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ラジオドラマ脚本 019

タイトル「笑顔と和服には要注意」


【人物表】

小酒部 勝(オサカベマサル)58歳
 早期退職をした。かみさんにベタ惚れ。
 次の人生を模索中

静華(シズカ)年齢不詳
 日本酒BARの女将

小酒部「日本酒BAR、ここかな?」
静華「いらっしゃいませ。何人さまですか?」

小酒部(M)初めてのお店ってすごくドキドキする。特に口開けは。

静華「カウンターのお好きな席にお座りください」
小酒部「あっ、は、はい」
静華「ご心配なくチャージとか頂いておりませんので、ただし、笑顔は有料です」

小酒部(M)笑顔が有料?和服の似合う美人には要注意。

静華「なにか?」
小酒部「あの?女将の前の席でも?」

静華(M)あつかましい一見さん。でも、レジメにボタンダウン好み」
小酒部「あっ?だめなら‥」
静華「全然大丈夫ですよ。何になさいますか?」
小酒部「えっと、とりあえず‥」

静華(M)ちょっと、からかってみようっと。

静華「うちには、とりあえずビールはありません」
小酒部「嘘だろう?」
静華「本当です。お客様のお好みが分かり兼ねますので、お好みを教えてください」
小酒部「冷で美味しい物をください」

静華(M)ちゃんと、できるじゃないの。レジメさん。

静華「チェイサーになります」

SE:ベースが効いたジャズの音

静華「お客様の御名前、いいかしら?」
小酒部「おさかべです」
静華「あら、いいお名前」
小酒部「会社を退職して、どうしても、こちらのお店で祝杯をあげたくてきてみました」
静華「お気に召しましたか?」
小酒部「カミさんからまっすぐ帰って来いとのメールがきたんですが‥」
静華「いいんですか?」
小酒部「このお水、口の中でさっぱりしずて、次の日本酒が恋しくなりますね、不思議だ」
静華「売上貢献水なんです」
小酒部「女将、戦略家だね」

小酒部(M)好きなかみさんの笑顔が毎日見られれば、昔は良かったんだよな。気持って変わるよなあ。

小酒部「酔ったかな?」
静華「湧水の一滴が、心の中に溜まってきたのかもしれませんね」
小酒部「たまったかも?」

SE:ジャズの音楽

静華「自家製の牡蠣の燻製です」
小酒部「これは!」
静華「会社の帰りに、お呑みになることはないんですか?」
小酒部「飼い慣らされてしまったんです」
静華「それな、それは」
小酒部「ローンもあったし、ほんとうは、吞んで帰り買ったなあ‥」
静華「よかったんですよ、それで」
小酒部「俺の人生、これでいいのかな?」

SE:日本酒が注がれる音

小酒部「にごり酒かあ」
静華「お嫌いですか?瓶内で発酵した微発泡になります。お口に含んだ際に、細かい泡が弾けます」
小酒部「これは、いい」
静華「微発泡の刺激が、これからの人生の刺激になればと‥」

SE:弾ける泡の音

小酒部「お勘定を御願いします」
静華「お水、ペットボトルに入れておきますね。お勘定になります」
小酒部「お水?サービスかな?あれ、今‥」
静華「今度は、奥様と」


【完了】

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