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ラジオドラマ脚本034

タイトル
「大好きだったのね。ほんとうに」

主人公 さやか 60歳
夫   大八郎 65歳

さやか(M)朝食を作るのも、もう飽きた気がする。大ちゃんが定年を迎
える今月で、もう、私も定年してもいいよね。

大八郎「おーい! 朝食まだかな」

さやか「はい、はい。もうすぐですよ」

さやか(M)はんとうに、まだかといえば、朝食が目の前に来ると思って
いるんでしょうね。

大八郎「なんか、あれだな。朝食を食べるのも、飽きたな。俺が定年を
 迎えたら、朝食は、いらんぞ。」

さやか「ほんとですか? ほんとなら、なお、うれしい。これで、心おき
 なく、朝寝坊ができるわ。結婚してからは、朝寝坊なんてした事ないん
 だから、うれしいわ」

(N)大八郎の咀嚼の音 クチャクチャクチャ

さやか「その音、何とかなりませんか! 結婚以来、何度かお願いしてい
 ますよね。もう!」

さやか(M)結婚当初は、気になって、よく注意したものだが、いつの間
 にか、子供も生まれ、慌ただしい朝食になれて、音の存在事態を忘れていた。

大八郎「おーい! お茶」
さやか「私は、自動給湯器ではありませんよ」

さやか(M)ここ数年、朝食を二人だけで食べる事が増え。また、あの音
 が気になり出した。

大八郎「ごちそうさまでした。さてと、着替えるか」

さやか「ネクタイ、ワイシャツはいつものところに出しておきましたよ。」
大八郎「行って来るぞ」
さやか「いってらっしゃい。お帰りは、いつも通りですか?旦那様?」
大八郎「そうだよ、奥方様」

SE 携帯電話の呼び出し音

さやか(M)娘のたかこからの今日のランチの確認の電話だった。

SE レストランのドアの音

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さやか(M)大ちゃんが急死して半年。最近は、たかこが様子みがてらラ
 ンチをするようになった。あれ?今、クチャクチャクチャと音がする気
 がした。

たかこ「お母さん、いつからそんな音を立てて、食べるようになったね?
 よくお父さんに注意してたよね。その音の事」

さやか「えっ? 何か言った。」

たかこ「お父さんのクチャクチャクチャを、お母さんよく注意していたで
 しょ。もう、忘れたの?」
さやか「そんな音していた?へんね」
たかこ「ボケ始めたの? やだぁ、やめてよ」
さやか「あらやだ、似なくてもいいのに、似ちゃったんだ。もうやだ」
さやか(M)わかってましたよ。寂しがりやなのは、大ちゃんだって

【完】

※無断転載を禁じる


                


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