからお前も頑張れ」みたいな「説教するってぶっちゃけ快楽!」的ハッシュタグがあるが、これを見て「嘘つけ全部独学じゃねーだろ!少なくともネットで誰かの知恵を借りてるだろうし、レイヤー仲間でこっそりノウハウを共有してるだろ!」と思っているぼっちとしては、このデパプリのテーマが気に入っている。(ちなみにノウハウ不足で初のマスク完成まで5年以上かかった。)

プリキュアじゃなきゃ世界を守ってはならないのか

 もう一つの疑問符が「プリキュアじゃなきゃ世界を守ってはならないのか」ということである。先述のブラックペッパーはプリキュアという位置づけでも、マリちゃんのようなクックファイターという位置づけでもない。単にスペシャルデリシャストーンを持っており和実ゆいとその仲間たちを助けたいという一心だけで助っ人をやっている、品田拓海という一人の人間にすぎない。
 しかし彼の存在は、プリキュアじゃなきゃ世界を守ってはならないのか、男性が世界を守ってはダメなのか、という疑問符をプリキュアシリーズに投げかけた。そして「プリキュアじゃなくても男性でも世界を守っていいのでは?」という提案をしてきているあたり、より進化したジェンダーフリーの形がしていて好感持てた。
 これも余談だが、男女混合で料理を作ることになった場合、男性がやろうとすると女性が断るというケースが結構ある(しかし結局後片付けは男性がやることになるのだが)。今回のブラックペッパーの存在が、男女一緒に協力してやれる機会を増やし、お互い負担を減らせるきっかけになってくれると非常にうれしかったりする。

ヒーリングっど♡プリキュアの疑問符へのアンサー

 従来の多様性に対して新たな疑問符と提案を投げる一方、ヒーリングっど♡プリキュア(以下ヒープリと称す)の投げかけた「多様性を否定する者の多様性は守られるべきか?」という疑問符に対して、本作が示したアンサーもまた興味深い。
 本作に出てきた敵であるブンドル団、敵の操り人形で悪を最小限に抑えていたジェントルー=菓彩あまねと、ただ命令に従い実行していたスピリットルーは無罪として。プリキュアたちを氷漬けにしてかき氷にしようとしたという点で殺意のあったナルシストルー。これまたプリキュアたちを型に閉じ込めて殺傷しようとしたセクレトルー。世界の食糧を独占して、自分の意に従わない者を餓死させようとしたゴーダッツ=フェンネル。彼らはヒープリに出てきた敵・ビョーゲンズに匹敵するほど残虐である。
 しかし本作は彼らを殺しはしなかった。しかし無罪放免にもせず、しっかりと懲役刑を与えた。
 ヒープリで絶対に許されない敵を示し、では許されない敵の処遇をどうすべきかについてデパプリで描写していたのも非常に興味深かった。
 (とはいえヒープリでダルイゼン達は反省の余地がなかったため懲役刑にしても何の改善もされなかっただろうし、最終回エンドカードみたく微力化してれば無害だからあれが懲役刑みたいなものという解釈もできる。)

作品自体の感想

 作品自体の感想だが、ゆい絡みのエピソードを終盤に集約させて、それまでここね・らん・あまね達サブキャラクターの活躍を中心にエピソードが作られたのが印象的だった。好みもあるが、個人的には長期シリーズでの中だるみや尻切れトンボがあまり好きじゃないので、最終章で指数関数的にスパート上げていくやり方のほうが気に入っている。
 あとキャラが全員箱推しで、天真爛漫なゆい、苦手な対人関係を克服していったここね、ハイテンションならん、真面目を筆頭として属性盛りだくさんなここね、ツンデレ枠な拓海、おやっさん的なマリちゃん、キャラが濃くて一年間楽しかった。
 またごはんを絡めた話も非常に楽しくて、ハート型のカレーを作ったのはいい思い出。
 マリちゃん曰く不謹慎かもしれないが、ブンドル団にはもうちょっと頑張ってもらってもっとデパプリ達の活躍が見たかったと思っている。

終わりに

 以上、多様性の描写を中心に、デパプリの総括をしてみた。次回作のひろがるスカイ!プリキュアではヒーローものをテーマとした作品なので、ヒーローものをどう料理するか、非常に楽しみである。
 最後にスタッフ・キャストの皆様、1年間楽しませていただき本当にありがとうございました!

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