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どうして売り上げを全額寄付するのか。

5月末に『がんを抱えて、自分らしく生きたい』という本を上梓した。
医療者にも読んでほしいが、基本的には患者さんや家族、市民の方々に向けて書いた。
私がこれまで出会った患者さんの「言葉」を軸に、安楽死や代替医療、孤独や希望などのテーマについて描いた本である。

本を執筆すればその部数に応じて「印税」が著者に支払われる。執筆活動に対する対価だ。
でも今回、私はこの印税を受け取らず、全てを「マギーズトーキョー」および「一般社団法人プラスケア」に寄付することにした。
一般社団法人プラスケアは、暮らしの保健室を運営する私の会社だが、理事は法人から一切の報酬を受け取れないと定款で定めているため、この法人口座に支払われたお金については、私的に流用することはできない。

実はこれまでも、私が単著として出版した本の印税は一部「マギーズトーキョー」に自動的に寄付される仕組みにしていた。
どうして今回は、全額を寄付することに決めたのか。

ヤンデル先生からも頂いたように、この本は私が主役の本ではない。
患者さんが遺した「言葉」と「物語」の記録である。
その本の性格を考えた時に、これを私自身が報酬として受け取るのに自ら違和感を覚えたということ。
じゃあどうすれば、その報酬を有意義に使えるだろうか?と考えた時、私が本の中でも触れていた「患者さんや家族を支えるためのコミュニティ」に投資すべきなんじゃないかと考えたのだ。
それがマギーズトーキョーであり、暮らしの保健室である。
暮らしの保健室で、地域の患者さんや家族の全員が助かるわけではない。でも、そこに暮らしの保健室があることで確実に助かる人というのはいる。そのひとにとっては、ここは「暮らしの保健室がなかった世界」から「暮らしの保健室がある世界」に変わったのだ。それは小さいインパクトかもしれないけれど、大切にすべき一歩なのだと思う。

これからの時代は、孤独という問題にいかに取り組んでいくかが問われる時代だ。がんの患者さんだけではない、「生きづらさ」を抱えた全ての人に対する処方箋が必要となる。
その解決のカギが、マギーズや暮らしの保健室にはある。今のままではダメで、暮らしの保健室もそのニーズに合わせてアップデートされていく必要がある。そのためには、今まさに積極的投資が必要なのだ。
これは、私の本に出てきた患者さんたちの願いでもあると感じている。

皆さんがこの本を買ってくれることは、「社会的投資」に寄与することになる。皆さんの力が、患者さんや家族、また「生きづらさ」を抱えた方々にとっての大切な一歩になる。そしてそれは回りまわって、社会が良くなることで、自分にも、そして未来の子供たちへも利益が返ってくる。個人における社会的投資はこれから発展していく未来の仕組みだ。

あなたがこの本を買うことは、単なる「消費」ではない。
「社会的投資」という未来の仕組みに対する参加の意思を示すことなのだ。


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