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本で遊ぶ~本の可能性を広げる3つの仕掛け

5/28に、私の新刊『がんを抱えて、自分らしく生きたい』が上梓されました。

この本は、がんという病気になって自分らしく生きるためには何を準備しておけばいいのか?について考えた本ですが、「本で遊ぶ」ために編集者と相談しながらいくつかの「仕掛け」を仕込んだ本でもあります。

1.ペンを持ちながら本を読もうという仕掛け

この本では、各章の最初に「患者さんたちが遺した言葉たち」が書かれていますが、その言葉の解釈は本文の中で触れられていません。
そのかわりに、言葉の下にノートのような罫線を引き「あなたがこの言葉から何を受け取ったかを書いてみよう」という仕掛けを作っています。

この本は、自分が生きるということを考えるための本。
読むだけでもいいけど、ペンを持って書き込みながら考えてもらいたい。
そんな仕掛けを、本の中に入れています。

2.耳で本を読もうという仕掛け

この本は電子書籍版も刊行されていますが、「ペンをもつ本」である紙の本に対し、電子版は、「耳で読む本」を意識した構成にしています。
iPhoneやアレクサの読み上げ機能を利用して、本を読んでもらうという選択肢。

これまでの書籍読み上げ機能は、句読点や図などで読み上げがスムーズにいかない問題がありました。それを本書ではレイアウトなど整えることで解決できないかに挑戦してみたのです(紙の本の方でもタイトルなどにも句点が打たれているのは、そのためです)。

活字を読むことは体力がいります。
がんを抱えて気力が衰えた時に、本を読み続けられないという場合も多い。かといってスムーズに読んでくれるオーディオブックはまだまだ少数。
だから、できる限り普通の本を「耳で読む」ことができないかなと考えてみたのです。

この本は実験。
電子書籍はこれから主流になる。そのぶん、耳で本を読むという方は増えるでしょう。それに合わせて、本の構成を「耳で読みやすくする」工夫も必要になってくるはずです。

3.新しいメディアミックスの仕掛け

こちらのnoteで詳細を書きましたが、本の中の設定を元にしたSFを、みんなで作ってみよう!という仕掛け。
今回この本で触れた「安楽死特区」、つまり日本の中に安楽死が法的にできる特区ができた、という仮想の世界で人々が何を考え、何が正しく何がおかしくなっていくのか?というストーリー。
そのプロットを希望者に公開し、各自で作品を完成してもらうということとこの本を組み合わせています。

プロットの冒頭部分を少しだけご紹介。

安楽死を求める国民の声の高まり、そしてそれに反対する人たちとの争いは、日に日に激しさを増していた。
その双方の声を抑える目的で、政府は国内どこでも安楽死が実行できる法律をつくるかわりに、「安楽死特区」を定め、そこに行けば安楽死ができるシステムを作り上げた。
このシステムによって、多くの国民が安楽死特区に行き、そして死を迎えていった。
安楽死特区が法制化されてから50年後の未来に、ある若者が不治の病を宣告され、様々な審査を経て安楽死特区への切符を手に入れる。しかしその安楽死特区で主人公を待っていたのは、人間のドクターではなく、AI「ドクター」。しかもそのAIはこの20年間、ただ一人も安楽死を実行していない・・・というところからはじまる物語。

この仕掛けはSNS時代のメディアミックス戦略のいち手法だと考えています。

原作①は書籍としてあるとして、日本の法律上は著作権の問題が色々あり、結局は出版社を通じてのメディアミックス戦略しかとれないうえに版権など面倒くさい。

それに対し、原作①を元にした原作②を作成し、それをフリー素材化してSNSでばらまけば、個人でのメディアミックスが可能になる。

すでに、小説・演劇・映像・マンガなどの製作者から問い合わせいただいており、実際に作品を作って頂いています。それぞれがスケールするかはわからないけれども、方向性としては面白いのではないかと思っています。

本は、様々な仕掛けでもっと面白くできる。

本は、既に古びたコンテンツと思われているかもしれません。
でも、こうやって「本で遊べる」余地はまだまだあるんじゃないでしょうか。
これら3つの仕掛け以外にも、インターネットと組み合わせた仕掛けや、コミュニケーションツールとしての本、といった可能性を追求していくことで、僕らはまだまだ本と遊ぶことができると思います。

私は12月にもう1冊、本を出版する予定ですが、どうすればもっと本と遊べるか、考えていきたいと思っています。


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