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#83.雑談 【塾話】エセ自立型に思うこと

皆さん、こんにちは。トビタです。

中学生対象の学習塾は年度末が怖い。神奈川県の場合、2月の中旬に公立高校入試が実施される。全国的にも早い。そうすると2月いっぱいで中3は卒塾ということになる。次の掻き入れ時は3月下旬の春期講習だから、それまでの売り上げダウンが痛い。

そこで塾が考えるのは以下二つ。

①3月いっぱいまで中3に残ってもらう
②高校部を設けて4月以降も継続してもらう

①に関しては、高校準備講座と称して実施しているところも多いと思う。高校英語ないしは高校数学を週1〜2回で教える。他にも高校から出されている課題の質問対応をしたりする。たかだか一ヶ月間で教えられる内容ということもあって、中学生を教えられる講師であれば、高度な学力もさほど必要はない。塾は一ヶ月分の売り上げを下げずに済むし、生徒も入学前の不安を軽減できるという意味でお互いメリットがある。

②に関しては、まず高校部を設けること自体がハードだ。塾をどういう位置付けにするか考えなくてはならない。大学受験に向けてゴリゴリやっていくのか、学校の課題の補助程度なのか。またサービスについては、誰に何をどこまでどんな形で提供するのかを決めておかないと大変なことになる。中3から持ち上がりの生徒だけ?外部生や浪人生は?科目は文理両方を対応?対面or映像?集団or個別?…

教科指導に何のノウハウもないとなれば、高校部設立の前にまず自分で勉強して力をつけてみようと考える人もいるだろう。これには時間と労力がいる。英語と数学の需要は大きいので、それらの優先度が高くなる。しかし、両方とも重たい。私も高校数学を1年ちょっと勉強しているが、まぁ大変だ(勉強していて感じたこと等はまたどこかで書きたいと思う)
自分が理解して解ける状態にまで持っていくのはもちろん、当たり前のことながら教えることをイメージしないといけない。「お金もらっていいレベルかな?」と思うと、正直まだ自信がない。

また高校部設立にあたって、誰かプロを雇って指導に携わってもらうという方法がある。無論、人件費がかかる。他にも映像授業を導入してプロの授業を提供するという方法もあるが、これも導入費用とアカウント数分の費用が発生するであろう。このように普通に考えれば、中学生向けの塾がプロの力を借りて高校部を設けようとするとお金がかかるのである。

「いやでも、時間も労力もお金もかけたくないんだよね」となれば、行き着く先は自立型ならぬ「エセ自立型」である。ここからが今日の本題。

本来自立型とは、集団指導や個別指導とは違った授業形態である(時には集団にもなり得るし個別にもなり得るが)
自学をウリにしたアクティブな授業形態だ。講師が一方的に教えるわけではなく、基本的には生徒が教材を使って自主的に勉強する。ポイントとなるところやつまずくと致命的なところなど、要所で講師は口を出す。質問も対応する。

そんな自立型に対して、エセ自立型は教科指導ができないので、要所を見極めたり質問対応したりなんて出来るはずがない。自学という名の下に生徒をほったらかして、騙し騙しやっていくことになる。塾もその自覚があるし、今度は「このままじゃ、実績が出せないのでは…?」と焦りを感じ始める。でも物や時間を有効に使う術を知らない。結局自分の至らなさを隠すために、生徒に大量の課題や膨大な時間の自習を強要するという手段に出る。元からある程度の偏差値の高校に通う子を集めると、これでもそこそこの実績が出てしまうからタチが悪い。塾はたいして何もしていないのに「◯◯大学、合格者が△名出ました!」と言えてしまう。「◯◯大学に合格するためにはこの参考書を3周!」「受験直前期なら1日15時間は勉強しなきゃね」とか言えてしまう。そして「ほらやっぱり自立型が一番じゃん!」と言い出す者が出てくる。現実には、生真面目な賢い子が大量の課題や膨大な時間の自習の強要に耐えられたというだけのこと。それを塾の指導力やノウハウ、実績と言っていいのか疑問に思う。

実際に自分で教える能力があるけれども指導経験や指導理念からそれが良いものだと信じて自立型をやっている塾。もしくは実際に自分で教える能力はないor足りないけれども、それが良いものだと信じてそれ相応のコストをかけて自立型をやっている塾。

自分で勉強して能力を高める時間的コストや、人を雇ったり映像授業を提供したり学習環境を整えたりといった金銭的コストを払いたくない。そういった理由で、自立型を名乗る塾。

両者の決定的な違いは何か。それは都合を考えているかどうか。たいていどんなお仕事でも、自分の都合と相手の都合をうまくすり合わせて成り立っている。授業もそう。ところがエセ自立型は塾のことしか頭にない。塾側の都合に合わせて後から必死に論理を組み立てる。

この記事を読む塾関係者の中には、「他所のことなんて究極分からないんだから、悪く言っても仕方がない」「他所は他所。うちはうち」という人もいると思う。私はまだその辺大人になりきれないのか沸点が低いのかわからないが、やっぱりエセだなと思うとうんざりしてしまう。真面目にやっている人を知っているから。


いつもお読みいただきありがとうございます。教育者の端くれとして、自分が持っているものを他の人に伝承していきたいと思っています。今後とも宜しくお願い致します。