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徒然な雑記ー私の憧れ

恥の多い生涯を送って来ました。 自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。
ー『人間失格』太宰治

 この文章が凄まじいインパクトで奥深くに入ってきて、一気に読んだ思春期の頃の私が、今も胸の中にいる。

 この作品を読んで、これは自分だと感じたのは私だけではないのではないだろうか。この作品は本当に衝撃的で稀有な作品だ。それでいて一般的、普遍性があると感じる。私が特殊かもしれないが、例えばユングのいう集合的無意識というようなものすらも思い起こさせる。人間の根っこのさらに奥にまで踏み込んだ感覚。

 人が目を背けて見ないようにしている少し惨めで卑怯で屈折した自己愛。人間そのものを描いているように感じる。

 よく考えてみよう。そもそも本当に真正直に内面と表面を一致させて、そのままで生きてる人間なんているのか。自分を取り繕うこともなく、自分を誤魔化すこともなく、自分に嘘をつくこともなく生きてる人なんているだろうか。

 例えば、人からよく思われたいとか必要とされたい欲求がある。または、他人に求められたから逆に応えたくないという天邪鬼がムクムク出てくることもある。本当は嬉しいのに絶対に顔にちらっとでも出すものかというひねくれ者を内に飼っている人もいる。

 だからこの作品の主人公である葉蔵は特別じゃないと思う。

 太宰治のように、単純な表現では表せない人間の奥深いところを抉り出して表現してくれる作家に本当に心から尊敬の念を抱きます。

 私もいつか悲しいとか嬉しいといったようなそんな単純ではなく、複雑で絵も言われぬ感情や感覚を表現する者になりたいと思う。

 真実に深い深い底に流れるところで皆が"ああ!そうだ!"と奥底にある自分を発見して感嘆の溜息をついてしまうような表現があるはずである。

そういうものを私は書きたい。憧れである。

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