めざめて

1.

痛いほど寒い銀世界を
なぜ僕は選んだのだろうか
予告なく こと切れた時間は
まるで赤い花の首

靴跡も 光源もないまま
ただ歩くだけで許された
嘘っぽい人生は遠く
思い出せないほど細く

「逝った」
のだとしたら

どうして どうして
僕は あなたの瞳を
見てしまったのだろう

どうして どうして
僕は あなたの世界を
知りたいと願ったのだろう

2.

忍び寄る夜の帳がおりて
とある時は進みだした
はじまりの御挨拶はきまって
さようなら からだった

人間も 神様もないまま
ただ夏の雨を飲んでいた
水っぽい人生は遠く
思い出せないほど尊く

「言った」
のだとしたら

どうして どうして
僕の瞳は
こんなに濡れているのだろう

どうして どうして
僕の頭は
こんなに重たいのだろう

3.

目醒めた世界の君は
案外 ふつうに笑っていた
星の記憶を集める旅へ
ふたりで「行った」みたいだ


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