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展示をする、その理由

深夜が好きなのは、深夜は誰もがひとりになる時間だからかもしれない。ひとりだと感じても、深夜ならおかしくないから。孤独を感じることに異論を唱えるひとがいないから。じぶんがすっかり孤独だと感じたとき、静けさと夜の暗さが、こころにしっくりと馴染み、誰かの声を聞きたくなる。10代の頃の僕は例えばラジオを聞いていた。電気グルーヴのふたりが世界のあらゆることを笑い飛ばしているのを聞いて心の底から笑った。インターネットが気持ちの置き場所をつくってくれたとき、僕は夜ごとにその海を漂い、日本のどこかに確かにいる、孤独を抱える誰かの言葉を目にして、冷え切ったこころにそっと触ってもらえたような気持ちがしていた。誰かの日常が、僕の明日を支えてくれる、そんな瞬間は確かにあった。

生きることは地獄です。それはもうずっと、僕の変わらない感覚です。どうしてこんなにも、ただそこにいることが許されないような感覚を、僕たちは持ち続けなくてはならないのでしょうか。努力とは生命の必要最低条件なんでしょうか。そんなはずはない。草花がただそれだけで美しいように、僕たちは生きているだけで美しいということを、繰り返し伝えなければいけないと、僕は思っています。僕が写真を撮る理由はそこに集結していて、撮るということが「あなたは美しい」という事実になって永遠に記録されればいいと願っているから、ただそれだけです。展示をする理由は、僕のその願いをかたちにして、見せたいと思うからです。必要のない人には、まったく必要のない展示です。しかし、必要なひとには伝わってほしい。あなたは大丈夫なんだと、魂に届く写真で、言葉で、伝えたい。

新しい元号になった月のはじめ、5月3日から12日までの10日間、谷中にある一軒家ギャラリー「トタン」で、展示をします。今までに撮りためた写真と、新しく書いた詩を、日なたの部屋に飾るつもりです。この世界で生きることはどうしようもなく寂しいことだけど、息をしていてよかったと思う瞬間があることもたしかです。そういう気持ちをかたちにできるような展示にしたいと思っています。展示のなまえは『五月の虹』です。これは僕がつくった詩のなかで、妻がいちばん気に入ってくれた詩の題です。五月の谷中を歩いて「トタン」を見つけて、遊びにきてください。そのすべての記憶が、あなたの脳に、胸に、心地よいものとして残りつづけることを僕は願っています。

トタン https://totan.tokyo

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トナカイ

東京を歩いています

読みスクラップブック

他人の作りもの。自分の読み記録。種種雑多な文章の一時的な置き場。
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コメント5件

トナカイさん、はじめまして。
思わず何度も読み返してしまう、美しい文章でした。
深夜の静寂に、あたたかな心地よさを与えてくださり、ありがとうございます。

5月の展示も、どうかきっと素敵な日々となりますように。
トナカイさんの言葉いつもTwitterで見ています。クラウドファンディング参加しようと思いましたが写真集完売していたので追加にならないかなと思ったりしています。遠く広島からですが応援してます。
まさに、私が言葉を頼りに詩を書く動機と目指している場所が、一致していると思いました。

世界観を同じくする者が、こうして美しいものを作っているということには、胸を打たれて励まされます。
先日、トタンの方にお邪魔しました。
初めての感覚でした。不思議と懐かしいような心地いいような、苦しくも暖かい気持ちになりました。
すごく、空気感が好きです。

ありがとうございます。
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