「大人になったものだ」と実感するとは即ち、おかんの「あんた!そんな格好で寒ないんか?!」がわかるようになるということ。

いくら厚手だったとは言え、ルーズソックスに膝上丈の短いスカート、コートを着るのはなんとなくダサくて(私の住んでいた地域だけ?)、制服のブレザーの下に厚手のゆったりしたカーディガン。そんな格好で出かける高校生の私に、母はいつも玄関先で

「あんた!そんな格好で寒ないんか?!冷えるでアカンわ、タイツ履き!!」

と言っていました。内心、イチイチうるさいなぁと思いつつ、

「別にそんな寒ないし!いってくるわ!!」

と元気いっぱい自転車を漕いで学校へ向かう、16、7の私。タイツなんて履いている子はクラスにいない=ダサいと思っていたし、そもそも本当にそこまで寒いと思っていませんでした。

あれから更に16、7年経った33歳の今や、勤め先の更衣室で朝交わす言葉は

「冷えてかなんな…足の指先、壊死しそうや」

になっています。ゴワゴワするけど、デニムの下にヒートテックのタイツ。何ならつま先に貼るカイロまで仕込んでいます。

それでも寒いのに、道行く女子中高生は今もスカートにふくらはぎまでの短い靴下だけ。それもルーズソックスじゃない普通の厚さの靴下で、丈もルーズソックスより短い。きっと私たちの頃より、彼女らの足元は寒いに違いありません。自分たちだってそうだったくせに、

「なんであんな格好で寒ないんか不思議やわ」

と言い出す始末です。内から発する若いエネルギーで、彼女たちは十分暖かいんでしょうか。

母は冬になるといつも寒い寒いと言っていました。冷蔵庫から出してすぐのお豆腐やヨーグルトも冷たすぎて食べられないと言って、電子レンジでチンして食べていました。そんな母のことを、特別寒がりな人と認識していた当時の私を殴りたい程度に、今私も冷蔵庫から出したてのものを真冬に食べるのはツラいものがあります。「女の人は冷やしたらアカンで」の意味も、今ならよくわかります。普段生理痛のほとんどない私も、真冬に防寒を怠ると強烈な痛みに襲われます。

高校生の私には、母の

「あんた!そんな格好で寒ないんか?!」

は小言でしかありませんでした。でも、今ならそれが我が子を案ずる母の愛情であったと理解できます。きっと母も、うるさいなと思われていることもわかっていたでしょう。それでも言わずにいれないのが母親という生き物なのかもしれません。

「お母さん、うちが子供んときによぉあんたそんな格好で寒ないんかって言うてたやん?当時は何言うてんねん思てたけど、今めっちゃわかるわぁ…どう考えてもあの格好は寒いわ」

「あんたもそれがわかるようになったか!おばちゃんの仲間入りやな!!」

おかんうるさいわ!

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