「アイリッシュコーヒー」

女が仕事に恋をした　きっと実ると信じてた
けれども恋は気まぐれで　女の心をはぐらかす

いつかどこかで置き去りに　やがて忘れた恋をして
力のかぎり伸ばしても　その手は空をつかむだけ

男のデスクははす向かい　彼も仕事が好きだった
うらぶれあぶれた今もなお　浮かべる笑みははにかんで

いつかどこかで置き去りに　やがて忘れたあの笑顔
夜の十時をまわっても　職場の灯かりはこうこうと

ワタシモ少シ手伝ウヨ　結構ですと笑顔を作る
見る者すべては恋がたき　女のつるぎはささらのよう

ソロソロオ茶ニシマショウヨ　わたしにコーヒー差し出した
いつかどこかで置き去りに　やがて忘れたあの香り

カップのみなもにいる女　しかめた顔が揺れている
女は彼女に微笑んだ　彼女は女に微笑みかえす

頬笑む彼女がかわいくて　やさしい瞳で見返した
女は男に向き直り　ありがとうと頬笑んだ

いつかどこかで置き去りに　やっと見つけたこの想い
見果てぬ夢を見ていたの　でもね楽しくなかったの

大学時代に通ったバー　潰れてなければ行こうかな